Removable(リムーバブル)

nori

非通知のコール(脚本)

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〇散らかった部屋
新見隆志「課長、スイマセン。朝からちょっと熱ぽくて。一日だけ、休み頂けませんか」
「ずっと忙しかったからな。疲れでも出たんだろ」
新見隆志「すみません。ご迷惑をお掛けして」
「気にするな。今日のところは、何とかする。その代わり、明日は頼むぞ。他の奴らじゃ、お前の代わりは務まらんからな」
新見隆志「はい、ありがとうございます」
新見隆志(はあー。仮病なんて初めてだなあ)

〇入り組んだ路地裏
新見隆志(ない・・・昨夜のままか・・・)
新見隆志(元に戻せるとか言ってたけど、あの男をどこかで拘留してるってことかなあ・・・)
新見隆志(いや、刺されたままの男をそのまま拘留とかあり得ないだろ)
新見隆志(それにここまでキレイに血痕は消せないよなあ・・・。これなら、ここで殺傷があったなんて誰も信じない──)
新見隆志(くそっ、何なんだよ。目的はおいおいって言ってたよな。単なる金目当てでここまでしないだろ)
新見隆志(それに俺を脅して、何のメリットがあるっていうんだ・・・)
新見隆志(でもこの番号を知ってるってことは、俺の知ってる誰かの仕業ってことだよなあ・・・)
「あらっ」
神里友里「よかったあ、無事だったんですね」
新見隆志「あっ、昨日の・・・」
神里友里「昨夜は助けて頂いて、ありがとうございました」
新見隆志「あっ、いいえ」
神里友里「昨夜はあなたのことが心配で・・・この場に戻ってきて、確かめたかったけど、わたし、怖くて・・・ごめんなさい」
新見隆志「いえ、別にその・・・俺は何もしてないし・・・」
神里友里「そんなあ。助けに飛び出してくれたじゃないですか」
新見隆志「あれはまあ・・・その、放っておけなかったっていうか・・・」
神里友里「やっぱり勇敢な命の恩人です」
新見隆志「あの・・・こんなとこに来て、大丈夫なんですか?」
神里友里「周りは気にしながら来たけど。この時間帯ならアイツも仕事だし、流石に人目もあるから・・・」
新見隆志「そうですか・・・」
新見隆志「ちょっと訊いてもいいですか」
神里友里「はい・・・」
新見隆志「昨夜、その後、彼から電話とかあったりしました?」
神里友里「あっ、携帯切ったままだった。電話とかあったら怖いんで、電源切ってたんです」
新見隆志「そりゃ、そうですよね。あの・・・それで今、電源入れるとどうです?着信とか残ってないですか?」
神里友里「どうだろう・・・でも、どうしてそんなことを?」
新見隆志「あっ、いや・・・その・・・ナイフを出してくるくらいだから、その後、脅しの電話とかあったんじゃないかなって・・・」
新見隆志「それに留守電に脅しとか残ってたら、いずれ役立つかもしれないし・・・」
神里友里「そんなことまで心配してくれて、優しいんですね。今、電源いれてみますね」
神里友里「着信、ないです」
新見隆志「それは・・・良かったですね」
神里友里「はい」
神里友里「あの、今日はお仕事、お休みですか?」
新見隆志「まあ・・・最近、残業続きだったんで、今日はちょっと休みをもらってて」
神里友里「この後、お時間があったりします?」
新見隆志「えっ、まあ・・・」
神里友里「少しお時間を頂けませんか。命の恩人にお礼をさせてください」
新見隆志「いや・・・その・・・」
神里友里「ごめんなさい・・・ご迷惑だったでしょうか」
新見隆志「いや・・・その・・・ちょっとだけなら」
神里友里「はい、ちょっとだけでも付き合って頂けるなら、嬉しいです」

〇レトロ喫茶
神里友里「改めまして。わたし、神里友里っていいます」
新見隆志「新見隆志です」
神里友里「助けて頂いて、ホント有難うございました」
新見隆志「いや・・・自分も逃げただけだし・・・ あの・・・これからどうするつもりなんですか?」
新見隆志「スイマセン、突っ込んだ質問でした」
神里友里「いいえ。まだどうしたらいいか・・・。居場所はすぐに変えられるけど、仕事まではそう簡単には・・・」
新見隆志「そうですよね・・・あの・・・警察にはこのことは?」
神里友里「まだ相談してません」
新見隆志(警察には言ってないのか・・・)
新見隆志(非通知!?)
新見隆志「あっ、スイマセン。ちょっと失礼します」

〇清潔なトイレ
新見隆志「もしもし・・・」
「どうです、今朝のお目覚めは?傷害容疑にならなくて安心しましたか?くっくっくっ」
新見隆志「何者ですか、あなたは?なぜ、この番号を知ってるんですか?」
「お気持ちはわかりますが、その質問に何の意味があるのでしょう?」
新見隆志「何が言いたいんですか?」
「その質問に答えたところで、今のあなたが置かれた状況に何か変化が起きるのかと問うているのです」
新見隆志「それは・・・」
「もっと建設的な話をしましょうよ。わたしの知ってるあなたはもっと賢いはずだ」
新見隆志(俺を知ってる!? こんな喋り方をする奴、いたか!? それにこの声・・・聞き覚えがない)
新見隆志「何を望んでいるのか知りませんが、こっちが応じるとでも・・・」
「応じるつもりがないなら、こんな非通知の電話など無視するのがよろしい」
新見隆志(くっ)
新見隆志「あれは正当防衛が認められるはずです。だからあなたが何者が知りませんし、たとえ何をしようと・・・」
「くっくっくっ」
新見隆志「何がおかしいんですか!?」
「あれとは?何の正当防衛を主張するおつもりです?事件の現場もないのに?」
新見隆志「それは・・・」
「言ったでしょう、あの場面は我々が管理していると。一番有効的なタイミングで元に戻させていただきますよ」
「そうですねえ・・・証言してくれそうな人物がいなくなった後とかいかがでしょう?」
新見隆志(なっ!?)
新見隆志「彼女を殺すというのか!?」
「発想が物騒でいけませんねえ。わたしは「いなくなった」と言ったのです。あなたと違って、人を刺したりしませんよ」
新見隆志(くっ、何なんだ、こいつ。完全に心理が読まれてる・・・)
「今、「彼女を殺すつもりか」と仰いましたね。わたしの挑発に乗って、性別のみでも特定につながるような発言は不用意ですねえ」
新見隆志「目的は金ですか?」
「ご参考までにあなたの年収は?」
新見隆志「人を馬鹿にして楽しいですか?」
「年収がさほどでない人からどれだけお金を巻き上げられると?非効率的と思いませんか?」
新見隆志(やはり、金目当てじゃない・・・。だったら、何が目的なんだ)
「そうそう。ひとつ、お見せしたいものがあります」
新見隆志「何をです?」
「我々の忠告に逆らった方がおられましてね。管理していた場面を戻しておいたのです」
新見隆志(戻した?ホントにそんなことが・・・)
「そろそろ警視庁が動きだしても、いい頃合いじゃないですかね。あなたの置かれた立場を理解するのに役立つと思いますよ」
新見隆志「ちょっと待ってください・・・」
「では、ご機嫌よう」

次のエピソード:戻ってきた首謀者

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