防水ボーイズ

とびこがれ

レインコートなら飛ばされない(脚本)

防水ボーイズ

とびこがれ

今すぐ読む

防水ボーイズ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇街中の道路
  雨の季節がやってくる
東堂 博嗣「・・・行くか」
  東堂博嗣(とうどうひろつぐ)は22歳
  2年前にレインコート販売事業「トード&フロッグ社」を立ち上げた
  これから、街の文具店に営業に行く所だ
東堂 博嗣「・・・フレフレ文具店」
東堂 博嗣「ここだな」
東堂 博嗣「・・・」
東堂 博嗣「よし」

〇小さい会議室
東堂 博嗣「はじめまして、「トード&フロッグ社」代表の東堂と申します」
東堂 博嗣「よろしくお願いします」
フレフレ文具店担当者「はい、お願いします」
東堂 博嗣「まず御社のレインコートの品揃えですが、どれほどかお聞きしてもよろしいですか」
フレフレ文具店担当者「そうですねえ、使い捨ての透明のものを置いている、くらいでしょうか」
東堂 博嗣「雨合羽ですね」
担当者「え?ええ、雨合羽というか、レインコートというか、」
東堂 博嗣「雨合羽ですね」
担当者「どっちでもいいですが」
担当者「当店にはそれだけですね、多分」
東堂 博嗣「わかりました、ありがとうございます」
東堂 博嗣「では早速ですが、当社の商品をご紹介させていただきます」
東堂 博嗣「こちら、今まさに私が着ているものなんですが」
担当者「へえー、それですか (ダサっ)」
東堂 博嗣「は?」
担当者「いえ、なんでも」
東堂 博嗣「防水性、機能性、デザイン性、どれをとっても質の高い、自慢の品になります」
東堂 博嗣「雨が降ったときだけ着る雨合羽や折り畳み傘は、やはり平時に荷物になってしまいますよね」
東堂 博嗣「その点当社のレインコートは普段着のように着ていただくことを想定し、デザインしております」
東堂 博嗣「もちろんこのライトグリーン以外にもカラーやデザインを取り揃えており・・・」
部下A「課長、そろそろ」
担当者「ふぁァん、え?ああ」
担当者「ええとカッパでしたっけ。前向きに検討させていただきますのでカタログだけいただけますか?」
東堂 博嗣「いえ、もう少しだけご説明を・・・」
担当者「梅雨の時期ですからね!前向きに検討させていただきますので!本日はご足労いただきありがとうございました!」
担当者「またこちらからご連絡させていただきますね!」
東堂 博嗣「はあ、よろしくお願いいたします」

〇街中の道路
  文具店を後にした東堂
東堂 博嗣「くそ、なんでわかんねーんだよ」
東堂 博嗣「明らかにレインコートの方が傘より便利だろ」
???「まだそんなことをしているのか東堂」
東堂 博嗣「なんだ・・・!」
笠原 時雨「レインコートなどくだらない」
東堂 博嗣「笠原、てめえ」
  笠原時雨(かさはらしぐれ)22歳
  国内大手の雨傘メーカー「株式会社タイムレイン」創業者の父を持つ御曹司
  半年前に若くして「株式会社タイムレイン」の社長の座を引き継いだ
  東堂とは小学校からの腐れ縁だ
笠原 時雨「しかし、なんだ」
笠原 時雨「傘も買えないのか?」
笠原 時雨「いくらお前でも、かわいそうだ」
笠原 時雨「一本くれてやろう」
東堂 博嗣「っっ!」
東堂 博嗣「この立派なレインコートが見えねえのか!」
笠原 時雨「フフフ」
笠原 時雨「ついにレインコートの会社まで立ち上げたと聞いた時は驚いたが、」
笠原 時雨「雨具のことなら我がタイムレイン社に任せておけばいい」
東堂 博嗣「なんだと・・・」
笠原 時雨「旧友のよしみだ、いつでも雇ってやるぞ」
笠原 時雨「傘の販売員としてな」
笠原 時雨「フフフ、ハッハッハ・・・」
東堂 博嗣「くそ、笠原のやつめ」

