1.この世の女は(脚本)
〇黒背景
???(眩しい・・・)
〇森の中
???「――お、目が覚めたんだな!」
???「気分はどうだ? どこか痛いところはないか?」
???「えっと・・・ちょっと、ぼーっとするくらいで・・・」
???「あなたは・・・?」
???「アルバスだ。アルでいい」
アルバス「受け答えできるし、大事はないみたいだな」
アルバス「ママが無事でよかったぜ・・・」
???「ママ? 私が、あなたの?」
アルバス「ああ、俺のママだ」
???「・・・え? 私、その、あれ?」
アルバス「どうした?」
???「おかしいんです! 私は、私は――誰なんですか?」
アルバス「記憶が、ないのか・・・?」
???「あの、私ってあなたの母親なんですよね?」
???「教えてください! 私の名前とか、他にも色々──」
アルバス「お、落ち着けって! 寝ぼけてるだけかもしれないだろ?」
アルバス「向こうに小川があったはずだ そこで顔でも洗って来いよ」
???「あ、ご、ごめんなさい・・・ ちょっと行ってきますね」
〇山中の川
???(近くに息子がいてよかった・・・)
???(もし私一人だったら・・・ 早く顔洗って、戻らなきゃ!)
〇水たまり
???「・・・これが、私?」
???(こ、子供? いやいや、そう見えるだけで大人だよね?)
???(だって、そうじゃないと──)
〇山中の川
???「あっ・・・」
アルバス「遅かったから来たけど、なにかあったか?」
???(私が子供なら、私をママって呼ぶこの人はなんなの?)
???「・・・わ、私の名前を教えてください」
アルバス「やっぱり記憶がないのか・・・」
アルバス「名前は・・・悪い、わからないんだ」
???「私の、子供なのに?」
アルバス「会うのは初めてだからな」
アルバス「でも、ママなのは間違いない──」
アルバス「あ、おい!?」
〇森の中
???(なんなの? なんなの? なんなの!?)
???(私みたいな子供をママって・・・ しかも初対面!?)
アルバス「ちょっと待ってくれ、ママ!」
???(追って来てる!)
「――きみ、こっちだ」
アルバス「ママ!」
アルバス「・・・あれ、どこ行ったんだ?」
〇けもの道
???「大丈夫かい?」
???「あ、ありがとうございます・・・!」
???「偶然通りかかってよかったよ あいつは有名なスポット荒らしでね」
???「スポット荒らし?」
???「悪い奴ってことさ」
???「僕はソウガっていうんだ ・・・いや、挨拶してる場合じゃないか」
ソウガ「ともかく、ここから離れた方がいい 近くに僕の仲間もいるんだ」
???「は、はい!」
ソウガ「少し歩くから、離れないようにね」
〇山の中
???「――さっきの人って有名なんですか?」
ソウガ「うん、僕たちの間では特にね」
ソウガ「意味のわからない理屈で、こうぶつ収集の邪魔をしてくるんだ」
???「鉱物・・・石ですか?」
ソウガ「いや、降ってきた物と書いて”降物”──」
ソウガ「こういうの、見たことある?」
???(・・・これが、降物?)
???(特別なものには見えないけど・・・ だってこれは──)
???「マイク、ですよね」
ソウガ「・・・使い方もわかる?」
???「え? わかりますけど・・・」
ソウガ「――ごめん、ちょっと急ごうか あいつに見つかってもいけないしね」
???「あ、はい。そうですね!」
ソウガ「仲間と合流してから、ゆっくり話そう きみの今後とか・・・」
ソウガ「大丈夫、うちでなら記憶が戻るまで、ちゃんと保護できるから」
???「あの」
ソウガ「どうしたんだい? ほら、急がないと──」
???「私、記憶のこと言いましたっけ?」
〇山の中
ソウガ「・・・きみとあいつの話を聞いていたんだよ」
ソウガ「きみを助けるために、そばで隠れてたんだ」
???「偶然通りかかったって、言ってたような・・・」
ソウガ「そう、そこで助けようと思ったんだよ なにかおかしい?」
???(正義感で助けてくれた、のかな?)
???(けど、ここを歩いている間、他に人がいなかった)
???(そんな場所にいること自体、おかしいような・・・)
部下「――隊長、近くまで来られてましたか」
ソウガ「ちょうどよかった あの女の子、大事なお客さんなんだ」
ソウガ「ケガをさせず、丁重に扱うように」
???「え?」
???「あっ──」
〇黒背景
(なんで私、こんな目にあってるんだろ?)
(なにか、悪いことでもしたのかな・・・)
〇山の中
――ママに、なにしてんだぁああ!?
