三毒森

深都 英二

緊急招集(脚本)

三毒森

深都 英二

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〇けもの道
  ──三毒森(さんどくもり)
  かつてこの森には
  貪欲(とんよく)
  瞋恚(しんに)
  愚痴(ぐち)
  これら「三毒」と呼ばれる悪霊が棲んでいた。
  貪欲は、欲望の化身。
  瞋恚は、怒りの化身。
  愚痴は、無知の化身。
  三毒は、人間の煩悩から生まれた悪霊である。
  それぞれ鶏、蛇、豚の怪物のような姿をしており
  森に迷い込んだ人間を次々と食らったという。
  人々は三毒を退治しようとあらゆる手段で挑んだが
  圧倒的な力を持つ三毒を前に為す術がなかった。
  ある日、三毒の噂を聞きつけた一人の僧侶が、三毒退治に名乗りを上げた。
  僧侶は激闘の末
  三毒を巨大な石に封じ込めた。
僧侶「再び封印が解かれた時のために、これを残しておく」
  そう言って僧侶は、森の入り口の石に封印方法を刻んだ。
  その後、力尽きたように息絶えた。
  それ以来、その森は禁足地とされた。
  人々は畏怖の念を込めて「三毒森」と呼ぶようになった。

〇大きい研究施設
  ──怪異特別対策機関
  怪奇現象の情報を収集し、調査・対処を専門に行っている。
  様々な怪異専門家や能力者がこの組織に属しているが、メンバーや活動内容は一切明らかにされていない。
  活動はすべて極秘で、謎めいた組織とされている。

〇諜報機関
  怪異特別対策機関 本部の一室──
調査員A「ちょっと!これはどういうこと?」
調査員B「僕だって分かりませんよ・・・」
調査員A「報告書を見たけど、ここ数日の三毒森の様子・・・明らかにおかしいわ」
調査員B「一体、何が起こっているんでしょうか・・・」
調査員A「最悪なケースを想定すると・・・」
調査員A「落雷の影響で、三毒の封印が解かれた可能性があるわ」
調査員B「そんな・・・!」
調査員B「ど、どうするんですか!」
調査員A「──仕方ない・・・」
調査員A「彼らを緊急招集しよう」
調査員A「人選は任せる。今すぐ連絡して!」
調査員B「は、はい!」
調査員B「大変なことになったぞ・・・」

