プロローグ(脚本)
〇荒廃した街
弘明「だぁあ、もう!! 連中、どれだけ装備を蓄えてやがった!?」
月が照らす真夜中の町中に、無数の銃声が鳴り響く。
日本を離れ、《箱舟》に住むようになってから、銃声なんてものは、よくある環境音でしかなくなった。
しかし、今日のそれは、普段聞くものとは明らかに異なる密度を持って、自分の身に降りかかっていた。
彩乃「壁、作っといて正解だったね 《障壁》で耐えるのは無理でしょ、こんなの」
無数の銃弾から守ってくれている壁を弄りながら、呑気に声を掛けてくるのは同僚――片桐 彩乃(かたぎり あやの)。
銃撃戦の最中にあって、余裕をかますその姿は中々にイラッっと来るものがある。
しかし、銃撃戦が始まった際、魔力操作を用いて即席の壁を作り、銃撃に対する遮蔽物としたのはこの彩乃である。
この場においては命の恩人。
文句なんて言えるはずもない。
弘明「マジで耐えてるだけだけどな」
弘明「流石に、このまま撃たれ続けるのは勘弁してもらいたいね」
そうこう言っているうちにも、銃撃は激しさを増している。
弘明「今日が命日かぁ・・・・・・」
ゆかり「バカ言ってないで、ちょっとは手伝って!!」
明日香「ゆかり! もうすぐ弾切れなんだけど!!」
敵方の銃撃に応戦をしている2人の同僚――相馬 ゆかり(そうま ゆかり)と瀬戸 明日香(せと あすか)が声を上げる。
せわしない2人の様子は、割と悠長にしている俺や彩乃とは対照的だ。
分隊長であるゆかりに彩乃、明日香
それに俺――金田 正弘(かねだ まさひろ)を加えた4人。
これが《狼犬分隊》の全戦力。
つまりは、だ。
弘明「詰んでるよなぁ」
ゆかり「こういう時のための《魔術師》でしょ!?」
弘明「それなんですがねぇ、片桐さん・・・・・・」
弘明「《魔力活性剤》使い切っちゃったわ」
《魔力活性剤》とは、一時的に魔力運用の能力をブーストする薬剤のことだ。
大抵の《魔術師》が、高度な魔術を使う場合には《魔力活性剤》を必要とする。
無論、俺も《魔力活性剤》を必要とする一般的な《魔術師》である。
ゆかり「・・・・・・つまり」
ゆかり「今のあなたは、田舎のヤンキーみたいな恰好した只の一般人ってこと?」
弘明「好きでこんな格好してんじゃねぇよ!?」
《魔術師》と呼ばれる《魔力適性》が高い人々が魔力を運用する際に、汎用的な装備は何かと都合が悪いらしい。
そのため、《魔術師》の装備は特注品となり――――お値段も相応に高い。
一流と呼ばれる《魔術師》ならともかく、普通の《魔術師》は動きやすく、使いまわしが効く形状の装備にするのがメジャーである。
鉄火場で普段着のヤツがいたら、大抵《魔術師》だ。
ゆかり「こんな時に・・・・・・」
弘明「文句を言うなら、《活性剤》をちゃんと支給してくれない"上"に頼むわ」
ゆかり「彩乃も《活性剤》は残ってないの?」
彩乃「ラスト1本だけ残してあるよ」
余裕の表情を保っている彩乃は、指で摘んだアンプルをゆらゆら揺らしている。
その中には《魔力活性剤》が満たされていた。
彩乃「――あ、でも」
明日香「ねぇ! ちょっとヤバいかも!!」
弘明「――――ッ!?」
彩乃「うっわ、マジかぁ・・・・・・」
ゆかり「みんな伏せて!!」
急いで壁に隠れた俺たちを、轟音と共に衝撃が襲う。
今までの銃撃がお遊びに思える威力の銃撃は、遮蔽物ごと相手を殺傷するためのもの。
魔術的に強化された、大口径のアンチマテリアルライフル。
《人喰い銃》とも呼ばれるその銃を扱う人物。
弘明「ホーネット・・・・・・!」
明日香「何であんなヤツが出てくんのよ!?」
あまりの威力と反動から、標的どころか射手まで”喰ってしまう”と言われる《人喰い銃》
ホーネットは、そんな《人喰い銃》を使いこなすことで有名な傭兵だ。
咄嗟に防御態勢をとることができたのは、過去に何度かその姿を目撃していたためである。
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
いきなりの戦闘シーンからのスタート、いいですね。メンバーも個性的で今後の展開が楽しみです。
たしかに白い粉を鼻から吸ってたら、違法薬物に見えなくもないですね。笑
緊張感のある戦場で、彼らは「いつも通り」にしている理由がいいですね。
かっこいいバトルです!
想像絶するような戦場にいるはずなのに、みんなそれぞれのポジションを上手くこなしながら悠々と立ち向かっている雰囲気が魅力的でもありました。チームワーク、どんな状況にも欠かせないものですね。