〇ボロい校舎
  ──10年前
  ──とある郊外の小学校、放課後
東堂 博嗣(12歳)「帰るか・・・」
東堂 博嗣(12歳)「レインコートよし」
東堂 博嗣(12歳)「ミスって2つも持ってきちまった」
東堂 博嗣(12歳)「かさばる・・・」
東堂 博嗣(12歳)「ん?」
九条 玉緒(12歳)「・・・」
東堂 博嗣(12歳)「玉緒ちゃん・・・」
東堂 博嗣(12歳)(レインコート、忘れたのかな)
東堂(12歳)「九条!」
九条 玉緒(12歳)「!」
九条 玉緒(12歳)「ヒロくん!」
東堂 博嗣(12歳)「どうしたんだ、そんなトコで突っ立って」
九条 玉緒(12歳)「えへへ、実はかさ忘れちゃって」
東堂 博嗣(12歳)「そうなのか」
九条 玉緒(12歳)「お母さんに雨降るよーって言われてたのに」
東堂 博嗣(12歳)「しょうがねえな・・・」
九条 玉緒(12歳)「?」
東堂 博嗣(12歳)「ん!」
九条 玉緒(12歳)「え?」
東堂 博嗣(12歳)「ん!」
東堂 博嗣(12歳)「レインコートだよ!」
東堂 博嗣(12歳)「たまたま2つ持ってんだ、貸してやる!」
九条 玉緒(12歳)「・・・」
笠原 時雨(12歳)「やっと日直の仕事終わったよ」
東堂 博嗣(12歳)「シ、シグレ」
笠原 時雨(12歳)「ん?どうしたの2人とも?」
笠原 時雨(12歳)「あ、傘、忘れたの?」
九条 玉緒(12歳)「あ、うん、まあ、えへへ・・・」
笠原 時雨(12歳)「そう、それなら」
笠原 時雨(12歳)「ぼくの置き傘、よかったら使って」
九条 玉緒(12歳)「あ、ありがとう、シグレくん」
九条 玉緒(12歳)「私、弟を迎えに行かなきゃだから!」
九条 玉緒(12歳)「明日返すね!」
東堂 博嗣(12歳)「・・・」
笠原 時雨(12歳)「あ、置き傘はもう一本あって、よかったらヒロくんも・・・」
東堂 博嗣(12歳)「・・・」
笠原 時雨(12歳)「ヒロくん?」
東堂 博嗣(12歳)「・・・は?」
笠原 時雨(12歳)「どうかした?」
東堂 博嗣(12歳)「玉緒ちゃん、なんで傘なら受け取るんだ」
東堂 博嗣(12歳)「レインコートは受け取らなかったのに」
笠原 時雨(12歳)「レインコート?」
東堂 博嗣(12歳)「うるせえ笠原、てめえなんか嫌いだ!」
笠原 時雨(12歳)「え、な、何を」
東堂 博嗣(12歳)「くそっ」

〇田舎道
東堂 博嗣(12歳)「っはあ、はあ、」
東堂 博嗣(12歳)「・・・なんだよ」
東堂 博嗣(12歳)「シグレの方がいいのか!?」
東堂 博嗣(12歳)「玉緒ちゃん!」
東堂 博嗣(12歳)「あんなやつの方が・・・」
東堂 博嗣(12歳)「なんだよ、くそっ」
東堂 博嗣(12歳)「・・・」
東堂 博嗣(12歳)「違う、落ち着け博嗣」
  雨が降り続いている
東堂 博嗣(12歳)「玉緒ちゃんが選んだのは、シグレじゃない」
東堂 博嗣(12歳)「玉緒ちゃんは傘を選んだんだ」
東堂 博嗣(12歳)「レインコートの方が便利なのに」
東堂 博嗣(12歳)「・・・」
東堂 博嗣(12歳)「玉緒ちゃんは走って帰っていった」
東堂 博嗣(12歳)「あれじゃあ傘差しててもびしょびしょだ」
東堂 博嗣(12歳)「レインコートなら走れるのに・・・」
東堂 博嗣(12歳)「俺にできること・・・」
東堂 博嗣(12歳)「俺がすべきことは・・・!」

