リモート告白大作戦・後編(脚本)
〇一戸建て
川嶋シズノ「ここだよ、ちょっと待っててね」
足立タツヤ「あっ!」
長谷川ツバサ「うお!なんだよ!?」
足立タツヤ「そうだったー、今日買わなきゃいけない物があったんだった!」
長谷川ツバサ「は?」
足立タツヤ「ほら、オレの母さんそろそろ誕生日だろ?ココロにプレゼント選び手伝ってもらうの忘れてたわぁ」
長谷川ツバサ「いや、お前おばさんに誕生日プレゼントなんてしたことないだろ」
足立タツヤ「は、はぁ、俺は毎年やってますー。 何言ってんだよぉ」
ツバサの肩を掴み耳打ちするタツヤ──
足立タツヤ「ばか!二人っきりにさせてやるってことだよ!」
長谷川ツバサ「なっ!?」
足立タツヤ「ってことでココロ、買い物行くぞ!」
ココロ「ん~、よくわかんないけどわかった~」
足立タツヤ「悪いな、川嶋。ツバサは置いて行くから何でも手伝わせてやって」
川嶋シズノ「う、うん」
長谷川ツバサ「お、おい、マジで行くのか?」
足立タツヤ「当たり前だろ!二人っきりになったからって変なことすんなよ。 こういうことは順序が大事だからな!」
長谷川ツバサ「な、何言ってんだっ!当たり前だろ!」
川嶋シズノ「?」
長谷川ツバサ「あっ・・・」
足立タツヤ「んじゃ、俺たちは行くな!健闘を祈る!」
ココロ「じゃあねぇ、シズノちゃん。また明日~」
川嶋シズノ「健闘?」
長谷川ツバサ「あ、いや、なんでもないよ!?」
川嶋シズノ「そう?じゃあ、入ろっか」
長谷川ツバサ「お、お邪魔します・・・」
〇女の子の部屋
長谷川ツバサ「こ、ここが川嶋の部屋・・・」
長谷川ツバサ(女の子の部屋なんて初めてだぞ・・・)
川嶋シズノ「散らかっててごめんね」
長谷川ツバサ「あっ、いや、俺の部屋の100倍は綺麗!!」
川嶋シズノ「何それ、フフッ」
長谷川ツバサ「あ、それが川嶋のパソコン?」
川嶋シズノ「あ、そうそう」
川嶋シズノ「とりあえず、マイクとかカメラとか機材は揃ってるんだけどオンライン通信とかの設定とかがいまいち分かんなくて」
長谷川ツバサ「なるほど、じゃあ、早速やってみようか。電源入れてみてくれる?」
川嶋シズノ「うん、わかった!」
数十分後──
長谷川ツバサ「よし、カメラの角度とかマイクの音量レベルも問題ないし、これで大丈夫だと思うよ」
川嶋シズノ「ありがとう!長谷川君の説明、分かりやすかったよ」
長谷川ツバサ「そ、そうかな?まあ、分かりにくい所はやりながら慣れればいいよ」
川嶋シズノ「あ、あのさ。今から長谷川君と通話してみてもいいかな?」
長谷川ツバサ「え?」
川嶋シズノ「ほ、ほら!テストも兼ねて、ねっ!」
長谷川ツバサ「あ、あぁ。分かった。じゃあ、川嶋のID教えてもらっていい?」
川嶋シズノ「うん、これだよ」
長谷川ツバサ「これで、よしっと じゃあ、掛けるよ?」
川嶋シズノ「うん」
川嶋シズノ「あっ、掛かってきた。 えっと、このボタンを押して──」
長谷川ツバサ「おっ」
お互いの画面に姿が映る──
川嶋シズノ「あっ、映ってるよ。これでいいんだよね?」
長谷川ツバサ「うん、うまくいったみたい」
川嶋シズノ「良かった~、ありがとね、長谷川君」
長谷川ツバサ「え?あ、いや、全然これくらい・・・」
川嶋シズノ「今回の事もそうだけど・・・・・・」
川嶋シズノ「私ね、小さい時からお父さんの仕事の都合で引っ越しが多かったんだ」
長谷川ツバサ「そうなんだ、それで中学からこっちに?」
川嶋シズノ「うん、だから中学の時も、どうせまた引っ越すだろうからってあまり皆と仲良くしようと思ってなかったの」
長谷川ツバサ(確かにあの時の川嶋って皆と一緒にいるところ、あんまり見たことないな)
川嶋シズノ「でもね、中学の途中にお父さんが転職して引っ越さなくて良くなって」
長谷川ツバサ「そうだったんだ」
