エピソード1(脚本)
〇名門校の校門(看板の文字無し)
夜、接ぎ当ての入った古い学ランを着た児島が東都大学校門前で時計を気にしながら立っていた
児島恭介(お遅い、パーティーはもう始まるってるのに全く)
〇路面電車
その頃美穂が真紀をせかしながら校門へと向かっていた。
美穂「お姉様、急ぎましょう!!もうパーティーがはじまってるわよ」
真紀「大丈夫、まだ始まったばかりよ」
美穂「でも悪いわ、児島君との待ち合わせに遅れるのは」
真紀「覚えておきなさい美穂、わざと遅れてゆくのも男の気を引くテクニックの内なんだからね」
美穂「でも・・・」
真紀「それより聞いた?今度の旅行先またハワイだって、飽きるわよね毎年」
美穂は微笑みながら真紀を窘めた
美穂「毎年ハワイに行けるだけましでしょ、それにお父様はお爺様たちもお連れしたいからいつも暖かいハワイに決めたんだわ」
美穂の話を上の空で聞いていた真紀はいい考えを思いついたとばかりに目を輝かし始める
真紀「そうだ、今度は児島君も誘おうよ」
美穂は真紀の相手の事を考えない我儘な提案に小首をかしげてしまう
美穂「そうしたいのは山々だけど・・・児島君は就職活動で大忙しだし悪いわ」
真紀「つまんないなぁ」
美穂は自分勝手な真紀を思わず諭した
美穂「お父様の会社に無試験で入れる私達とは違うのよ恭介は」
恭介ですって!、美穂の何気ないその一言で真紀のジェラシーが燃え上がった
真紀「恭介!、へぇ児島君をそう呼ぶんだ美穂。いつからそんな関係になったの美穂?」
美穂は口を滑らした事に気づき慌てて弁解を始めた
美穂「そ、そんな関係では・・・」
その言葉を聞いて真紀はニヤリと笑い美穂を試すようにな口調で提案してきた
真紀「じゃぁ、今度入れ替わらない!」
美穂は何のことか判らずキョトンとしてしまった
真紀「試してみようよ、彼を。私達は双子だからわかりゃしないわよ」
その言葉が終わらない内に真紀は美穂から腕時計を奪い取ると自分の腕にはめた
美穂「きゃぁ、痛い止めて!お姉さま」
〇名門校の校門(看板の文字無し)
ようやくやって来た美穂を見つけて児島は嬉しそうに手を振ると真紀は美穂の時計をはめた腕を差し出して児島に話しかけた
真紀「お待ちになって?恭介」
児島恭介「少しですけどね、真紀さん」
悔しそうな眼で児島を睨んだ真紀は言い当てられた恥ずかしさを言葉に出していた
真紀「何故私が真紀と分かったのよ」
児島恭介「そりゃ美穂なら謝罪から入るからね、でもその前に遅れる電話をくれるよ。それよりもう始まってるから早く入りませんか?」
〇ライブハウスのステージ
中に入ると大勢の人でごった返す中ポップミュージックがけたたましく鳴り響き美穂は眉をしかめ、真紀はリズムを刻んでいた
児島恭介「さて飲み物は何にしますか?」
真紀「ドライマティーニ」
美穂「オレンジジュースをお願いしますわ」
児島恭介「了解」
児島は飲み物を取りに二人から離れて行く
真紀「お父様はご存知?美穂が児島君と交際してる事」
美穂「まだ話してないの」
真紀「知ったら驚くだろうな」
飲み物を両手に抱え児島が近づいてくる
児島恭介「ハイお嬢様達。ところでお父様に話してくれたかい美穂」
真紀「何の話?」
児島は意を決したように喋り始めた
児島恭介「美穂との結婚について内諾をしてもらう話さ」
美穂は怒りを込めて児島に尋ねた
美穂「プロポーズは?」
児島はバツが悪そうに頭を掻いた
児島恭介「だって内諾が先の方がいいと・・・」
美穂「酷いわ、私の気持ちを確かめるのが先でしょ」
児島恭介「えっだって昨夜は俺達、一晩中ベッドの・・・」
美穂は思わず顔を赤くした
美穂「バカ、お姉さまの前で言うことないでしょ恭介」
児島恭介「ご、ごめん、至急指輪を買ってくるよ」
その様子を見ていた真紀は冷ややかな口調で児島に言い放つ
真紀「無理ね美穂とは」
美穂「なんで?もう21よ、私」
真紀「だ、だってまだでしょ児島君の就職」
児島恭介「既に何社かの内定は戴いてます」
美穂「それに私だって働くわ、だから生活できるはずよ」
真紀は諦め顔で美穂の耳元で囁き始めるとそのままで人込みを掻き分け美穂を連れ出した
児島恭介「チョット待てよ何処へ行くんだ二人とも」
〇大広間
美穂と真紀が貴賓室に入るのを見た児島は彼女達に追いつこうと自分も貴賓室に入っていった
児島恭介「おい、待てったら」
