怖枕-コワマクラ-

アンノクルミ

第1話「サイレン」(脚本)

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〇黒
ストーリーテラー「これは、あるOLが体験した眠れないほど怖い・・・」
ストーリーテラー「いや、できることなら今すぐ眠ってしまいたくなるほど怖い話。」

〇ビルの裏通り
  私は深夜のコールセンターで働いています。
  ビジネス街から少し外れた雑居ビルの7階が私の職場です。

〇異世界のオフィスフロア
  建物は古いですが、オフィス部分は改装されていて
  深夜だということを忘れてしまうくらい明るいんですよ。
  それに女性が多い職場なので、女子校みたいな独特の華やかさもあります。
  働きやすさは、まぁまぁですかね。

〇黒
  ただ、問題はトイレです。

〇雑居ビルの一室
  同じフロアにトイレがなく、わざわざ下の階へ行かなくてはならないんです。
  オフィスは7階、トイレは1つ下の6階。
  6階は長らくテナントが入らず、いつもガランと静まりかえっていました。
  しかも、トイレはオフィス部分のように改装されていなくて、なんだか古い学校のトイレみたいなんですよ。
  昼間ならまだマシなんでしょうけど、私たちが利用するのは真夜中・・・。
  社員の中にはトイレに行くことを
  「肝試し」なんて言う人もいましたね。

〇廊下のT字路
  あの日、私は休憩時間にトイレへ向かいました。
  時刻は深夜2時過ぎだったと思います・・・。
ユウコ「やっぱり6階は不気味だなぁ・・・」
ユウコ「やだ、蛍光灯また切れてる。 誰か誘えばよかった・・・。」
  薄暗い廊下を抜け、私はようやくトイレに着きました。

〇雑居ビルの一室
  この時から、異変は始まっていました。
ユウコ「ん?なんか焦げ臭い・・・。」
ユウコ「中で誰かタバコでも吸ってるのかしら?」
  トイレはもちろん禁煙です。
  しかしひとりが怖かった私は、先客がいることに少しホッとしました。
ユウコ(タバコってことはマキちゃんかな?ちょっと驚かせちゃお。)
  私は勢いよくトイレの扉を開けました。

〇公衆トイレ
「あ、あれ・・・?」
  トイレには誰もいませんでした。
  さっきまでしていた焦げ臭さもすっかり消えています。
ユウコ「気のせいだったのかな・・・。」
  私は気を取り直し、手前の個室に入りました。

〇個室のトイレ
  またあの焦げ臭さが私の鼻をつきました。
ユウコ「(やだ、さっきより臭いが強くなってる・・・)」
  煙はもちろん、タバコの吸い殻も見当たりません。
ユウコ(いつにも増して気味が悪いわ。 早くオフィスに戻ろう・・・。)
  すると・・・

〇テクスチャ3
  (ウゥーーカンカンカンカン)
  遠くでサイレンが聞こえました。

〇個室のトイレ
ユウコ「あら?どこかで火事かしら?」
  サイレンはけたたましく鳴りながら、どんどんビルに近づいてきます。
  (ウゥーーカンカンカンカンカンカン!!!)
ユウコ「まさか、このビルってことはないわよね・・・?」
  火災報知器こそなっていませんが、トイレの前で感じた焦げ臭さを思い出し、私は急に不安になりました。
ユウコ「まさか・・・早く出ないと!」
  私は慌てて個室のドアを引きました。

〇黒
  ガチャ・・・ガチャガチャ・・・
  ドアがびくとも動きません。
ユウコ「うそでしょ・・・」
  私は何度もドアノブを引きました。
  ガチャガチャ、ガチャガチャガチャガチャ
ユウコ「なんでよ・・・なんで開かないの!?」
  まるで私を外に出すまいと、誰かがドアを押さえているような感触でした。

〇テクスチャ3
  (ウゥーーカンカンカンカン!!ウゥーーカンカンカンカンカンカン!!)
  サイレンがさらに大きくなりました。
ユウコ「すぐ下に消防車がいるんだわ!やっぱりこのビルで火事が起こってるのよ!」
  焦げ臭さはむせ返るほど強くなっています。
ユウコ「火が・・・火が近くまできてる!!」
  私はもうパニックになりました。
ユウコ「誰か!誰か助けて!!」
  (ウゥーーカンカンカンカン!カンカンカンカン!!ウゥーカンカンカンカンカン!!!)
ユウコ「死にたくない!誰か来て!! 私は・・・」
ユウコ「私はここにいるの・・・!!」
  その瞬間、

〇黒
  『私もここにいるよ』

〇個室のトイレ
ユウコ「え・・・?」
  頭上から女性の声がしました。
  恐る恐る顔を上げると・・・

〇炎
老婆「ウゥーーカンカンカンカンカンカンカンカン!!!ウゥーーカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!!!!!!」
  顔の焼けただれた老婆が、私を見下ろしていました。

〇雑居ビルの一室
  私の体験は以上です。
  あれは火災で亡くなった老婆の霊なのでしょうか?
  いくら調べてもこのビルで火災が起こった記録はありませんでした。
  もしかしたら、ずっと昔からこの土地に憑いている霊なのかもしれません。
  いずれにしても、私があのトイレを使うことは二度とないでしょう。

〇黒
ストーリーテラー「不眠症のための恐怖夜話、いかがでしたでしょうか?」
ストーリーテラー「おや、まだ眠れない?」
ストーリーテラー「では、子守唄の代わりに・・・」

〇炎
老婆「・・・ウゥーカンカンカンカン・・・ウゥーカンカン・・・カンカン・・・」
  焼けただれた老婆を、そちらへ送りましょう・・・。

コメント

  • 怪談大好きな私にはおもしろかったです。
    その建物の土地で昔、火事があったとか…そういうのを想像してしまいました。
    雑居ビルって、階によってはテナントとか入ってなくて、ちょっと怖いですよね。

  • 怖すぎです…。老婆送らないでください…。
    こんなことが本当に起こったら、わたしなら会社をすぐに辞めてしまうと思います。あー怖かった!

  • まず題名からして怖くて、怖いものみたさに読みたくなりました。老婆は、、、いらないです〜。(涙)怖すぎます。真夜中ってトイレに限らず、普段生活している場所でも、人気がなかったりすると、急に怖くなりますね。子どもの頃、真っ暗で寝れませんでした。そんなことも思い出しながら読みました。

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