〇けもの道
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)（なんだ・・・甘い匂い・・・？）
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「っ・・・いてて・・・」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「あれ・・・ここは・・・」
伍代 炫 (呪術師)「もぐもぐ・・・」
伍代 炫 (呪術師)「あ！雨笠センセー！やっと起きましたね！」
伍代 炫 (呪術師)「気分はどうですか？」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「伍代さん・・・！」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)（さっきの甘い匂いは、伍代さんが食べてるドーナツか・・・）
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「あれ・・・僕たち、三毒森に入ってから・・・」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「そうか・・・気を失っていたのか・・・」
伍代 炫 (呪術師)「まさかこんな熱烈な歓迎を受けるなんて」
伍代 炫 (呪術師)「やっぱ三毒森、面白いな！」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「あれ・・・他の人たちが見当たらないけど・・・」
伍代 炫 (呪術師)「あーそうなんですよ。目が覚めたら、センセーしかいなかったです」
伍代 炫 (呪術師)「一応周りを調べてみたんですが、なんか妨害されてるみたいで」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「妨害!?三毒の呪いかな・・・」
伍代 炫 (呪術師)「そうかもしれないですねー」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「そうか・・・それは・・・」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「最高だな！」
伍代 炫 (呪術師)「え？」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「こういう非日常体験が、僕の創作意欲を掻き立てるんだ！」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「次の小説のインスピレーションが湧いてきそうだ！」
伍代 炫 (呪術師)「さすが妖怪ミステリー小説界の期待の新星」
伍代 炫 (呪術師)「そうこなくっちゃ！」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「能力者の人もいたし、他の人も多分大丈夫でしょう！」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「僕には伍代さんがいるしね。何とかなるはず！」
伍代 炫 (呪術師)「はい！センセーのこと、しっかりお守りします」
　　しばらく歩いていると、二人を包む霧は濃くなり、視界がどんどん遮られていった。
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「うわっ！霧がすごいな・・・」
「っ・・・！」
　　突然、地響きとともに遠くの方から何かが猛スピードで走ってくるのが見えた。
伍代 炫 (呪術師)「危ない・・・！」
　　伍代がとっさに雨笠を突き飛ばした。
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「うわっ！」
　　突進してきた何かは伍代を巻き込み、そのまま岩に衝突した。

〇けもの道
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「伍代さん！ゴホッゴホッ・・・！」

〇けもの道
　　現れたそれは、巨大な怪豚だった。
　　全身に黒い炎を纏い、獰猛な目つきでじっと雨笠を見ている。
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「うわあああああ！」
　　思わず尻餅をつきそうになった時──
伍代 炫 (呪術師)「おっと！危ない」
　　気づくと、二人は怪豚から数メートル離れた場所に瞬間移動していた。
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「ご、伍代さん！」
伍代 炫 (呪術師)「いやーびっくりしましたねー」
伍代 炫 (呪術師)「センセーは大丈夫ですか？すみません、とっさに突き飛ばしちゃって・・・」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「ぼ、僕は大丈夫だけど・・・」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「伍代さんは大丈夫なんですか・・・！」
伍代 炫 (呪術師)「大丈夫です。攻撃パターンを見たかったから、わざとぶつかったんで」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「・・・え？」
　　傷ひとつない伍代を見て、冷たい汗が背中を伝った。
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「これが呪術師・・・」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「ご、伍代さん！あれは三毒の一つで無知の化身、「愚痴」です」
伍代 炫 (呪術師)「そうみたいですね。やっぱ封印解けてたのかー」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「愚痴の毒を浴びると、思考力を奪われるので注意してください！」
伍代 炫 (呪術師)「さすがセンセー。詳しいですね！ありがとうございます」
伍代 炫 (呪術師)「ここなら距離もあるし、安全です。雨笠センセーはここにいてくださいね」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「え・・・！」
伍代 炫 (呪術師)「俺、誰かを守りながら戦えるほど器用じゃないんで」
　　伍代がぴょんと軽く地面を蹴り、５m近く飛び上がった。
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「伍代さん・・・！」
伍代 炫 (呪術師)「そこで見ていてください。三毒に会えるなんて、超レアですよ」
　　伍代は、愚痴の目の前に降り立った。
伍代 炫 (呪術師)「お前が愚痴か。無知の化身ねえ・・・」
伍代 炫 (呪術師)「会えてうれしいよ」
愚痴「愚かで無知な人間どもめ！」
愚痴「真理を解せぬ者は、永遠に暗闇の中を彷徨うがいい！」
　　愚痴が伍代に向かって突進してきた。
　　愚痴の攻撃を避けると、伍代は呪透眼（じゅとうがん）を使って的確に急所を見極めた。
伍代 炫 (呪術師)「そこか・・・！」
　　呪力を練り、急所に向けて呪力エネルギーを放った。
愚痴「グァァァァァァ！」
　　呪力を纏った衝撃波が、愚痴をものすごい勢いで弾き飛ばした。
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「す、すごい・・・！」
伍代 炫 (呪術師)「まさかこの程度でやられないよね」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「え・・・？」
愚痴「ふんっ・・・やはり所詮は人間！」
愚痴「この私に勝てるとでも思っているのか！」
愚痴「くらえ！」
　　伍代が攻撃を避けると、愚痴は息つく間もなく次々と攻撃を放った。
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「ご、伍代さん！」