二人を追いかけるのに気を取られ白鳥彩香に児島はぶつかってしまう
児島恭介「す、すみません。お怪我はありませんでしたか」
白鳥彩香の上品でエレガントな仕草とエキゾチックな容姿に児島は出会う度に何故か緊張してしまう
白鳥彩香「児島君こそ、そんなに急いでどうしたの?」
児島は彩香の肩越しに美穂の姿を追ったがその姿は人々の間に消えていた
児島恭介「い、いやその・・・いつもながらお美しいですね白鳥教授が羨ましい」
その時児島は彩香が遠くを見てる事に気づいた
児島恭介「どうかされましたか」
彩香は憂いを含んだ表情で壁に掛けてある絵画を指さした
白鳥彩香「人を赦すって難しいですわ」
児島恭介「ゲッセマネ、コレッジョの傑作ですよね」
白鳥彩香「そう、キリストが最後の祈りを捧げた時を描いた絵・・・」
彩香が話していると青い顔をした美穂が児島に近付いてきた
児島恭介「大丈夫か?顔が青いぞ」
美穂「ウウン、それより恭介・・・」
遠くに目を移した彩香が微笑みながら手を振り始めた
白鳥彩香「あっ、主人がいたわ、それじゃぁ」
美穂は今にも泣き崩れそうになる自分を必死に耐えている様子をだった
児島恭介「話しって?」
美穂「私達、これで終わりにしましょ」
児島恭介「えっ、何で!」
美穂「何でもよ、もう私の前に現れないで」
そう告げるなり児島の前から走り去る美穂の後ろ姿を児島は呆然と見つめていた
白鳥浩太郎「よっ、児島君、飲んでるかね」
児島が後ろを振り向くと酔って顔を赤くした白鳥教授と助手のジャンがいた
児島恭介「あれ?さっき奥様が探してましたけど」
ジャン「私が奥様を連れてきてあげますよ教授」
白鳥浩太郎「そうだ、今度美穂君と結婚するんだって?おめでとう」
児島恭介「そ、それが・・・」
白鳥浩太郎「まぁ、女性はマリッジブルーに罹りやすいからな・・・飲みながら話そうか」
児島は白鳥教授に誘われるままバーカウンターに向かって歩き出した。
〇シンプルなワンルーム
翌朝、美少女フィギアが本棚に並んでる部屋で児島は布団に包まり鼾を掻いて寝ていた。そんな中突然スマホの受信音が鳴り響く。
目が覚めた児島はけだるそうに手を伸ばしスマホを布団の中へ入れた。
???(ハイ、児島です。警察?巴美穂は・・・・・・私のフィアンセですが?)
児島は衝撃のあまり布団から飛び起きた
何ですって!美穂が亡くなった!!分かりましたすぐにお伺いします
〇警察署の霊安室
静寂に包まれた東向島警察署の無機質な死体安置所の中で児島の泣き声が響いている
児島恭介「クソいったい何があったんだ美穂」
何も答えない色白の美穂の屍が静寂をより際立たせている。そして児島はやり場のない怒りを壁にぶつけた
その時真紀が泣きながら死体安置所に入ってきた
真紀「血を吸われた状態だったから多分ドラキュラにやられたんだろうって刑事さん」
児島は行き場のない怒りの矛先を真紀に向けた
児島恭介「多分だって!血を吸われて死んだんだろ」
その剣幕にシドロモドロとなる真紀
真紀「な、何よ私に八つ当たりしないで欲しいわ」
児島恭介「ドラキュラに決まってんじゃねえか」
真紀「だって美穂のドラキュラ警報機は作動してなかったし・・・」
この頃、ドラキュラの被害から逃れるためドラキュラの誘因フェロモンを検知すると警報と共にそれを打ち消す警報機を身に着けてた
真紀「それに希少動物保護官も当時美穂の周りにドラキュラはいなかったって・・・だから警察も自殺として処理したらしいの」
児島恭介「つまり死因不明だから自殺として処理したわけだろ」
児島は憎しみに満ちた目をぎらつかせて叫んだ
児島恭介「復讐をしてやる、美穂を殺したドラキュラに」
真紀は児島を宥めようとした
真紀「止めてお願いだから、そんなことをしても美穂は生き返らないわ、それにドラキュラは希少動物よ現行犯でなければ殺せないわ」
しかしその決意を全身に匂わせ児島は死体安置所を後にした。
(続く)
いきなりの訃報にびっくりしますよね。
ドラキュラに血を吸われて死ぬって、どれくらいの血を吸われたんでしょうか。
彼の今後が気になります。
保護動物としてのドラキュラ、そして警報器、面白そうな世界設定ですね。そして、ドラキュラによる殺害事件が発生、今後の展開が楽しみです。
死因がドラキュラに血を吸われた事というのにドキっとさせられましたが、これから繰り広げられる復讐劇にワクワクします。双子の真紀さんが力を貸してくれるといいですね。