〇大会議室
  ──とあるビルの会議室
  怪異特別対策機関から連絡を受けた6名が緊急招集された。
  ドアが開き、青ざめた顔で男が入ってきた。
調査員B「みなさん、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます」
調査員B「突然お呼び立てしてすみません。何しろ緊急事態なもので・・・」
調査員B「単刀直入に申し上げます。三毒の封印が解かれた可能性があります」
調査員B「ご存知の通り、三毒は1000年前に封印されました」
調査員B「しかしここ数日、三毒森から地鳴りのような奇妙な唸り声が聞こえるとの報告が相次いでありまして・・・」
調査員B「どうやら連日の豪雨──その時の落雷によって、三毒の封印石が破壊されたのではないかと・・・」
調査員B「そこでみなさんには、三毒森の調査、および三毒の封印をお願いしたいです」
調査員B「ここにいる6名の方々──」
調査員B「お互いに面識がない方もいらっしゃるかと思いますが、残念ながらゆっくり話している時間はありません」
調査員B「とはいえ、これから一緒に行動されるので、お互い最低限のことは知る必要があるかと思います」
調査員B「そのため、30分だけ時間を取ります。30分後に1階の入り口に集合してください」
調査員B「その後すぐに車で三毒森に移動します」
調査員B「それでは30分後に」
  そう言うと、男は足早に会議室を出て行った。
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「おいおい・・・なんかヤバいことになってるな」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「飛田くん、久しぶりだね」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「内海教授!ご無沙汰しております」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「あのインタビュー記事、好評でしたよ!」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「ああ、あの記事はなかなか良かった。雑誌の売り上げも好調みたいだね」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「おかげさまで」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「それにしても三毒森とは・・・怪異研究を長年しているが、入るのは初めてだ」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「怪異研究の第一人者である内海教授ですら、三毒森は初なんですね」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「まあ、三毒森は禁足地。普段は入ることすら許されていないですからね」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「危険な調査になるかもしれないが、こんな機会は滅多にないからな。それに、今回は彼がいるから安心だ」
ミラクル幸運 (霊媒師)「──お任せください、教授」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「今回は能力者とペアを組んで行動するって聞いてたんですが、内海教授の相手はその方ですか?」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「ああ、霊媒師のミラクル幸運(ラック)さんだ」
ミラクル幸運 (霊媒師)「ミラクル幸運です。私の力で三毒を封印してみせましょう」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「あれ?もしかして、あのミラクル幸運さんですか?テレビでよく見てますよ!」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「本当にそのヘルメット被ってるんですね!ちょっと触ってみてもいいですか?」
ミラクル幸運 (霊媒師)「ダメです!」
ミラクル幸運 (霊媒師)「これは霊力を帯びた特殊なヘルメット。うかつに触ると、霊に取り憑かれますよ」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「す、すみません・・・!」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「ヘルメットを通じて、常に複数の霊と交信しているそうだ」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「す、すごいですね・・・」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「実はミラクル幸運さんの特集記事を考えていまして。今度取材させてもらえませんか?」
ミラクル幸運 (霊媒師)「いいでしょう」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「ありがとうございます!」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「おっと、つい仕事の話になってしまいました」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「僕の相手も紹介しますよ。陰陽師の吉良さんです」
吉良 晴明 (陰陽師)「陰陽師の吉良 晴明(きら せいめい)です」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「ほう・・・陰陽師ですか」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「吉良さんが一緒なら安心です!」
吉良 晴明 (陰陽師)「巷では自称霊媒師やら、何かと胡散臭い輩も多くいますが」
吉良 晴明 (陰陽師)「私は由緒正しき陰陽師一族から引き継いだ陰陽術の使い手」
吉良 晴明 (陰陽師)「本物の力ってものを見せてあげますよ」
ミラクル幸運 (霊媒師)「──自称霊媒師って私のことですか?」
吉良 晴明 (陰陽師)「おや、そこに引っかかるってことは自覚があるんですか?」
ミラクル幸運 (霊媒師)「失礼な!私は正真正銘の霊媒師です!」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「そ、そうですよ、吉良さん!」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「ミラクル幸運さんは有名な霊媒師の方なんです。テレビにも多数出演されていて・・・」
吉良 晴明 (陰陽師)「おっと、これは失礼。普段テレビを見ないもので」
吉良 晴明 (陰陽師)「私はそういう俗物とは関わらないようにしているので」
ミラクル幸運 (霊媒師)「まあ、いずれ分かることでしょう。すぐにその減らず口を黙らせてあげますよ」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「まあまあ、みなさん!」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「これから三毒森に行くっていうのに、ケンカしないでくださいよ」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「えーと・・・あなたは・・・」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「あ、自己紹介がまだでしたね。妖怪ミステリー小説家をやっています」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「雨笠 栗栖(あまがさ くりす)・・・と言えば分かりますかね?」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「なんと!あの雨笠 栗栖!」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「まさか!?」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「僕、顔出ししてないから、普段は全く気づかれないんですよね」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「私、大ファンなんですよ!」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「本当ですか?ありがとうございます!」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「あのデビュー作は良かった。あれは妖怪のことを熟知していなければ書けない内容だよ。本当に素晴らしい!」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「そんな褒められると照れますね」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「まさかこんな形で人気妖怪ミステリー小説家の雨笠さんに会えるなんて・・・」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「連絡が来た時は嬉しかったですよ。書きかけの原稿そっちのけで来ちゃいました」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「ハハッ!気持ちは分かります。僕も取材予定を無理やり変更してきましたよ」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「それで、雨笠さんと一緒に行動する能力者っていうのは・・・」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「あ、そうそう!伍代さーん!」
伍代 炫 (呪術師)「──もぐもぐ・・・」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「なんだこいつ・・・ドーナツ食ってるし・・・」
伍代 炫 (呪術師)「──あ、俺ですか?」
伍代 炫 (呪術師)「伍代です。呪術師やってます。よろしく」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「呪術師・・・!」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「伍代さんはこう見えて、すごい呪術師なんですよ」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「だから今回ペアを組めるって聞いて嬉しかったんです」
伍代 炫 (呪術師)「それはどうも」
伍代 炫 (呪術師)「俺もセンセーの作品、わりと好きですよ」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「ありがとう!」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「呪術師の伍代・・・そういえば噂で聞いたことがある」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「あらゆる呪術を使いこなす呪術師だと・・・」
吉良 晴明 (陰陽師)「へぇ・・・正直そんなすごい人にはとても見えないが」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「吉良さん!」
吉良 晴明 (陰陽師)「本当のことを言ったまでだ」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「君!食べながら挨拶するなんて・・・失礼じゃないか!」
伍代 炫 (呪術師)「あーすみません。俺、空腹になると呪力が弱まるんですよ」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「は?」
伍代 炫 (呪術師)「食べることで呪力が最大化するんです。時間なさそうだし、今のうちに食べておこうと思って」
内海 太蔵 (怪異伝承研究センター教授)「くっ・・・まあいいだろう」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「ハハッ!伍代さんって面白い人ですね!」
吉良 晴明 (陰陽師)「変なやつ・・・」
ミラクル幸運 (霊媒師)「まあ、お手並み拝見といきましょう」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「能力者同士で揉めないでくださいよ!」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「さ、そろそろ1階に向かいましょうか!」
伍代 炫 (呪術師)「じゃあ、さっさと封印して帰りますか」
伍代 炫 (呪術師)「終わったら経費で焼肉食いにいきましょ、雨笠センセー!」
雨笠 栗栖 (妖怪ミステリー小説家)「ハハッ!伍代さんは余裕だな」
飛田 甚平 (オカルト雑誌編集長)「本当にこんなんで大丈夫か・・・?」
  こうして一同は、車で三毒森に向かった。

次のエピソード:奇襲

コメント

  • こんにちは!
    福山詩と申します!とても面白いですね!続き気になります!
    設定もキャラクターもしっかりしていて、どのように絡むのか?それぞれどんな働きをして何人生き残れるのか?予想しながら読み進めるのも楽しそうです!

  • 様々なメンバーが集められてますが、職業者相性が良くない人たちもいますよね笑
    本当に大丈夫なのか心配にはなりますが、上手いまとめ役がいればなんとかなりそうかなとも思いました!

  • なんだか個性の強い人たちが集まりましたね。
    心霊関係はアクの強い人が多いような気がしますので、このメンバーにもちょっと納得です。
    これから何が起きるのか楽しみです。

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