エピソード5 死の城(脚本)
〇基地の広場(瓦礫あり)
パパ「ニュイ、何を見ているんだ?」
ニュイ「あそこに・・・!」
〇西洋の城
ニュイ「あ・・・窓から離れちゃった・・・」
〇基地の広場(瓦礫あり)
サンク「ニャー!」
ニュイ「あっ! 待って、サンク! 今度はどこに行くのさ!?」
ママ「ニュイ! 危ないことは・・・」
デューヌ姉さん「ウヒョヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
ママ「危ないことは、しないでおくれよ・・・」
〇西洋の城
お城の壁にそってグルっと回る
ニュイ「サンクってばー! どこまで行くのさー!」
ニュイ「そんなとこ登っちゃダメだよー!」
ニュイ「ああ! 二階の窓から お城の中に入っちゃった!」
ニュイ「どうしよう・・・」
ニュイ「え・・・!?」
ニュイ「窓からロープが下りてきた・・・」
〇黒背景
ニュイ「登って入ってこいってこと?」
ニュイ「ヤだよ。怖いよ・・・」
ニュイ「ねえ! 誰なの!?」
ニュイ「そこに誰がいるの!?」
ニュイ「なんでぼくが・・・」
ニュイ「・・・サンクのバカ・・・」
〇宿舎の部屋
ニュイ(お城の中に入っちゃった)
ニュイ(誰もいない・・・ サンクもいない・・・)
ニュイ(ぼくって呼ばれて入ったんだよね? 勝手に入ったってことにはならないよね?)
ニュイ(この部屋って兵舎・・・だよね 兵士さんが暮らす部屋・・・)
ニュイ(たくさんのベッドが きれいに並んでて・・・)
ニュイ(お城ごと動いたのに 少しも荒れてない・・・)
すべてのベッドで人が寝ていた
全員が棒のように真っ直ぐな寝相で
シーツを枕の上まで引き上げて
ニュイ(寝息一つ聞こえない・・・)
町のざわめきが遠い
ニュイ(息苦しい)
この部屋の空気は
どうしてこんなに
よどんでいるんだろう
ニュイ(城下町があんなに 大変なことになっているのに)
ニュイ(この部屋の人たちは・・・ 気づかずに寝てる・・・の・・・?)
ニュイ「ねえ・・・」
ニュイ「あの・・・」
ニュイ「起きてください!」
一番近いベッド
シーツに手を伸ばす
ニュイ(一気にめくる? ゆっくりにする?)
ニュイ「怖いから、敢えて一気に!」
〇白
シーツの下から伸びた手が
ぼくの腕を掴んだ
〇宿舎の部屋
シーツが舞い上がる
シーツの下で寝ていた兵士と目が合った
髪を汚して赤黒い血が流れ落ちていた
〇白
舞い上がったシーツが落ちてきて
ぼくの頭にかぶさった
慌ててシーツを振りはらう
〇モヤモヤ
ニュイ「・・・?」
ニュイ「誰もいない」
目の前にあったはずのベッドも
ほかのすべてのベッドも
兵舎の隅に固まって引っくりかえっている
ベッドは血まみれで・・・
怪我人・・・か、遺体・・・を
運び出した跡があった
ニュイ「何で・・・?」
ニュイ(まさか、一瞬で動いた?)
ニュイ(そんな音なんて、しなかった・・・)
ニュイ(この部屋は、本当は最初からこうだったんだ)
〇行政施設の廊下
明かりのない廊下に出る
〇要塞の廊下
ニュイ(サンクはどこだろう・・・)
〇城の回廊
中庭に出る
ニュイ(サンク・・・いない・・・)
〇武骨な扉
ニュイ(中庭に塔が建ってる)
ニュイ(見張り台って位置じゃないし 物置小屋って感じでもないし 何のための塔なんだろう・・・)
ニュイ(そういえば 町の人たちがウワサしてた・・・)
〇黒
シャグラン王子は
この塔から落ちて亡くなったって
〇武骨な扉
城のメイド「お城が動いたのは シャグラン様の呪いです! それ以外に考えられません!」
城のメイド「なんてことを! シャグラン様は 人を呪うようなかたではありませんわ!」
城のメイド「とても優しいおかたでしたわ・・・ わたくしどものようなものを 気にかけてくださって・・・」
城のメイド「それにとてもお美しいかた・・・ 悪霊でもいいから あのお顔をもう一度拝見したいですわ」
城のメイド「シャグラン様が悪霊になんか なるわけないでしょう!?」
城のメイド「あら、わかりませんわよ? どうしてあんな事故が起きたのか そもそもあれが事故だったのか」
城のメイド「事と次第によっては 城が動くぐらいの恨みの一つも・・・」
城のメイド「ああ、もう、やめて! わたしが悪かったわよ!」
城のメイド「わたしたち、これから どうしたらいいの・・・?」
ニュイ(いけない・・・ ぼく、立ち聞きしちゃってる・・・)
ニュイ(見つかる前にここから離れよう・・・)
〇城の回廊
ニュイ(早くサンクを見つけないと・・・)
トロワーヌ姉さん「ニュイ!」
トロワーヌ姉さん「上よ! ニュイ!」
〇洋館のバルコニー
トロワーヌ姉さんが
お城の三階からぼくを見下ろしていた
トロワーヌ姉さん「しーっ!」
部屋の奥を指差して
手をバツにする
ニュイ「出られない、ってこと?」
ニュイ「待ってて! すぐに助けを・・・」
トロワーヌ姉さん「しーっ!」
ニュイ「!?」
ニュイ「死んだはずのアンヌ姉さんと・・・ 城下町にいるはずのデューヌ姉さん・・・」
幻じゃ・・・ない・・・
トロワーヌ姉さんが手招きしている
怖イ
あの部屋に行ったら
もう戻れなくなるような気がする
怖イノ、ヤダ・・・
ニュイ「でも、行かなくちゃ・・・」
ニュイ「ぼくが・・・ がんばら・・・なく・・・ちゃ・・・」
・・・姉さんたちを・・・助けに・・・