裏の顔(脚本)
〇教室
三沢葵「・・・」
木村大吾「なんだ、なんだ?」
木村大吾「また桐生とイチャついてたのかよ」
三沢葵「大ちゃん・・・」
木村大吾「いい加減、従兄だからって教師とベタベタすんのやめろよな」
三沢葵「ごめん、ごめん、僕とお兄ちゃんは仲良しさんなので許してよ」
木村大吾「チッ、桐生なんかのどこがいいんだよ。けっこう目つき悪いぜあいつ」
三沢葵「大吾・・・」
木村大吾「!」
三沢葵「お兄ちゃんのこと悪く言うと、許さないぞ」
木村大吾「へいへい、わかりましたよ」
上原智子「葵ちゃん」
三沢葵「ともっち!」
上原智子「桐生先生とのお話、速水先輩の自殺の件なんでしょ?」
三沢葵「うん、自殺したのが速水先輩だってこと、だいぶ広まっちゃったみたいだね」
上原智子「葵ちゃん・・・、やっぱり先生には話していないの?」
三沢葵「うん、話すつもりないんだ、僕」
三沢葵「お兄ちゃんには、僕のことで心配かけたくないんだよ」
上原智子「今回のこととは無関係かもしれないけど、話しておくべきだよ」
上原智子「葵ちゃんの身に危険が及ぶことだってあるかもしれないじゃない」
上原智子「あのときだって・・・」
三沢葵「ともっち!」
三沢葵「そのことは黙っているって決めたんだ」
上原智子「・・・ごめんなさい」
三沢葵「ううん、ともっちは僕のことを心配してくれているんだよね」
三沢葵「ありがとう」
上原智子「葵ちゃん・・・」
〇教室の教壇
三沢葵「あっ、ねえねえ、大ちゃん」
木村大吾「なんだよ」
三沢葵「ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
三沢葵「大ちゃんのスリッパ、僕に貸してくれないかな?」
木村大吾「は~?やなこった」
上原智子「いいじゃない大吾君、昔はいつも裸足だったんだから貸してあげなさいよ」
木村大吾「まったく、俺みたいにきちんと名前書いてないから荒らされんだぜ」
木村大吾「ほらよ」
三沢葵「わー、ありがとう大ちゃん!優しいな~」
木村大吾「・・・お、おう」
上原智子「名前か・・・」
上原智子「たしかに荒らされていたのは2年生だけだったし、何か理由があるのかもしれないね」
上原智子「名前が書いてあるかどうかは、あまり関係ない気がするけど・・・」
三沢葵「僕は書いてなかったな~」
三沢葵「きっと、どっかの変態さんの仕業だよ。裸足になってるの女子が多いし」
上原智子「もう~、葵ちゃんったら」
上原智子「あれ、葵ちゃんどこか行くの?」
三沢葵「うん、ちょいと出かけてくるよ~」
上原智子「ふふ、もう授業始まるのに~」
三沢葵「にゃはは」
上原智子「気を付けてね」
三沢葵「うん、」
三沢葵「ありがと、ともっち」
〇屋上の入口
佐々木刑事「わかった」
佐々木刑事「なら、徹底的に調べてくれ」
中村巡査「了解しました」
三沢葵「刑事のおじさん!」
佐々木刑事「お嬢ちゃん、何だまた来たのか」
三沢葵「うん」
佐々木刑事「何か用かい?」
三沢葵「先生たちとのお話はもう終わった?」
佐々木刑事「ああ、事情聴取ならもう終わったよ」
佐々木刑事「本当は君たち生徒にも聞きたい事は山ほどあるんだが・・・」
佐々木刑事「さすがに全校生徒に聞いて回るわけにもいかないんでね」
佐々木刑事「お嬢ちゃんが来てくれて、まぁ助かると言えなくもないな」
三沢葵「にゃはは、グッドタイミング」
佐々木刑事「それで、何か言いたい事があるのかい? 先に聞こうか」
三沢葵「刑事のおじさん、シンデレラって知ってる?」
佐々木刑事「なに?」
佐々木刑事「そりゃ、知ってるさ。有名な童話だろ? カボチャの馬車にガラスの靴ってな」
三沢葵「じゃあ、王子様が拾ったガラスの靴はさ、何で片方だけだったの?」
三沢葵「シンデレラが履いていたもう片方はどこにいったと思う?」
佐々木刑事「魔法が解けたから消えてなくなったんだろ」
佐々木刑事「いや、まてよ、だったら王子が拾った靴も消えてなきゃおかしいか・・・」
佐々木刑事「うーん・・・、わからんな」
三沢葵「捨てちゃったんだよ」
三沢葵「シンデレラ本人がね」
三沢葵「いつまでも持っていたら、自分がシンデレラだってバレちゃうもん」
佐々木刑事「あっ、なるほど」
佐々木刑事「で?嬢ちゃんは何が言いたいんだ!?」
三沢葵「にゃはは、別に~」
佐々木刑事「まぁ、いい」
佐々木刑事「なら、今度はおじさんの番だ」
佐々木刑事「速水京子という生徒さん、お嬢ちゃんたち下級生から見てどんな人だった?」
三沢葵「絵に描いたような優等生~」
佐々木刑事「ほう」
三沢葵「頭は良いし美人だし、全校中のあこがれの的!」
佐々木刑事「うむ、そうか」
三沢葵「でもね・・・」
佐々木刑事「うん?」
三沢葵「それは表向きの話・・・」
三沢葵「本当の速水京子を誰も知らない」