第1話 さまよえる戦闘人形(脚本)
〇荒野
エラ「どこだ。ミメイ・・・」
エラ「捻り潰してやる はやく出てこい」
辺境の、とある『惑星』
長い戦争が終わり、荒野には、行き場を失った戦闘人形がさまよっていた。
エラ「む。おまえがミメイか?」
量産型戦闘人形「ガゴゴ ピー ガゴゴ」
エラ「ハァッ!」
量産型戦闘人形「ウゴッ」
一撃で倒した
量産型戦闘人形「ギーギー」
エラ「うようよとうっとうしいヤツらだ」
量産型戦闘人形「ぅッ」
エラ「とりゃーっ!」
10数分後──彼女の周りには量産型戦闘人形が死屍累々と倒れていた。
エラ「なんなんだここは」
エラ「コイツらはただの機械」
エラ「ミメイではない。ミメイを探さなければ」
〇荒野
エラ「空が燃えている」
ビストライト「よっ!お嬢さん」
エラ「!!」
エラ「おまえは人間!?」
ビストライト「そーだよ ついでにイケメン」
エラ「ミメイか!? よし殺そう」
ビストライト「待って違う 俺はビストライトだ」
エラ「ビス・・・ト・・・ライ・・・なんだその妙な名前は。おちょくってるのか」
ビストライト「本名なんですけど・・・」
エラ「名前などどうでもいい 何者だ?」
ビストライト「俺はこの土地で、治安維持の仕事をしている者でーーおまえを迎えに来た」
エラ「いや分からない。ミメイかもしれない」
エラ「人間だし」
エラ「ふむ とりあえず殺すか」
ビストライト「だから違うっつーの。無差別に殺すな」
エラ「ミメイのことは、人間であることと、名前しか覚えていないのだ」
ビストライト「少なくとも女性だよ。ミメイ博士は」
エラ「女性・・・?」
エラ「性別など面倒くさい性質しやがって。わたしから見れば人間など誰でも同じだ」
ビストライト「あまり区別できないのか。まあ、それもそうか」
エラ「この場所に人間はとても少ない。人間を残らずこの手にかけていけばいい」
ビストライト「え!? 雑!!」
ビストライト「相手が本物かどうか一応確かめてからの方が良くない!?」
ビストライト「恨み晴らした!って実感がないとスッキリしないでしょ。なんの恨みがあるのか知らないけど」
エラ「む・・・」
ビストライト「ミメイさんを探すのは協力するから、君もこっちに協力してほしい」
エラ「なんだって・・・?」
エラ「お前もミメイを探しているのか? お前もミメイを殺そうと?」
ビストライト「いやなんでそうなるんだよ」
ビストライト「仕事だよ仕事。ミメイさんは君たちを作った開発者でしょ。ミメイさんしか知らないことが多すぎる」
ビストライト「君たちはたくさんいて、この惑星でさまよっているんだ。効率よく回収したい」
エラ「わたしがたくさんいる・・・? わたしはひとりだ」
ビストライト「ごめんね。アイデンティティの根幹を揺るがすようなこと言って」
ビストライト「それにもうひとつ」
ビストライト「君の自爆装置を解除したい」
自爆装置。
それはエラの左胸の部分に埋め込まれている。心臓の音のように鳴る。
エラ「この自爆装置はわたしのものだ」
エラ「誰にも触れさせない」
エラ「わたしを解体し、自爆装置に手を触れるだけで爆発するのだ」
ビストライト「そう言われている。けれど・・・君を作ったミメイ博士ならできるはずだ」
エラ「ミメイ・・・」
ビストライト「どちらにしても、博士が必要ってわけ」
ビストライト「もう何年も、ミメイ博士の行方は掴めていない」
ビストライト「君のほうが詳しいと思ったんだけど、名前しか覚えてないとはねえ・・・」
ビストライト「開発者とは会っているはず。記憶がわざと取り除かれたのか?」
エラ「・・・」
エラ「自爆装置を取り除いてどうするのだ?」
ビストライト「どうって・・・もうそれは必要のないものだからさ」
ビストライト「戦争が終わったって知ってる?」
エラ「むろんだ。バカにしているのか」
ビストライト「よかった。ならそんなもの、もう持っていたくないでしょ?」
ビストライト「自爆装置を解除して、戦闘人形じゃなくて、良いロボットとして仕事してもらうんだ」
ビストライト「なにしろこっちは人手が足りなくてね。猫の手も借りたい状態さ」
