エピソード1(脚本)
特別な・・・
何かになりたい・・・
〇美術室
──放課後、美術室
美術部 顧問「やっぱり、描き直した方がいいな・・・」
橋本 若菜(はしもと わかな)「そうですよね・・・」
美術部 顧問「いや、デッサンは良くできてる。 ただ、なんというか──」
美術部 顧問「中途半端なんだよ・・・」
顧問の先生に言われるまでもない。
この絵じゃコンクールで入賞できない。
自分が一番わかってる。
私の絵は下手ではないが、
圧倒的でもない──
〇美術室
美術部 顧問「ま、コンクールまで1ヶ月もあるんだし──」
美術部 顧問「それよりお前、16時から三者面談じゃ──」
橋本 若菜(はしもと わかな)「いっけない! 忘れてた!」
〇まっすぐの廊下
〇階段の踊り場
〇教室の教壇
担任「今の成績じゃ難しいな・・・」
母「あんたはどうしたいの?」
橋本 若菜(はしもと わかな)「美術系の大学に行きたい。 短大でもいい・・・」
母「はぁ・・・」
母「夢みたいなこと言ってないで、 ちゃんと現実を見なさい」
母「お絵かきは趣味で やっていればいいじゃない」
わかってるから・・・
自分に才能がないことくらい・・・
私の作品は職員室前や
市の展覧会には飾られるけど、
しょせんそこ止まり。
ネットにアップしたって、
コメントすらつかない。
中途半端な才能・・・
描いては、消して・・・
納得いかなくて・・・
描いて、描いて、描いて・・・
お母さんには
わからないだろうな・・・
一つの作品を作り上げる苦労も、
痛みも、絶望も──
〇教室の教壇
橋本 若菜(はしもと わかな)「何も知らないくせに!」
橋本 若菜(はしもと わかな)「一度でも作品を創ったことがあるの? コンクールに応募したことあるの?」
橋本 若菜(はしもと わかな)「やったこともないくせに 何で否定ばっかりするの?」
橋本 若菜(はしもと わかな)「私はできない理由が知りたいんじゃない!」
何も起こらない人生なら
死んでいるのと同じだ。
だから、だから──
〇教室の教壇
橋本 若菜(はしもと わかな)「私は特別な何かになりたいの!」
担任「お、おい! 橋本!」
母「若菜! 待ちなさい!」
〇学校の校舎
〇美術室
美術部 顧問「──ズズゥ・・・── ん~青春だね~」
橋本 若菜(はしもと わかな)「先生・・・。生徒が落ち込んでるのに 優雅にコーヒーなんて飲みますか?」
美術部 顧問「──ズズズ──」
美術部 顧問「レオナルド・ダ・ヴィンチは・・・」
橋本 若菜(はしもと わかな)「は? いきなり何ですか?」
美術部 顧問「ダ・ヴィンチは鳥の絵一つ描くにも・・・」
美術部 顧問「鳥の観察をして・・・」
美術部 顧問「解剖をして・・・」
美術部 顧問「骨格や筋肉のつき方を詳細に 記録したそうだ」
美術部 顧問「だからあんなに圧倒的な絵が描けたんだ」
橋本 若菜(はしもと わかな)「じゃあ私には無理だよ。 だって私、バカだもん・・・」
自分の成績を思い出す。
通信簿に5はなかった。
美術部 顧問「何言ってるんだ」
美術部 顧問「ここ(学校)には教えられる人が たくさんいるじゃないか」
美術部 顧問「おーおー。 あんなに走っちゃって──」
〇階段の踊り場
はぁ・・・はぁ・・・
〇まっすぐの廊下
はぁ・・・はぁ・・・
〇散らかった職員室
橋本 若菜(はしもと わかな)「飯塚先生! 航海士が主人公の小説を教えてください!」
国語教師(飯塚)「あ、ああ・・・」
橋本 若菜(はしもと わかな)「波と浮力を教えてください!」
物理教師「お? いいぞ!」
橋本 若菜(はしもと わかな)「海流や雲のでき方を教えてください!」
歴史教師「おお! 先生に任せなさい! まず、上昇気流というのがあって──」
1ヶ月後──
〇美術室
美術部 顧問「お、橋本来て── なんだ・・・寝てやがる」
美術部 顧問「──ん?」
美術部 顧問「大航海時代の人々の暮らし・・・ F=(P0+ρgh2)S−(P0+ρgh1)S・・・ すごい量を書き込んでるな・・・」
美術部 顧問「お、これが完成した絵か──」
〇朝日
〇美術室
美術部 顧問「──よく頑張った──」
応援したくなる主人公で、私も入り込んでしまいました!!今後の展開も楽しみです😊😊
美術の先生素敵ですね!
絵を描くには絵だけの知識じゃなくて、説得力を持たせるには、他のいろんな知識が必要になってくるんですよね。
きっと彼女の絵もランクアップしてます!
自分の好きなことでもなかなかうまくいかないこともあるけれど、好きだからこそ真正面から向かい合ってより良くしたいと心から思えるんですよね。スランプ続きだと情熱を忘れてしまいそうになりますが、素直に受け止め前向きに挑む若菜ちゃんを見ていて、とても勇気を与えられました。