自宅内生存少女(インドア・サバイバル・ガール)

中村朔

第7話 自宅外生存少女(脚本)

自宅内生存少女(インドア・サバイバル・ガール)

中村朔

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〇雪洞
  16:00 九龍岳・雪洞
穂高亜樹「・・・吹雪やまないな」
増田大樹「何か見える? 救助のヘリとか」
穂高亜樹「いや、視界ゼロ」
岡崎洋介「暗くなってきた・・・もう夜かよ」
増田大樹「亜樹がペンライト持っててよかった。 真っ暗なんて俺、耐えらんねーよ」
穂高亜樹「こんな光でもあると心強いだろ」
岡崎洋介「あと、この雪穴、雪洞? 掘るのすげー大変だったけど、温かいのな」
増田大樹「なんでこんなの知ってんの?」
穂高亜樹「子供の頃に教えてもらったんだ。 リアルに役立つなんて思わなかったけど」
岡崎洋介「・・・俺たち、助からないのかな」
穂高亜樹「諦めるなよ」
増田大樹「だってもう2日目だぜ? 救助なんて全然来ないじゃんか!」
穂高亜樹「待ってればきっと来る」
増田大樹「・・・お前、 なんでそんなに落ち着いてられんの?」
穂高亜樹「前に同じような体験したからかな」
岡崎洋介「遭難したことあんの?」
穂高亜樹「小学生のときで、 遭難っていうか迷子だったけど」
穂高亜樹「怖かったけど、いっしょに居てくれた やつがずっと元気づけてくれたんだ」
穂高亜樹「きっと助けが来る。 だから体力を温存して、 いざというときに動けるようにしようって」
増田大樹「相手も小学生だろ? すげーな」
穂高亜樹「すごいんだ。 何でも自分でできるし、冷静だし」
穂高亜樹「俺は、そいつならどうするかなって 思って行動してるだけで」
増田大樹「いや、亜樹だってすごいよ」
穂高亜樹「俺はすごくないよ。すごいのは・・・」
穂高亜樹「・・・さ、チョコ食って少し休もうぜ。 休んだら吹雪やんでるかも」
穂高亜樹(2人ともギリギリだな・・・ これ以上は・・・)

〇テントの中
  17:00 山岳救助隊・遭難対策本部
チーフ「チームからの定時連絡は?」
救助隊「要救の痕跡は確認できていないそうです」
チーフ「現在地は?」
救助隊「エリアCの尾根です」
チーフ「ヘリは飛べそうか?」
救助隊「視界が悪く、飛行不可です」
チーフ「もう日暮れか・・・ 体力的に、2回目の夜は厳しいな」
救助隊「要救の家族が到着しました」
穂高アキ代「あの、穂高亜樹の母親です」
穂高小鳥「兄貴は? 見つかったんですか!?」
チーフ「現在捜索中です」
穂高アキ代「もう2日ですよ? あの子、大丈夫なんでしょうか・・・」
チーフ「天候が悪く捜索が難航しているんです」
穂高小鳥「捜索できないってこと?」
チーフ「いえ、捜索は続けています。ただ 山は広い。範囲を絞って捜索しています」
チーフ「今はこの沢を中心に裾野のエリアを。 初心者は道に迷うと 山を降りることが多いですから」
チーフ「進展があればお知らせします。 落ち着いて、お待ちください」
穂高アキ代「・・・あの子、大丈夫かね」
穂高小鳥「うん・・・あれ?」
穂高アキ代「どうしたんだい」
穂高小鳥「向こうにハル姉ちゃんがいたような・・・」
穂高アキ代「まさか・・・あの子は家でしょ?」

〇雪山
晴菜ハル「裾野を捜索って言ってたけど、 亜樹、山を降りてるかな」
晴菜ハル「・・・登ってる気がする。迷ったらまず、 自分の居る場所を確かめようとするはず」
晴菜ハル「下は救助隊が探してる・・・ 私は、上を探そう」

〇雪洞
  22:00 九龍岳・雪洞
増田大樹「吹雪、全然やまないよ・・・ ていうかひどくなってない?」
増田大樹「なあ、降りようぜ? じっとしてても助からないよ!」
岡崎洋介「バカ、外は猛吹雪だぞ? マジで死ぬぞ?」
増田大樹「でも、このままだと凍死するって!」
穂高亜樹「・・・2人とも落ち着けよ」
増田大樹「俺は降りる。ライト持ってくぞ」
岡崎洋介「おい、離せよ!」
穂高亜樹「あ、おい、狭いんだから暴れ・・・」

