〇CDの散乱した部屋
よしお「先生！」
足塚おさむ「うむ」
よしお「足塚賞は年２回なので、 次は半年後です」
よしお「半年後に向けて頑張りつつ、 月イチの月例賞にも出してみませんか？」
足塚おさむ「いいだろう」
よしお「でも・・・」
よしお「少しだけ思うことがあります」
足塚おさむ「何だ？」
足塚おさむ（やべぇ 身体乗っ取ろうとしてるのバレたか？）
よしお「俺なんかが描くより 先生が描いたほうがいいんじゃなか」
よしお「俺の身体・・・ 先生のものにできないかなって・・・」
足塚おさむ「バカ野郎！」
よしお「あだっ!!!」
足塚おさむ「俺は命を大事にしない 人間どもへの怒りを描いているのだ！」
足塚おさむ「その俺がお前の命をないがしろに できる訳がないだろう！」
よしお「す、すんません！」
足塚おさむ「分かればいいさ」
足塚おさむ（バレてねぇ）
足塚おさむ（つか、あれ？ こいつ今俺に身体くれるって・・・）
足塚おさむ（いやいや、何言ってるんだ お人好しすぎるだろ）
足塚おさむ（こいつのバカ根性を 俺が叩き直さんとダメだな）
足塚おさむ（身体を乗っ取るのはそのあとだ）
足塚おさむ（身体乗っ取らないでくださいって 懇願するよしおの身体を無理に乗っ取る）
足塚おさむ（でないと後味悪すぎるからな！）

〇CDの散乱した部屋
よしお「よし、漫画描くぞ！」
銀二「おい」
よしお「誰だ！ てめぇ!!」
銀二「隣の部屋の者だ」
銀二「原稿落ちてたぜ」
よしお「あ、あぁ・・・ 拾ってくれたんですか」
よしお「ありがとうございます」
よしお「でも、今 窓から現れませんでしたか？」
銀二「近かったからな」
よしお「次からはチャイム押してください」
銀二「オッサンも漫画描くんすね」
よしお「オッサ・・・ まぁ、そうだけど」
足塚おさむ「オッサンだって！ ぷ・・・くくく・・・」
よしお（このクソエロオヤジ 俺以外には見えないからって・・・）
銀二「どしたんすか？ 険しい顔して？」
よしお「いあぁ 何でもないよ」
よしお「キミも漫画描くのかい？」
銀二「賞とかは出したことないけど」
銀二「こういうの描いてるっす」
よしお「同人誌か」
よしお「・・・」
よしお「・・・・・・」
よしお「おもしろい！」
よしお（没入感が半端じゃない アイディアで引き込まれ・・・）
よしお（人の心のリアルな移ろいに 心を奪われてしまった）
よしお（これでプロじゃないなんておかしい プロでもトップクラスだぞ）
銀二「オッサンの絵と話で 賞とか出せるなら俺も出してみようかな」
銀二「なんかそういう勇気もらったっす 感謝感激っす」
よしお（俺の絵と漫画が下手ってか・・・）
よしお（相手は子供・・・ ムキになるな）
よしお（というかこの原稿・・・ 足塚先生が描いたヤツだ）
銀二「月例賞・・・」
銀二「出すんすか？」
よしお「何故それを？」
銀二「応募のページ開きっぱなしなんで」
銀二「オッサン、勝負しないすか？」
銀二「どちらがよい賞をとるか 負けたら勝った方に10万円」
よしお「何でそんなことを・・・」
銀二「その方がやる気出るじゃないすか」
足塚おさむ「よしおから10万円払える訳がないだろ！ この貧相な部屋を見ろ！」
よしお（言ってることは間違ってないけど 何だかムカつくぜ）
よしお「そんな勝負する訳が・・・」
銀二「へぇ・・・怖いんだ」
よしお「は？」
銀二「ガキに負けるのが怖いんだろ？」
銀二「オッサン、漫画歴だけは 長そうっすもんね」
足塚おさむ「もう限界だ！ よしお、身体借りるぞ！」
よしお「え、ちょ！」
よしお「バカ野郎！」
銀二「あだっ!!!」
よしお「その勝負受けて立とうじゃないか！」
銀二「てめぇオッサン！ 10万円払えんのかよ！」
よしお「臓器売ってでも払う」
よしお（足塚先生、俺の口で何言ってんだ！）
銀二「へっ・・・ そうこなくっちゃ」
銀二「オッサンのその汚ねぇツラ 漫画でズタボロにしてやるぜ」
よしお（知らないガキも足塚先生も無茶苦茶だ！ ひどすぎる！）
銀二「逃げるんじゃねぇぜ！ バーカ！　たーこ！」
足塚おさむ「ふむ」
よしお（ふむ、じゃねぇ!!!）
足塚おさむ「ヤツは超有名漫画の孫らしい サラブレッドというヤツだな」
よしお「え？」
足塚おさむ「俺のライバルだった男の孫だ」
足塚おさむ「目元がソックリだからすぐ分かったぞ」
よしお「絶対勝てない相手じゃないっすか！」
　　つづく