ビストライト「優秀なロボットは大歓迎なんだ。特に君は秀でている。感情のようなものがある――そうでしょ?」
エラ「へえ、わたしをこき使おうという魂胆か。人間と違って給与もなくただ働きさせられるからな」
ビストライト「ま、平たく言えばそうだけど」
エラ「お前は勘違いしている」
ビストライト「ん?」
エラ「第一に、わたしは自爆装置を解除してほしいと思ったことはない」
エラ「自爆装置は必要なものだ。わたしは人と違って自分を壊すことができない」
エラ「でも、自爆装置があれば自分の活動を永久に停止させることができる。跡形も残さずに」
エラ「わたしは本懐を遂げたら自爆すると決めている」
エラ「この自爆装置は「安寧」のようなものだ」
エラ「だから、勝手に自爆装置を解除しようとするやつは容赦しない」
ビストライト「・・・うーん」
エラ「第二に、わたしは人間を殺すために作られた機械だ」
エラ「つまり兵器だ。連中はわたしを「兵器」とは呼ばなかったが、そういうことだろう」
ビストライト「情緒がないからね」
ビストライト「君みたいに人間の姿を模した子を、兵器と呼ぶにゃあ、ちょっと据わりが悪い」
ビストライト「人情としてな」
エラ「人殺しの道具を作っておいて人情がどうとか・・・」
エラ「わたしの仕事は人を殺すことだ」
エラ「戦争が終わったら今度は和平のために仕事をしろと?」
エラ「わたしは都合のいい道具か?」
ビストライト「うん まあ・・・ロボットだし、有り体に言うとそうなんだけど・・・」
エラ「人間のために働くなど言語道断だ」
エラ「邪魔するやつは殺す」
ビストライト「わかったよ」
エラ「わかっていない。ミメイへの殺意がわたしの生きる糧なのだ、この塵のような世界への未練だ」
ビストライト「ミメイ博士を探してるのは共通の目的だし、見つけるまでは手を組むってのはどうだ?」
エラ「それで? 見つかったらどうするのだ」
ビストライト「それなんだよね問題は・・・」
ビストライト「まあ、そのときまた考えよう」
エラ「・・・」
ビストライト「どうかな? ひとりで闇雲に探すよりは、協力したほうがいいんじゃないかな」
エラ「・・・お前と協力したところで、突破口が見つかるとも思えん」
ビストライト「手厳しいなぁ。一応こっち仲間いるから」
エラ「仲間? どこに。見当たらないが」
ビストライト「はぐれちゃって・・・」
エラ「・・・」
エラは考え込むように、急に動きを止めた。
ビストライト「あれ? どうしたの? 電池切れた?」
エラ「わたしのバッテリーは自動充電式なので止まることはまずない」
エラ「「心臓」が・・・」
エラ「激しく高鳴っている」
ビストライト「え?」
ビストライト「あ、それって俺に一目惚れしちゃった的な?」
エラ「怒りだ。おまえのせいで怒りが爆発しそうだ」
ビストライト「こっちにまでなんかトクトク聞こえるんだけどなに?」
ビストライト「君、それ、心臓、じゃなくて、自爆装置の音・・・」
エラ「起爆のスイッチが入った。あと30秒程度で爆発する」
ビストライト「ちょっと待って! 止めて止めて」
エラ「自分ではコントロールできない」
ビストライト「君の自爆装置って、自分でコントロールできないの!?」
エラ「そうだ、トリガーは、わたしの「怒り」だ」
ビストライト「そんな馬鹿な なんでそんなあやふやな機能を搭載するの!!」
エラ「わたしを怒らせたおまえのせいだ」
???「爆発 10秒前です 9、8、7・・・」
逃げることも間に合わない。破滅へのカウントダウンが始まった。
感情のあるロボットとそれを作った博士を探す旅かと思いきや、早くも爆発とともに終了しそうな一話で楽しかったです。
好みかもしれませんが、ビストライトとエラの会話シーンが長回しで背景変わらないので、少し動きがあるといいなと思いました。
シンデレラの型番には意味があるのかなとか色々想像しました。
遅ればせながら読ませていただきました!展開がテンポ良く進んで面白かったです!続きが楽しみです!
テンポの良い会話で、かつキャラクター性がよく伝わってきますね。色々な”謎”を散りばめられた第一話なうえ、ラストは起爆寸前なんて、次話を絶対見たくなってしまいますよ!w