美食家バクの"オイシイ"夢作り

寝村

第一話「美味い夢が食いてえ!」(脚本)

美食家バクの"オイシイ"夢作り

寝村

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〇幻想空間
  夢の世界にて──
ユメハミ「最近夢が不味すぎる・・・!!」
  美食家として名高いオレは、悩んでいた。
ユメハミ(近頃、美味い夢を食べていない。 どいつもこいつも、悪夢ばかりだ)
ユメハミ(人間はオレ達のことを悪夢を喰べる生き物だと勘違いしているが、オレは甘ったるい幸せな夢が好きだ)
ユメハミ「だというのに・・・なんで最近は悪夢ばかりに当たってしまうんだろうか」
  ふと人間界を見下ろすと、暗い顔をして歩く奴ばかりだと気づいた。
ユメハミ(このままでは、オレは餓死してしまうだろう)
ユメハミ「こうなったら、オレが直接人間達の夢を"調理"してやるしかない──!!」
ユメハミ「待ってろよ、人間共!」

〇幻想空間
ユメハミ「悪夢を探す手間もいらないぐらい、悪夢で溢れてるんだもんな」
ユメハミ「早くこの夢の主を見つけて、オレ好みの味に変えてやるとするか」
ユメハミ「うっ・・・この禍々しい香り・・・」
ユメハミ「夢の主はきっと、この匂いをたどれば見つかるだろう」
夢の主「ひっく・・・ぐすっ」
ユメハミ「はぁ・・・お前か、この夢の主は」
夢の主「おにぃちゃん、だぁれ?」
ユメハミ「オレはユメハミ。人の夢を喰うバクだ」
夢の主「バク・・・」
ユメハミ「単刀直入に聞くが、お前の悪夢の原因は何だ?」
夢の主「ぼ、ぼく・・・ペットのコロを逃しちゃったの・・・」
夢の主「おさんぽしてたら、救急車のおっきいサイレンでコロがびっくりして・・・」
夢の主「急に引っ張られて、リードから手をはなしちゃったの・・・」
夢の主「コロ・・・戻ってこなかったらどうしよう・・・!!」
夢の主「ぼくが・・・ぼくがしっかりしてなかったから・・・」
夢の主「ぼ く が わ る い ん だ ・・・」
ユメハミ「ウッ・・・!!」
ユメハミ(まずい。このままだと、コイツは悪夢に飲み込まれちまう──)
ユメハミ「そのコロってやつ探してくるから、特徴教えろ!」
夢の主「こ、コロは・・・ゴールデンレトリバーで・・・首輪は赤くて・・・」
ユメハミ「わかった、連れ戻してやるから待ってろ」
夢の主「ありがとう・・・」

〇東急ハンズ渋谷店
ユメハミ「とは言ったものの、なかなか見つからないな・・・」
ユメハミ(久しぶりに人間に擬態しているが、上手く人間に見えているのか・・・?)
ユメハミ(さっきから妙に視線も感じるし・・・)
女子高生①「・・・ねえ、あの人かっこよくない?」
女子高生②「だよねー!ちょっと声かけてみる?」
女子高生①「いいねー!」
ユメハミ「何を話しているか聞こえないが・・・こっちを見て何か言っている・・・?」
女子高生①「おにいさん、こんなところでボーッとしてどうしたんですか?」
女子高生②「彼女でも待ってんのー?」
ユメハミ「いや・・・探し物をしているだけだ」
ユメハミ(まさか、声をかけてくるとは思わなかったな 時間がないというのに──)
女子高生①「探し物だったら、ウチら手伝いますよ!」
女子高生②「そうそう、1人で探すより効率良いっしょ!」
ユメハミ「本当か!?」
ユメハミ「凄く助かる・・・ありがとう」
女子高生①(やっぱり・・・)
女子高生②(超かっこいい!!)
ユメハミ「探してるのは、ゴールデンレトリバーという犬で赤い首輪をしてるんだ」
ユメハミ「コロという名前で、首輪に名前の彫られたチャームがついているらしい」
女子高生②「あっ、それSNSで見たかも!」
女子高生①「私も!なんか飼い主さん探してますって見たよ!」
ユメハミ「ということは、コロは保護されて無事でいるんだな!」
女子高生①「ちょっと待って・・・その人に連絡取ってみる!」
女子高生①「・・・・・・」
女子高生①「連絡返ってきた!ちゃんと首輪のとこにコロってついてたって!」
女子高生①「住所とか教えるから、お兄さんのスマホ貸してくんない?」
女子高生①(これで連絡先も知れちゃうし、ラッキー!)
ユメハミ「すまない、そのスマホ?とかいうものは持っていないんだ・・・」
女子高生①「えー!うっそー!?」
女子高生②「今時持ってない人とかいるんだ・・・」
女子高生②「てかアンタ・・・今抜け駆けしようとした?」
女子高生①「・・・」
女子高生①「とりあえず、住所とかメモしてあげるから! 早く行ってあげて!」
ユメハミ「あぁ・・・本当にありがとう 世話になったな」
女子高生①「いえいえ!」
女子高生②「ウチらも良いことして気分良いし!」
ユメハミ「本当にありがとう・・・ じゃあ、コロを迎えに行ってくる」
女子高生①「いってらっしゃーい!」
女子高生②「また会おうねー!」

〇幻想空間
夢の主「うぅ・・・コロ・・・」
ユメハミ「おい坊主、コロを見つけてきたぞ!」
夢の主「ほんと!?ユメハミおにいちゃん!」
ユメハミ「あぁ、本当だ。 保護してくれた人がいるらしい」
ユメハミ「その人の住所をメモした紙を机に置いておいたから 明日の朝早速会いに行ってこい」
夢の主「よ、よかった・・・!!ありがとう!!」
夢の主「おにいちゃんのおかげで、ぐっすり寝れるよ!」
ユメハミ「うん、いい顔になったな」
ユメハミ「じゃ、お前の夢少し食べさせてもらうぞ」
夢の主「わかった!」
ユメハミ「うん・・・さっきまでの苦味が消えて、綿菓子のようにフワフワな食感になったな」
ユメハミ「美味かった!ごちそうさん!」
ユメハミ「じゃあ、ゆっくりおやすみ・・・」
夢の主「・・・」

〇幻想空間
  その後の夢の世界──
ユメカイ「ふむ・・・面倒なことをしてくれたな」
ユメカイ「あんなに美味な悪夢だったのに・・・」
ユメカイ「私の悪夢を邪魔するものは、排除せねば──」
  ──続く

コメント

  • 自分好みの夢を食べるために人助けするバク…とっても面白いです。ユメハミとユメカイという名前や、キャラクターも魅力的。個人的にはペストマスクが好きなので、ユメカイさんが気になります…笑
    今後どんな夢が出てくるのか楽しみです!

  • タイトルの「美食家」で、てっきり食べ物か出てくると思っていた私は、「夢か!やられた!」と叫んでしまいました。なるほど、美味しい夢を求めるバクなんですね!
    最後の展開。何が起こりそう⁉︎ 気になります。

  • 悪夢ってやっぱり苦味エグみがあったりするのかなと想像しながら読みました。どうせ食べるなら幸せな夢のほうが、味がおいしいだけでなく、体にも良さそうですね。バクさんのおかげで優しい世界が増えますね。

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