フリー素材俺

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フリー素材俺(脚本)

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〇テレビスタジオ
アナウンサー「本日のゲストは諸星翔さんです!」
アナウンサー「役者だけではなく歌手や画家として、マルチに才能を発揮されています」
アナウンサー「どうぞ~」
諸星翔「こんにちは、諸星翔です。 よろしくお願いします」
アナウンサー「本日は、諸星翔さんが主演を務める「青に翔る」についてお話をお伺いしたいと思います」
諸星翔「よろしくお願いします」

〇散らかった部屋
  夕食を食べながら俺はテレビを見ていた
只野 勇太(超人気俳優か・・・羨ましい)
只野 勇太(これだけイケメンなら、きっと仕事にも困らないだろうな・・・)
  人気俳優になるために上京して4年──
  すぐに俺は人気俳優になれると信じていた
  しかし、まだ俺は売れない俳優を続けている
  エキストラなどの俳優業だけでは食べていけず、工事現場の夜勤のアルバイトを掛け持ちしている
只野 勇太「腐っててもしゃーない・・・」
只野 勇太(オーディションの募集を探してみるか)
只野 勇太「フリー素材サイトのモデルの募集?」
只野 勇太「フリー素材だと、たいした金額はもらえないだろうな・・・」
只野 勇太(まあ金額にものいえる立場じゃないけど)
只野 勇太「とりあえず、応募だけはしてみよう」
只野 勇太「とりあえず、応募っと・・・」
只野 勇太「しかし、眠いなぁ・・・」
只野 勇太「夜勤の仕事まで時間があるから、少し仮眠でもしよう」

〇応接室
  後日、フリー素材のサイトからモデルの採用の通知が来た
  写真撮影のために俺は事務所に呼ばれた
只野 勇太「只野勇太です。よろしくお願いします!」
webサイト運営会社 社長「ああ、よろしく只野くん」
webサイト運営会社 社長「ここに契約事項が書かれた書類があるから、目を通してサインをしてくれるかい?」
只野 勇太「大丈夫です!俺どんな仕事もやりますから!」
webサイト運営会社 社長「・・・」
webサイト運営会社 社長「募集要項にも書いたが、撮影した写真は素材として利用者が自由に使えるようになる」
webサイト運営会社 社長「その点、君は承諾してくれるということだよね?」
只野 勇太「もちろんです!」
  俺は分厚い書類にちゃんと目を通さず、サインをした
只野 勇太(まあ、給料は安いけど、もしかしたらフリー素材を見てだれかが俺をスカウトしてくれるかもしれないし・・・)
  そうして、俺は素材となる写真を何枚か撮影した

〇街中の道路
  数ヶ月後──
只野 勇太「買い物も済んだしどこかで昼飯でも食べるか」
おばあちゃん「ねぇ!あなた!」
只野 勇太「はい?」
おばあちゃん「あなた旨杉食品の広告の人よね。あのサプリ本当に効くのかしら?」
只野 勇太(旨杉食品?俺の素材が使われていたのか?)
只野 勇太「それは、広告で俺は実際にサプリは飲んではいないんです」
おばあちゃん「あら、そうなの。残念・・・」
  おばあさんは興味を無くしたのか去っていってしまった
只野 勇太(まさか、俺の顔を覚えている人がいるなんて)
只野 勇太(もしかしたら、同じように広告をみた人からオファーがくるかもしれないぞ!)
白鳥 玲香「ちょっと!あなた!」
只野 勇太「はい、なんでしょう?」
只野 勇太(こんな美人に声をかけられるなんて・・・)
只野 勇太(ついに俺も人気俳優に・・・!!)
白鳥 玲香「あんた、池照卓也でしょ?」
只野 勇太「いえ、俺の名前は只野勇太ですが・・・」
白鳥 玲香「しらばっくれるつもり?」
只野 勇太「はっ?」
白鳥 玲香「なんでお見合いの予定すっぽかしたの?連絡も突然取れなくなったし」
只野 勇太「お見合い?なんのことを?」
白鳥 玲香「ほんと最低・・・ちょっと顔がよかったから声かけてあげたのに・・・」
只野 勇太「人違いですよ!」
只野 勇太「俺は関係ないんで、それじゃ・・・」
白鳥 玲香「ちょっと?逃げんの?」
白鳥 玲香「逃げんな!」