〇雪洞
増田大樹「あっ!?」
岡崎洋介「ライトが壊れた・・・」
増田大樹「もうダメだ・・・ 俺たち、このまま雪の中で死ぬんだ!」
岡崎洋介「お前がテンパって動こうとするからだろ!」
増田大樹「うるせえ! 俺だって・・・」
穂高亜樹(ダメだ・・・もうみんな限界だ)
穂高亜樹(どうしたらいいんだ・・・ こんなとき、ハルだったら・・・)
穂高亜樹(ハルがいたら・・・)
穂高亜樹「・・・ん?」
穂高亜樹「・・・2人とも静かに!」
増田大樹「・・・・・・?」
穂高亜樹「いま、吹雪の中に光が見えたような・・・」
増田大樹「えっ?」
岡崎洋介「もしかして救助隊? ・・・おーい! おーい!」
増田大樹「ここでーす! おーい!」
穂高亜樹「光った! やっぱり人がいる!」
岡崎洋介「こっち来てる! おーい!」
増田大樹「救助隊だよな! ・・・あれ? でも1人?」
???「・・・亜樹!」
穂高亜樹「えっ!?」
晴菜ハル「・・・無事でよかった」
穂高亜樹「ハル!? なんでここに?」
増田大樹「え? 知り合い? なんでこんなとこにいんの?」
岡崎洋介「もしかして助けに来てくれたわけ!?」
晴菜ハル「話はあと。 みんな立って! すぐに移動する」
増田大樹「え? 移動?」
晴菜ハル「ここだと雪崩に巻き込まれる可能性がある」
穂高亜樹「起きそうなのか?」
晴菜ハル「時間の問題。移動して新しい雪洞を掘ろう」
増田大樹「また雪洞!? 動けないよもう!」
岡崎洋介「俺も・・・もう雪崩に飲まれてもいいよ」
穂高亜樹「お前ら、ここは危ないんだって! 移動するぞ」
増田大樹「いやだ! もう一歩も動けな・・・」
晴菜ハル「立て!」
増田大樹「!?」
穂高亜樹「!」
晴菜ハル「死にたい? このまま動かないと、確実に死ぬ」
増田大樹「し・・・」
晴菜ハル「家族も友達も、無事を信じて待ってる。 なのに会えなくていいの?」
晴菜ハル「サヨナラも言えずに会えなくなることが、 どれだけ辛いことか、わかる?」
「・・・・・・」
晴菜ハル「待っててもダメ。 みんなに会いたいなら、動いて!」
穂高亜樹「荷物は俺が持つ。 岡崎、増田に肩を貸してやってくれ」
岡崎洋介「わ、わかった。増田、歩けそうか?」
増田大樹「うん・・・俺も、家に帰りたい」
晴菜ハル「みんなで帰ろう。さあ、こっち!」
「お、おう!」

〇雪山
晴菜ハル「・・・ここなら大丈夫、たぶん」
晴菜ハル「朝になったら雪洞を出て発煙筒を焚く。 それまで休もう」
  ・・・ドドドドド
岡崎洋介「あれ、何の音?」
晴菜ハル「雪崩、遠いけど」
岡崎洋介「雪崩!? この場所は大丈夫なの?」
晴菜ハル「少なくとも、飲まれる可能性は低い」
増田大樹「生きた心地がしない・・・」
岡崎洋介「でも昨日から全然吹雪やまないし、 本当に明日やむの?」
晴菜ハル「そうだね。明日も吹雪くかも」
増田大樹「やっぱりダメだ・・・」
晴菜ハル「でも終わる。 いつかちゃんと、吹雪は終わる」
晴菜ハル「辛いことだってそう。ちゃんと終わる。 ちゃんと過ぎて、過去になる」
晴菜ハル「世界は、そんなふうにできてるから」
穂高亜樹「・・・そうだな」
  ピシッ
増田大樹「・・・今の音は?」
晴菜ハル「来る」
岡崎洋介「来るって、え? 雪崩!?」
  ・・・ゴゴゴゴ
増田大樹「近い!?」
晴菜ハル「たぶんさっきいた雪洞のあたり」
穂高亜樹「大丈夫、絶対大丈夫だから!」
増田大樹「わああああ!」
岡崎洋介「ぎゃあああ!」
  2人の悲鳴、雪崩の地響き。
  正直、俺もいっぱいいっぱいだったけど。
  なんとか冷静でいられたのは、ハルと
  ずっと、手を握ってたからかもしれない。

〇冬
穂高亜樹「・・・ん・・・天国って 珈琲の匂いがすんの・・・?」

〇雪山
  コポコポ
穂高亜樹「・・・うわー、眩しい」
晴菜ハル「亜樹。おはよう」
穂高亜樹「おはよ・・・すごいな。 視界全部、雪ばっか」
晴菜ハル「2人は?」
穂高亜樹「まだ寝てる。 ていうか、すげーいい匂いだな」
晴菜ハル「発煙筒を焚いてヘリを待ちながら、 珈琲淹れてた」
晴菜ハル「山で飲む珈琲は格別だから。はい」
穂高亜樹「サンキュ・・・ くー! うまいなんてもんじゃないな」
晴菜ハル「だね」
穂高亜樹「・・・ありがと。 まさか来てくれるなんて思わなかった」
晴菜ハル「気づいたら、北海道に来てて・・・ こっちこそありがとう、 亜樹のおかげで家を出れた」

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