城下町編 グレイスの夕焼け(脚本)
〇海沿いの街
白の都グレイス
その名前の由来は町の建物が全て白色だからである。
〇西洋の住宅街
グレイスに面している海からは良質な石灰が採取され、古来より建築に重宝されてきた
また温暖な気候にも恵まれ
〇海辺
海からは豊富な海産物が
〇草原
豊かな土壌からは農作物が作られる
〇海沿いの街
豊富な資源に恵まれ、国内情勢が安定しているグレイス
昨今は教育や医療に力を入れており
特に医療技術の発展が目覚ましく、ここ数十年でも輸血や外科的療法など新たな治療法も産み出されている。
〇西洋の住宅街
ケル「と、まぁ」
ケル「グレイスの現状はこんな所かな」
ケル「参考になった?」
ダフィー「う、うん」
ダフィー「というか凄いね、ケル」
学園の休み。
改めてケルと出掛けることになり、ふとグレイスについて聞いてみたのだが。
返ってきたのは予想外に具体的な説明だった。
ケル「え?」
ケル「な、何が?」
ダフィー「かなりグレイスに詳しかったから」
ケル「そ、それはお母様に叩き込まれて・・・」
ダフィー「え?」
ケル「あ、いや」
ケル「・・・お母様が詳しくてさ」
ダフィー「歴史の先生とか研究者とか?」
ケル「そ、そんな感じ・・・」
ダフィー「凄いんだね」
ケル「うん・・・」
ケル「そ、それよりダフィー」
ケル「き、今日は街を案内すればいいんだよね?」
ダフィー「あ、うん」
ダフィー「申し訳ないんだけど何にも分からなくて・・・」
ダフィー「クラスメイトもタレイア出身は私だけだったから、まだ馴染めなくてさ」
ケル「へぇ、以外」
ダフィー「え?」
ダフィー「何が?」
ケル「ダフィーの事だからすぐに友達が出来るかと」
ダフィー「そ、そんなこと無いよ」
ダフィー「なんか王都出身の人ばかりだから気後れしちゃって・・・」
ダフィー「ケルとだって、話しかけてきてくれたのは貴方からでしょ?」
ケル「そりゃ女の子が道の隅に座り込んでたらね」
ダフィー「あの時道に迷ってて本当に心細かったんだから・・・」
ダフィー「というか、女の子って・・・」
ダフィー「ケルって同い年位じゃないの?」
ケル「あぁ、ごめんね」
ケル「学園には来年入学する予定だよ」
ダフィー「え、ケルも学園に入学するの?」
ケル「試験に受かったら、だけどね」
ケル「その時はよろしくね」
ケル「ダフネ先輩♪」
ダフィー「ちょ!?」
ダフィー「もう!! ケル止めてよー!!」
ケル「ごめんなさい」
ケル「けど、お詫びにちゃんと案内するからさ」
ケル「ほら、さっそく見えてきた」
〇西洋の城
〇西洋の住宅街
ケル「グレイスといったら、やっぱりあそこかな」
ダフィー「王城、チャーク城・・・」
ケル「ブランカ王国の白の都、グレイスの王城」
ケル「チャーク城」
ケル「歴代のブランカ王国女王が治めるお城だよ」
ダフィー「・・・凄いね」
ダフィー「近くまで行けないの?」
ケル「え、えと・・・」
ケル「・・・ちょっと、難しいかな?」
ケル「さすがにお城の周囲は警備が厳しいし、見つかったら・・・」
ダフィー「そっか、やっぱり厳しいんだ・・・」
ケル「ご、ごめんなさい」
ダフィー「ううん」
ダフィー「こっちこそ、無理言ってごめん」
ケル「・・・本当にごめんなさい」
ダフィー「そんなにケルが謝らなくっても良いって」
ケル「・・・いや本当に、ね」
ダフィー「?」
ケル「・・・うん、次行こうか」
ダフィー「え?」
ダフィー「わ、分かった」
なんだか不思議な表情をしているケルの後に続いてその場を離れた。
〇海沿いの街
ケル「うん」
ケル「この時間はやっぱりここかな」
1日でグレイスの各所を案内してもらった後、連れてこられたのは市街から少し外れた場所だった
ケル「グレイスの魅力は豊富な資源と生活基盤だけじゃなくて、この景観にもあるんだ」
ダフィー「・・・綺麗」
ケル「1日の終わりの時間」
ケル「人々は海に沈む夕日で活動を終えて帰路に着く」
ケル「そして1日の始まり」
ケル「人々は海から昇る朝日で起きて太陽と共に動く」
ケル「グレイスは北を除いて海に囲まれている半島だからね」
ケル「サンライズ、サンセット、そしてトワイライト」
ケル「それぞれがグレイスが最も輝く時間、と言われて議論の種にもなってるんだ」
ケル「私が特に好きなのがこの夕焼け」
ケル「・・・まぁ、朝起きるのが苦手なのもあるけど」
ダフィー「ふふっ、それはなんか意外だね」