川嶋シズノ「でも、それまで転校ばかりで友達の作り方とか分かんなくて、引っ越さなくて良くなってからもなかなか皆の輪に入っていけなかった」
川嶋シズノ「でも中学の文化祭の時、一人で作業してた私に声掛けてくれたでしょ?長谷川君」
川嶋シズノ「気まぐれで声掛けてくれたのかもしれないけど私、嬉しかったんだ・・・」
長谷川ツバサ「いや、気まぐれとかじゃ・・・」
川嶋シズノ「それから、長谷川君や足立君と話せるようになって徐々に皆の輪に入れるようになったんだよ」
川嶋シズノ「だから、ありがとう・・・」
長谷川ツバサ「そんなの!別に・・・」
川嶋シズノ「ふふっ、ごめんね。なんだか画面越しだと普段言えない事も勇気出して話せるね。 すぐ後ろに長谷川君いるのに・・・」
長谷川ツバサ(勇気か・・・)
川嶋シズノ「・・・よしっ、リモート通話もこれで完璧だね!何か分からない事があったらまた通話してもいいかな?」
川嶋シズノ「・・・長谷川君?」
長谷川ツバサ「・・・俺は・・・気まぐれなんかで川嶋に声掛けたんじゃないよ」
川嶋シズノ「え?」
長谷川ツバサ「俺は・・・川嶋と仲良くなりたかったんだ!」
長谷川ツバサ「・・・転校してきた時から、俺・・・川嶋の事が好きだったんだっ!だから!だから俺!川嶋と付き合いたい!」
長谷川ツバサ「・・・川嶋シズノさん。俺の彼女になってください!」
川嶋シズノ「・・・・・・」
川嶋シズノ「ふ、あははっ。長谷川君、勇気出し過ぎだよ」
長谷川ツバサ「あっ、いや・・・ごめん!いきなり!びっくりしたよな!」
長谷川ツバサ「あぁ~、・・・ホントごめん!」
川嶋シズノ「あはは。ううん、ごめんね!笑ったりして。いきなりでビックリして──」
川嶋シズノ「でも私、嬉しくて。 なんだか一瞬よくわかんなくなっちゃった」
長谷川ツバサ「だ、だよなぁ・・・」
長谷川ツバサ「・・・えっ、嬉しい?」
川嶋シズノ「うん。あの時、助けてくれた時から私は長谷川君の事が好きだったんだよ」
長谷川ツバサ「ほ、ホントに?」
川嶋シズノ「うん、だから・・・」
川嶋シズノ「長谷川ツバサ君、私の彼氏になってください」
長谷川ツバサ「あ、えと、その・・・」
長谷川ツバサ「よろしくお願いしますっ!」
川嶋シズノ「こちらこそ、これからよろしくお願いします」
お互い、画面に向かって頭を下げる──
「ふっ、ふふっ。あはははっ」
〇教室
足立タツヤ「はぁーっ!昨日の今日でもう付き合うことになってんのかよっ!なんだそれ!」
長谷川ツバサ「ば、ばかっ、声がでけーよっ」
ココロ「良かったね!シズノちゃん!」
川嶋シズノ「う、うん。ありがとうココロ」
足立タツヤ「いや、ココロは驚かねぇのかよ・・・。昨日の今日だぞ」
ココロ「驚いてるよぉ、でもいつかは付き合うと思ってたから、だってココロ」
ココロ「シズノちゃんからツバサ君の事で相談されてたし」
「えっ!!」
川嶋シズノ「ちょ、ココロぉ!」
ココロ「シズノちゃん、勇気が出せない自分を卒業できるように頑張るって!」
ココロ「そんな時にツバサ君たちから相談されたからねぇ~」
長谷川ツバサ「そ、そうだったんだ・・・」
恥ずかしさで俯くシズノ
川嶋シズノ「~~~」
ココロ「いやぁ、タイミングばっちりだったよねぇ」
足立タツヤ「なんで、教えてくれないんだよぉ」
足立タツヤ「昨日の夜いろいろ計画考えてたんだぞぉ」
ココロ「あっ、そうだ!今度4人で一緒にデートしようね!」
川嶋シズノ「う、うん・・・」
足立タツヤ「ココロぉ、なんで教えてくれなかったんだよぉ~」
ココロ「タツヤ君うるさーい」
足立タツヤ「ココロぉ~」
ココロを追いかけていくタツヤ──
「あははっ/ふふっ」
川嶋シズノ「待ってよ二人ともー」
長谷川ツバサ「おーい、四人でどこ行くか決めようぜっ」
リモート告白大作戦──fin