地球(テラ)小屋プラネテス

根本ぴゃ

第一難 虚舟(うつろぶね)(脚本)

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〇海辺
  享和3年(1803年)常陸国の海岸に香盒(こうごう。香を入れる蓋付きの器)のような丸い乗り物が流れ着く
  漁師達が引き寄せると、中には奇妙な出で立ちの美女がおり、小箱を大切そうに抱えていた
  その『蛮女』とは言葉が通じず、船内も謎の文字で埋め尽くされていた
  厄介ごとを避けたい漁師達は、舟を沖に戻してしまったという──

〇古民家の居間
大和 貞助「また『うつろ舟』が目撃されたそうだ!」
大和 貞助「興味深いよなぁ!諸君!」
大和 貞助「・・・」
大和 貞助「ところで諸君は『怪奇円跡』(ミステリィサァクル)を知ってるか?」
大和 貞助「何らかの力で倒された草や稲が、地面に巨大な幾何学模様を描く現象だ」
大和 貞助「エゲレスではその上空に『うつろ舟』が現れ、牛を連れ去ったとか──」
大和 貞助「ということは、『怪奇円跡』は『舟』の発着地点だろうか?」
大和 貞助「はたまた獲物を捕らえるための 『罠』なのか・・・」
  チラッ
大和 貞助「見てみたいよな?『怪奇円跡』」
大和 貞助「見に行こうぜ?」
大和 貞助「実は師匠、見つけちゃったんだよねェへへ~」
「・・・」
  生徒達は無言のまま、そろばんを手にした
大和 貞助「ぐぉあああ~!!やめろぉおお~!!」
大和 貞助「痛い痛い怖い! 音も怖いッ!怖いからッ!」
大和 貞助「ぅひぃんっ!」
大和 貞助「くすん、ぐすん・・・ ウサギちゃ~ん、みんなが苛めるよぉ~」
餅月 里兎「・・・よちよち」
五月女 奈流星「そんなロリコン放っておきなさい 里兎(りと)!」
大和 貞助「なんだと! 失敬な和蘭陀(オランダ)女め!」
五月女 奈流星「奈流星(なるせ)よ!」
大和 貞助「知るか!私を『小児性愛者』だと?」
大和 貞助「私がウサギちゃんに抱くのは 『解剖欲』のみだぁ!」
大和 貞助「透き通るような白い肌、 白兎のごとく真っ赤な瞳──」
大和 貞助「どんな理(ことわり)の成せる業(わざ)か、ぐへへへ・・・」
是野 透「いっいいか加減に、しっろ!」
大和 貞助「なんだってぇ?うどの大木── いや、是野(ぜの)くん?」
  キッ!
大和 貞助「何だその目は?私を悪漢扱いか?」
大和 貞助「私に狼藉を働いた悪餓鬼どもがぁッ!」
夏日 雄心「盗人を罰したまでだ!月謝泥棒め!」
夏日 雄心「『大和』名乗るなら 少しは大和魂見せてみろぉ!」
大和 貞助「お前は名前通り暑苦しいよな 夏日(なつび)」
真木瓜 翠「そんなことより! 僕達は算術やいろはを学びに来ているんです!」
真木瓜 翠「毎日毎ッ日、くだらない与太話を聞くためじゃない!」
大和 貞助「フッ」
大和 貞助「与太話?いいや真実さ」
大和 貞助「異星人を切れば、生命の謎すら解けるかも知れんぞ?」
大和 貞助「なぁ、『神童』真木瓜(まきうり) ここで学ぶことなど何もないだろう?」
大和 貞助「共に宇宙の神秘を解き明かそうじゃないか」
真木瓜 翠「私的好奇心を満たすより 一人でも多くの腹を満たす方が大事です!」
真木瓜 翠「師匠が教えないなら 僕が皆の手本になります!」
大和 貞助「グッ・・・ 金や他人に人生を捧げるのか?お前は」
夏日 雄心「誰の月謝で飯食ってンだテメェ! 屁理屈こねてねぇで授業しろ!」
五月女 奈流星「パパに言いつけてやる!」
大和 貞助「ひぃ~荒ぶってるぅ~!反抗期かな?」
大和 貞助「しかたない──」
「逃げやがった!」