〇街中の道路
東堂 博嗣「・・・」
東堂 博嗣「つまんねーこと思いだしちまった」
東堂 博嗣「風も強くなってきたな」
東堂 博嗣「・・・次の営業まで時間がある」
東堂 博嗣「ちょうどいいサ店でもないか・・・」
東堂 博嗣「ん、あれは・・・!」
九条 玉緒「・・・」
東堂 博嗣「た、玉緒ちゃん!」
東堂 博嗣「ま、待って」
東堂 博嗣「おーい、くじょ・・・」
東堂 博嗣「なんだ?」

〇歩道橋
  強風で歩道橋が大きく揺れている
おびえる子ども「うわーー助けてーーー」
  少年が、手すりにしがみついてうずくまっている
東堂 博嗣「動けなくなったのか」
東堂 博嗣「くっ、風が強いな」
傘を差した助けに行く男A「今行くからじっとしてろよ!」
傘を差した助けに行く男B「すぐ行くから安心しろぉ!」
東堂 博嗣「彼らに任せるか」
傘を差した助けに行く男A「くっ、か、風が」
傘を差した助けに行く男B「これ俺らも・・・」
東堂 博嗣「おいおい、大丈夫か・・・」
傘を差した助けに行く男A「う、うわあああああああああ」
東堂 博嗣「なっ」
  傘を差した男は風に乗り、飛んでいった
傘を差した助けに行く男B「ぬあああああああああ」
  手に持った傘は風で裏返って破れ、男は階段を転げ落ちていった
東堂 博嗣「やれやれ、傘野郎どもが」
おびえる子ども「怖いよーーー」
東堂 博嗣「しょうがねえ・・・」
東堂 博嗣「おーい!すぐ行くからな!」
東堂 博嗣「くっ、だが」
  東堂は手すりを両手で握り、確実に階段を上っていく
東堂 博嗣「もー少しだぞ!」
  フードを被って前傾すれば、風に煽られはしない
東堂 博嗣「よっ、と」
おびえる子ども「うわあああ」
東堂 博嗣「もう大丈夫だ」
東堂 博嗣「ほらこれ着ろ」
おびえる子ども「あ、ありがとう・・・」
東堂 博嗣「・・・傘はどうした」
おびえる子ども「ぐすっ、とんでった・・・」
東堂 博嗣「そりゃよくないな」
東堂 博嗣「誰かに当たってケガさせるかも知れないだろ」
おびえる子ども「う、うん」
東堂 博嗣「次からはレインコート、着ろよ」
おびえる子ども「わかったよ、おじちゃん」
東堂 博嗣「誰がおじちゃんだ」
東堂 博嗣「しかし」

〇街中の道路
  玉緒ちゃん・・・

〇歩道橋
東堂 博嗣(久しぶりに話したかったが)
東堂 博嗣(見失っちまった)
東堂 博嗣(それにしても)
東堂 博嗣「険しい顔をしていたような──────」

コメント

  • カップルが何度も見せつけてくる傘(笑)。東堂よりも作者さん自身の傘に対する怨念が徹底していて、その昔傘に何かされたのかと心配になるくらいで面白いです。レインコートを着て折りたたみ傘を携帯すればいいんじゃないのかな?それ言っちゃダメなのかな?

  • 傘はさっとさせる点では便利なんですが、本当に時と場合によるんですよね。
    イベントの待機列に並んでる時に、前の人の傘の水が全部私の方に流れてたことがあったので!
    ということで、レインコートいいですよ。

  • 私の住んでいる国では、傘持参率が少なくて、雨が降ったらフードかぶってしのいでいる人や、ずぶ濡れでも気にせず歩いている人すらみかけます。レインコートというと一気に敷居が上がる感じがするので、撥水加工素材のフーディーとかって売出したらいっきに売れる気もします♪手ぶらがいいんですよね~!

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