〇コンサートホールの全景
演出家「そこはいっぺんで「死ね、クリ王！」と！」
　　俺と名取さんの間に飛び込んできた
　　クリ王は襟首つかまれて、演出さんに、
　　ひっぺがされるように這いつくばらされる。
　　練習の流れ確認。
　　最初からすごいな、やることが。
　　──真奈の刻
江藤鉱（以前に一度、同じ舞台に立っているからな！）
　　歌舞伎の手を突き出し、
　　手の平開いて向ける。
　　跳んでバン！と脚開いて腰落としてとか、
　　名取さんと合わなかったな。
　　無理やり合わせた感がある。
　　俺が覚えてないんだ。
　　だって見て知ってはいるけど実際には
　　サシでなんて大役は今回からなんだから。
　　でも、引かない。
　　ここまでは、舞台に立つ居姿も
　　存在感で負けてないだろう。
　　とはいえ思ったより名取さんてすごいな。
　　いざかかり合うとさすが
　　年季入ってるだけのものはある。
　　俺は手下ろした指先まだ居心地悪いし、
　　舞踏っぽく後ろ抑えるようにしたり
　　神経入れてどうしようかして。
　　その後の流れ、セリフ、自信というか
　　覚えてないから不安になって、そこで
　　クリ王が飛び出してきてやられたんだ。
　　──先刻
江藤鉱「・・・キレイとか、かっこいいっていうのは演技じゃないからね」
　　・・・って音楽番組の司会も務めていた
　　女性アナウンサーに話して歩いてきたら、
　　舞台上でも同じこと言ってる。
　　そこに、文字通り飛び乗り躍り出て
　　即、名取さんと対峙して
　　自分は中央上手寄り、
　　名取さんが前に出てる分
　　後ろの位置になる──

〇地下駐車場
アナ「・・・どうする？」
江藤鉱「・・・うん、受けます。告白を」
　　──ヤオヨロバザール　B１
　　「すみません」と声をかけられて
　　・・・って、もう横を通り過ぎるとき、
　　声かけられるのわかってたんだけど。
　　だって、その前にまず傍を通り過ぎて
　　越したときくらいに、
　　「告白する」って話聞こえてんだもん。
　　足元、床に腰おろして、
　　女性の方が多いな割合、８：２くらいか。
　　ヤオヨロバザールで一緒に働くスタッフ。
　　みんな上下黒のトレーナー着とか軽装で。
　　何さんだっけ？サヤカじゃない
　　なんて名だっけ。
　　もっと大きい方と思ってたけど
　　むしろ小柄でコロッとした感じ。
　　上目使いでショートカット。
折中珠未「・・・・・・」
江藤鉱（え、何？声が小さくて 言ったのかどうかわからない）
　　仲介役、見届け役、
　　進行係？の女性がいて、
　　言ったってことになったか。
　　その前の「すみません」という声に
　　俺が足止めて、向き合って、
　　その間通ろうとした男性も、
　　腰上げようとした男性も
　　さすがに察して立ち止まって退き。
　　しかし華奢な男性多いな。
　　顎鬚細く耳下までつなげて生えてても
　　ワイルドじゃないしな。
　　ここで受けると、その後の可能性が
　　なくなるんだよな当然。
　　他にも告白してくれる女性、
　　付き合えるかもしれない・・・
　　でも、うん、受けます。
　　──告白を受けて、
　　その流れでじゃあ二人で
　　連れそってそこから離れることに。
　　「何だー俺のこと好きだったんじゃーんっ」
　　と、肩小突いたろうとしたけどその前に、
江藤鉱「あっ、俺まだ仕事終わってないよ、 17：30で、あと30分ある。18時まで」
折中珠未「大丈夫よ、来れたんで。平然としてれば」
　　と、アンテナ立ててたシーバー伏せて
　　下ろしてポケット突っ込ませて、
　　それでいいのか。
　　じゃあ言うことを聞こう。
　　彼女の方がよく知ってるものな。
　　仕事のことに関しては。
　　ヤオヨロバザールのＢ１のエレベーター、
　　搬入口辺りから、ちょっとガラスの自動ドア
　　近く、なかったけど。
　　で、告白受けて、地下抜ける方に
　　二人で歩いていくくらいなのかな？
　　折中珠未。
　　幸先の良さそうな名前でいい？
　　顔も、目がクリクリして可愛いし、
　　とか思ったりして。

〇備品倉庫
　　5555
　　ヤオヨロバザールのバックヤードの本棚に
　　その数字の書かれた札がついていて
　　折中さんがつけた？
　　コウコウ
折中珠未「鉱くん、いらっしゃーい❤️」
　　・・・なんてね。
　　こじつけたいんでしょ？

〇学校の体育館
　　──早朝
折中珠未「何でこんなすごく早く来たんですか？」
江藤鉱「そんなすごくってほどでもないですけど」
折中珠未「30分前か」
　　・・・したら、おばちゃんら来ちゃって、
　　仕事の相方、早番の人が来てると思って
　　あいさつしようとしたら、いなくって、
　　○△×で描いた人が周回してました
　　で、おばちゃんら体育館使いたそうだから、
　　「どうぞ」っつって、
　　譲って今、館内前半分おばちゃん、
　　俺と折中さんは後方に退いたけど
（うわー自分ら邪魔くさい）
江藤鉱「あー今、邪魔くさかったすっごく」
折中珠未「ねー」
　　って外に出たんだ。
　　途中、天井から下りている梯子に
　　ジャンプして片手伸ばして届く
　　って思ったんだけど、
　　ひっかかったように低ジャンプで、
　　こけたな我ながら。
　　一人で休んでっかな、
　　くらいで来たんだけど、
　　折中さんは奇遇だったな。
　　うちら邪魔くさいって思って
　　二人して示し合わせたように
　　外に連れだって出たしな。

〇備品倉庫
　　・・・ヤオバザのバックヤードの壁の下部、
　　えぐられて女神の形になってる？
　　戦乙女の？俺、削ってないよ。
　　で、女神の後ろ姿、結んだ髪の先に、
　　ハート♥️が下向きについてたりして。