〇美しい草原
夏日 雄心「待てやこらぁ!」
大和 貞助「嫌だぁあ!俺はこの世の理を解き明かすんだぁ!手習いなぞ糞食らえぇぇ!」
夏日 雄心「それでも師匠か!その首切ってやる!」
大和 貞助「悪名高い寺子屋を選んだ親を恨むんだなァ!」
大和 貞助「やーい、ワケありっ子~ お前の母ちゃん、うんこうんこ!」
夏日 雄心「あんだとぉ!?母ちゃん、馬鹿にすんな!」
大和 貞助「ハ~ッハッハッハ~!」
五月女 奈流星(今日はやたらスタミナあるわねアイツ)
是野 透(ほ本気の走り。執念すすら感じる・・・)
真木瓜 翠(・・・なんだろうこの違和感)
真木瓜 翠(まるで誘い込まれてるような・・・)
大和 貞助「ウヒャヒャ~!捕まえてみんしゃい──」
大和 貞助「ぅわっ!」
大和 貞助「いちち・・・」
夏日 雄心「今だ!取り囲めーッ!」
「応ッ!」
  僕らは等間隔に散らばり、師匠を取り囲んだ
大和 貞助「ぐぅ、見事な隊形!流石の連携だな」
大和 貞助「だが『それ』が命取りだ──」
餅月 里兎「みんな!にげてっ!」
大和 貞助「もう遅い!周りを見てみろォ!」
  その光景は今でも忘れない
  
  あの時──

〇魔法陣
  僕らは調和の美の中にいた
  円形に倒れた稗(ひえ)に描かれた五芒星
  その五つの頂点に、僕らは立っていた──
真木瓜 翠「これ・・・師匠がさっき言ってた──」
五月女 奈流星「何をバカなこと! アイツが作ったに決まってるでしょ?!」
夏日 雄心「くだらねぇ悪戯しやがって!」
大和 貞助「・・・『それ』も私の仕業だと?」
  足元からまばゆい光が放たれ、
  僕らは思わず目をつむる

〇黒
  暗闇の中、鈍い金属音が降り注ぐ

〇黒背景
  チラッ
「はっ?!」

〇UFOの飛ぶ空
夏日 雄心「な・・・なんだありゃ?」
是野 透「みんなな!ぼっぼくの・・・う、後ろに!」
五月女 奈流星「オーマイガッ!」

〇美しい草原
餅月 里兎「ししょー・・・」
真木瓜 翠「あ・・・あんたが呼び出したのか?」
大和 貞助「・・・ついに来た」
大和 貞助「うつろぶねだぁ~い!」
  師匠は『舟』に向かって一目散に駆け出した
大和 貞助「うーーつーーーろーーぶーーねーーーー!!!」
大和 貞助「私をッ!連れ去ってくれぇえええ!!!」
「なにやってんだぁああ!」
餅月 里兎「ししょー!」
  ガシッ!
是野 透「ああぁぶなない!りとっさん!」
  ガシッ!
夏日 雄心「助太刀すんぜ!」
  ガシッ!
真木瓜 翠「微力ながら!」
  ガシッ!
「うぎぎ・・・・・・」
五月女 奈流星「全然ダメじゃない! あなた達まで連れてかれるわよ!」
「うぅ・・・・・・」
五月女 奈流星「い・・・言っとくけど、私は手伝わないからね!」
夏日 雄心「気にすんな! 腐っても使節のお嬢様・・・ 怪我でもされちゃ責任問題だ!」
夏日 雄心「母ちゃんには代わりに謝っといてくれよな!」
真木瓜 翠「今まで楽しかったよ どうか達者で・・・」
  フワッ
「うあっ」
  ガシッ!
五月女 奈流星「ジェントルぶってんじゃないわよ!」
五月女 奈流星「そういうのは強者の! ヨーロピアンの役割なんだからっ!」

〇幻想空間
  僕らはどこで間違えてしまったのだろう?
  なぜ、こんなことになってしまったのか?
  ろくでなしの師匠のせい?
  こんな寺子屋に預けた親のせい?
  それとも──

〇宇宙空間
  こんな星の下に生まれてしまった自分のせい?