〇ラーメン屋のカウンター
  ラーメン屋
只野 勇太(なんなんだよ・・・)
只野 勇太(あんな人と約束なんかしてないぞ・・・)
只野 勇太(婚活サイトにでも勝手に写真が使われていたってことか・・・?)
  俺は逃げるようにラーメン屋さんに入ってしまった
只野 勇太(昼飯も食べてないし、ラーメンでも食おう)
只野 勇太「すいません、醤油ラーメンひとつ!」
競馬好きおじさん「兄ちゃん久しぶりじゃねぇの?」
只野 勇太「え、誰ですか?」
只野 勇太(こんな人、俺知らないぞ・・・)
競馬好きおじさん「おい、おい、おい・・・忘れたなんて言わせねぇぞ」
競馬好きおじさん「先週、この店で兄ちゃんに金貸してやったじゃねぇか」
競馬好きおじさん「競馬で負けて金がないって」
只野 勇太「知りませんよ・・・人違いじゃ・・・」
競馬好きおじさん「しらばっくれんのか!?」
  男の罵声でラーメン屋が静まり返った
只野 勇太「ひ、ひと違いですって!」
只野 勇太「俺は関係ないですから!」
只野 勇太「どうなってんだよ・・・」
  注文したラーメンが出てくるのを待たずに、俺はラーメン屋から逃げ出した

〇マンションの共用廊下
只野 勇太「なんなんだよ、今日は厄日かよ・・・」
只野 勇太「知らない奴にいちゃもんつけられてばっかりだ・・・」
只野 勇太「あ、あれ?」
  戸締まりしていたはずなのに、家の鍵が開いていた
  扉の隙間から物音が聞こえる
只野 勇太(さらに泥棒なんて・・・)
只野 勇太(なんて日だ・・・)

〇散らかった部屋
只野 勇太「おい・・・いるのはわかってるんだからな・・・」
只野 勇太「え?」
只野 勇太「な、なんで俺が?」
只野 勇太「そっくりさん!!!?」
只野 勇太「お前がフリー素材だからだよ」
只野 勇太「なにを意味がわからないことを・・・」
只野 勇太「あの女性やおっさんを騙したのも、お前がやったんだな!」
只野 勇太「お前のこと自由に使っていいんだろ?」
只野 勇太「素材の話だろう?」
只野 勇太「ふざけるな!俺の肖像権はなんなんだ!」
只野 勇太「ふざけるもなにも、契約書はちゃんと読んだのか?」
只野 勇太「え、契約書?」
只野 勇太(契約書なんてちゃんと読んでいない)
只野 勇太「良かったじゃないか。有名人になれて」
只野 勇太「お前は有名になりたかったんだろ?」
只野 勇太「・・・違う!そんなんじゃない!」

〇散らかった部屋
只野 勇太「はっ!」
只野 勇太(さっきの奴がいない・・・!!)
只野 勇太「もしかして、俺寝ていたのか?」
只野 勇太「良かった・・・夢だったのか」
只野 勇太「あんな変な夢を見るなんて。 俺、だいぶ疲れていたのかな・・・」
  テレビのから流れるニュース番組の音声
  21時のニュースです
  東京○○区のコンビニで
  強盗殺人未遂事件がありました。
  警察は容疑者の写真を公開しました
  尚、容疑者は逃亡中です

コメント

  • アンドロイドやクローンを扱ったストーリーでは既視感のある設定を、誰もが馴染みのある「フリー素材」の三次元化に落とし込んだ作者さんのアイデアとセンスが光ります。ラストの本人アップのスチル、どんなお化けや幽霊よりも自分自身のコピーが一番ホラーであることを思い知らされました。

  • 俳優の仕事がしたいという夢より、有名になってお金がを稼ぎたいという欲望の方が勝っていた現れなのでしょうか、とても気の毒です。自分を安売りするには、もったいない素材なんだと思います。

  • 恐怖の展開に何度もゾクリとしてしまいました。フリー素材の人って、ある意味では有名になりますよね。病院のホームページをいくつも見てみたら、どこの病院でも同じ受付のお姉さんの画像があったりしますからw

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