部下「どこから!?」
ソウガ「上だ!」
〇空
〇山の中
〇山の中
アルバス「このロリコンどもめ! また俺のママに手を出す気かぁ!?」
ソウガ「・・・なにが、ママだ いつもわけのわからないことを」
部下「隊長、戦降物の携帯は・・・」
ソウガ「わかっている マザコン・マントコートとやり合う気はない」
ソウガ「・・・だが、あの子を諦めるのは惜しい」
ソウガ「――きみ、早くこっちに来るんだ!」
???「え!?」
ソウガ「我々は決して、きみに危害をくわえない」
ソウガ「協力してくれるなら、記憶が戻るまで不自由ない生活を約束する!」
アルバス「聞くことないぜ、ママ! あいつらはロリコンのド変態だ!」
ソウガ「さあ、こっちへ!」
アルバス「ママ!」
???(ど、どっちも怪しいし行きたくない!)
???(でも、それなら──)
ソウガ「なっ・・・!?」
アルバス「それが正解だぜ、ママ」
???(初対面って言ったけど、ママって呼ぶからには何かある・・・よね?)
アルバス「さあ、親孝行の時間だぜ。ロリコン共!」
ソウガ「仕方ない、撤退するぞ」
アルバス「――って、おい! 逃がすわけ・・・」
ソウガ「大事なママを放っておくのか?」
アルバス「・・・さっさと行っちまえ!」
???(助かった──で、いいのかな?)
アルバス「ケガはないか、ママ?」
???「は、はい。ありがとうございます」
アルバス「敬語じゃなくていいよ 俺たち、親子なんだから」
???「なら、そうするけど・・・」
???「私とアルさん──アルは、初対面なんだよね?」
アルバス「ああ、俺が覚えてる中じゃ初めてだ」
???「なんで私が母親だってわかるの?」
アルバス「それはな・・・」
アルバス「この世の女は、俺のママだからだ」
???「・・・どういうこと?」
〇暖炉のある小屋
「──俺は捨て子だったらしい」
「どうしてママがいないのか訊いた時、 パパがそう教えてくれたんだ」
「だがパパは、落ち込む俺にこうも言ってくれた」
パパ「アル、ママとはお前を産んだとか、立派に育てたとかで決まるものじゃない」
パパ「お前がママだと思う人がママになるんだ」
パパ「ママは何歳でもいいし、何人いたっていい」
パパ「つまり──」
〇けもの道
アルバス「この世の女は、俺のママなんだ」
???「離してください! 私はさっきの人たちを追いかけるんです!」
アルバス「なんで逃げようとするんだよ、ママ?」
???「ママじゃないからですよ!」
???「あなたを信じた私がバカでした! 今からでも、あの人たちのお世話になります!」
アルバス「あいつらは本当に危ない奴なんだよ・・・ ママを行かせるわけにはいかない」
???「絶対あなたの方が危ないでしょ!?」
アルバス「俺はママには無害だって!」
???「なら有害ですよ! ママじゃないんだから!」
???(記憶を失くした上、こんな変態に捕まるなんて・・・)
???(本当に、どんな悪いことをしたらこんな目にあうんだろ・・・)
アルバス「そう不安がるなよ 記憶のことも、いろいろ手伝うしさ!」
アルバス「俺はママのためなら、なんだってするぜ!」
???「だから、ママなんて呼ばないでください!」
???「私は──」
〇レトロ
ママなんて呼んじゃだめよ?
私はね──
〇けもの道
???「──”シタラ”です」
アルバス「ん?」
シタラ「私の名前、思い出しました」
アルバス「そりゃよかった! なら”シタラ”ママだな!」
シタラ「いや、ママじゃないのは変わりませんよ!?」
アルバス「──さあ、着いたぜ!」
〇児童養護施設
シタラ「ここはいったい・・・?」
アルバス「最近お世話になってたママの村だ」
シタラ「ママって・・・」
アルバス「お、噂をすれば・・・」
アルバス「ただいま、”クロシカ”ママ!」
クロシカ「アルさん・・・!」
クロシカ「出入り禁止って、お伝えしましたよね?」
シタラ「ええ・・・」
ママだと思った人がママ、って
新しい考えすぎて笑ってしまいました🤭
どっち側の変態に付いていくのが正解だったのか
気になります!
これは何でしょうか?笑
ただのサイコ野郎と切り捨てられない何かを感じつつも、いかんせん、本能が危険を察知していますw
いつでも逃げられる態勢で読み進めようと思いますw
これから先、沢山の素敵なママと出逢えると思うとワクワクが止まりません。
彼が同担アリかナシかを気にしつつ、次話更新をお待ちしております。