ケル「夜は夜でお母様からの勉強が・・・」
ダフィー「え?」
ケル「う、ううん」
ケル「なんでもない」
ケル「まぁともかく、せっかくグレイスを案内するならここは紹介したかったんだ」
ケル「もし早起きが得意なら日の出も見てみる事をおすすめするよ」
ダフィー「うーん・・・」
ダフィー「私も早起きはあんまり得意では無いかなぁ・・・」
ダフィー「けどせっかくなら頑張ってみよう」
ケル「頑張ってね」
ダフィー「ケルも頑張ってみてよ」
ダフィー「明日の日の出」
ダフィー「一緒の場所は難しくても一緒の時間には見ることができるでしょ?」
ケル「努力はしてみる・・・」
ダフィー「えー?」
ケル「本当に早起きは苦手なんだってー」
そうしてしばらく、二人で沈む夕日を見ながら冗談を言い合っていた。
けれど。
〇西洋の住宅街
ケル「ダ、ダフィー!?」
ケル「じ、時間は、大丈夫!?」
ダフィー「う、うん」
ダフィー「ここまで来れば、大丈夫・・・」
ケルと二人で乱れた息を整える。
夕日に時間を忘れて見とれていた私達は駆け足でグレイスを移動することになってしまっていた。
しかしその甲斐あって、もう学園の門は目の前である。
なんとか門限には間に合いそうだ。
ケル「ご、ごめんね!?」
ケル「つい、時間忘れちゃって!!」
ケルは息も絶え絶えに謝ってくる。
ダフィー「ううん」
ダフィー「私こそ、走らせちゃってごめんね」
ダフィー「ケルの方こそ、帰りは大丈夫?」
ケル「あー・・・」
ケル「ま、まぁ、何とかする・・・」
ダフィー「え、なんとか、って・・・」
ケル「大丈夫大丈夫」
ケル「少し過保護なだけだから」
ダフィー「本当にごめんね、ケル!!」
ケル「ううん」
ケル「私も楽しかったから」
ダフィー「・・・本当に大丈夫なんだよね?」
ケル「だから大丈夫だって」
ケル「だから、また今度ね」
ケル「また遊んで欲しいな」
ダフィー「ケル?」
ケル「私ね、実は今まであんまり外に出られなくてさ」
ケル「回りにいるのも大人達ばかりで」
ケル「だから今がとても楽しいんだ」
ケル「だから大丈夫」
ケル「少し位お説教受けてもね?」
ケル「・・・本当は少しだけ、恐いけど」
ダフィー「ケル・・・」
ダフィー「うん」
ダフィー「分かった」
ダフィー「じゃあまたね、ケル!!」
ケル「うん」
ケル「またね、ダフィー!!」
ケルは大きく手を振りながら学園から遠ざかっていく。
私はその姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
彼女も手を振り返し続けていた。
・・・そのせいで少し門限ギリギリになってしまったが。
〇西洋の城
〇洋館の廊下
ケル「・・・」
ケル「た、ただいま戻りました~・・・」
ケル「!?」
ケル「あの、その、違うんです・・・」
ケル「い、いえ、そういう訳では・・・」
ケル「・・・はい」
ケル「も、申し訳ありませんでした~~!!!!!!!!」
〇寮の部屋(ポスター無し)
ダフィー「・・・ケル、大丈夫だったかな?」
夜、寮の一室でケルの事を思い出す。
そして思わず呟いてしまった言葉に同級生のキリエが反応した。
キリエ「ケル、って誰なの?」
ダフィー「え!?」
ダフィー「あぁ、ごめんなさい」
ダフィー「グレイスに来てから知り合った子なんだけどね」
ダフィー「仲良くなって今日街を案内してもらったんだ」
ダフィー「来年学園に入学予定らしいよ」
キリエ「おぉ、だからか」
ダフィー「何が?」
キリエ「今日はデートだっから食堂に走り込んできたのか、と」
ダフィー「ちょっと!?」
ダフィー「ケルは女の子だよ!?」
キリエ「えー、本当にぃ?」
ダフィー「本当だってばぁ!!」
どうやら彼女は恋愛話が好きなようだった。
キリエは消灯時間までケルの事を聞いてきた。
〇寮の部屋(ポスター無し)
ダフィー(やっと諦めてくれた)
ダフィー(悪い子じゃないんだろうけど・・・)
キリエの勢いに少し疲れてしまった。
また昼の疲れも残っていた私は横になるのすぐに瞼が落ちてくる。
ダフィー(ふぁあ)
ダフィー「おやすみなさい、ケル・・・」
私はグレイスでの初めての友人に言葉を発してから眠りについた。
〇城の客室
ケル「あ、あの、お母様?」
ケル「今日もお忙しかったのではないでしょうか?」
ケル「も、もう夜遅いですし、お休みになられては?」
ケル「・・・」
ケル「・・・はい」
ケル「もうしませんから、許してください・・・」