〇謎の施設の中枢
「・・・・・・」
「・・・・・・」
大和 貞助(おいおいガキども さっきの威勢はどうした? あまりの事態に声も出ないか?)
「・・・・・・」
大和 貞助(こっちもこっちで戸惑ってるな おそらくあの罠は本来1匹用 6対3は手に余るよなぁ?)
大和 貞助(この膠着状態・・・逃す手はねぇ!)
  コホンッ
大和 貞助「『今だ!取り囲めーッ!』」
「応ッ!」
  自然と体が動いていた
  口真似された夏日(なつび)ですらも
  『連帯感』
  不毛な日々の中で培われたそれは
  もはや習性と化していたのだ
  異星人達は自らの触手で縛り上げられた
大和 貞助「よくやってくれたな、諸君!」
大和 貞助「さぁ解剖の時間だ」
アブダクター「ピッ!」
アブダクター「ギギィ!ギュァギュギィィ!」
大和 貞助「ドキドキしてるのかい?私もだよ」
アブダクター「ピギャンピギョ~ン!!!」
餅月 里兎「ししょー!だめっ! ないてる!だめっ!」
大和 貞助「泣けば助けてもらえるとでも? 世の中そんな優しくないぞ?」
大和 貞助「それともお前から『調べて』やろうか?ウサギちゃん」
「ザッ・・・」
大和 貞助「なんだよ、お前らも泣けば許す口か?」
大和 貞助「私の涙には無慈悲だったくせによぉおお!」
真木瓜 翠「本当に大人気ないですね、師匠は」
真木瓜 翠「窓の外を見ましたか?」
大和 貞助「もちろんさ!説明してやろう」
大和 貞助「あの青緑の美しい球体 あれが我々の住んでいた地球だ ラテン語では『テラ』という」
真木瓜 翠「信じがたいですが、そのようですね」
真木瓜 翠「それで・・・師匠はこの舟、操縦できるんですか?」
大和 貞助「アッハッハ!」
大和 貞助「まさか帰ると?あんなヘドの出る場所に?」
大和 貞助「私はこの世の神秘を暴けるなら ここで朽ちても構わんさ!」
大和 貞助「さ~ぁ、臓物を晒せ!異星人ども!」
大和 貞助「そろ・・・ば、ん・・・?」
是野 透「たったいへへんだ! 師匠ががしし死・・・!」
真木瓜 翠「殺してない!脈も息もある!」
餅月 里兎「やりすぎ・・・」
真木瓜 翠(だって師匠がすごい勢いでくるから)
五月女 奈流星「せっかくのソルジャー潰しちゃって~」
  と言いながら、奈流星(なるせ)は師匠の袖で手についた異星人の分泌液を拭った
夏日 雄心「それでどうする?何か策はあるんだよな?」
真木瓜 翠「うっ」
真木瓜 翠(そんなこと僕に言われても・・・)
  じー・・・
真木瓜 翠(・・・いや、僕しかいないか)
真木瓜 翠「策は──ある」
「さすが翠(すい)!」
真木瓜 翠(とても策とは言えない策だけど 僕がまとめなきゃ)
真木瓜 翠(僕が師に代わり皆を導く── 寺子屋で散々やってきたことじゃないか)
真木瓜 翠(やるんだ、やるしかない)

〇地球
  皆で帰るんだ!
  僕らのテラ(地球)小屋に──

コメント

  • 根本さんこんばんは!
    やはり視点、題材がとにかく魅力的ですね!
    うつろ船、という言い方、香箱?のようなものが発見されるみたいな時代背景に合わせた言い方がくせになります

    師匠が狂気じみてて宇宙人ぽくて最高です
    これは、、、続きをこそりとお待ちしてます

  • これはすごくいい感じですね。
    大和先生は生まれ変わったら「鳳凰院凶真」とか名乗りそうで楽しみです。
    オチの「地球(テラ)小屋へ」は竹宮惠子先生もきっと満足のはず
    色々凄すぎですね

  • まさかタップノベルでうつろぶねの話が出てくるとは。とても壮大なでもB級感満載のストーリーです。続きを楽しみにしています。

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