被告人を無期異世界転生に処す

わらやま

エピソード2 転生(脚本)

被告人を無期異世界転生に処す

わらやま

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〇入り組んだ路地裏
羽原 貞治「俺を・・・」
羽原 貞治「俺を無期異世界転生にしてくれ」
野原検事総長「おい、お前正気か!? さっきの私の話を聞いていたんだろ!!」
野原検事総長「無期異世界転生は、執行されたらこの世界にはもう戻ってこれないんだぞ」
野原検事総長「それでもいいのか!?」
羽原 貞治「構わない!!」
羽原 貞治「そんなことより、冤罪だったのに、身内が誰も信じてくれなかった兄貴の事を思うと・・・」
羽原 貞治「のうのうと俺がこの世界で生きていられるかよ!!」
羽原 貞治「それに冤罪だと言われて思い返すと、当時の兄貴は明らかに様子がおかしかった」
羽原 貞治「絶対何か裏があったはずなんだ」
羽原 貞治「俺にも言えなかった何かが・・・」
羽原 貞治「だから、今度こそ会って話をしたいんだ!!」
野原検事総長「な、なんて覚悟だ・・・」
羽原 貞治「とりあえず、あんたは俺のアパートに今から来てもらう。そこで色々話を聞くからな」
羽原 貞治「言うことを聞かないと・・・」
野原検事総長「わ、分かった分かった!! 従う、従うから、腕を振りかぶるのはやめてくれ!!」

〇古いアパートの一室
野原検事総長「う、狭い部屋だな・・・」
羽原 貞治「うるせー、安月給なんだよ」
羽原 貞治「とにかくアンタが知ってる事全部話してもらうからな」
野原検事総長「・・・分かったよ」
野原検事総長「といっても検事総長程度では実情はほとんど知らないがな」
羽原 貞治「検事総長程度って・・・ めちゃくちゃエリートじゃないか!!」
野原検事総長「・・・異世界の詳細は内閣総理大臣と一部の大臣しか知らんのだ」
羽原 貞治「そんな馬鹿な話あるか!!」
野原検事総長「本当だ。私の権限はせいぜい異世界転生者の数を増やすよう働きかける事だけなんだ」
羽原 貞治(検事総長ですら、ほとんど内情が分からないなんて、一体どいういうことなんだ!?)
野原検事総長「だが、知っている限りの事を話そう」
野原検事総長「私が知っている事は、異世界の名前、行き方の2つだけだ」
野原検事総長「まず異世界の名前だが、名を『ナツレ』という」
羽原 貞治「ナツレ・・・ そこがどんな世界かは情報あるのか」
野原検事総長「残念だが皆無だ。 政府の公式発表だと、人間に近い生き物が農耕を行いながら住んでいる・・・」
野原検事総長「とされてはいるがね。 真実は分からない」
羽原 貞治「それは俺も聞いたことはあるけど、まぁ信用は出来ないよな」
野原検事総長「次にナツレへの行き方だが・・・」
野原検事総長「国会議事堂の地下の秘密の部屋にある『ゲート』と呼ばれるものに入る事がトリガーだ」
野原検事総長「無期異世界転生者は、そこに連れられ強制的にゲートをくぐらせられるんだ」
羽原 貞治「なるほど・・・」
羽原 貞治「じゃあ、そこに忍び込んで入ってもいいのか」
野原検事総長「国会議事堂だぞ・・・。 どれだけ警備がいると思ってるんだ・・・。 不可能だよ」
羽原 貞治「それもそうか・・・ だったら結局は無期異世界転生を求刑されるような罪を犯すしかないか・・・」
羽原 貞治「何かいい案はあるか!? 俺は一刻も早くナツレに行きたいんだが!!」
野原検事総長「・・・ひとつ提案だが」
野原検事総長「私を拉致監禁するというのはどうだ」
羽原 貞治「あんたを拉致監禁!?」
野原検事総長「ああ」
野原検事総長(まあ、今実際にされてるんだが)
野原検事総長「2年前にも政府の要人が拉致監禁された事件があったが、」
野原検事総長「その際も無期異世界転生が執行されている」
羽原 貞治「過去同様の判例があるのか・・・ だったら無期異世界転生が求刑されることはほぼ確実・・・」
羽原 貞治「加えて現行犯であれば捜査も不要で判決も早い・・・か!!」
羽原 貞治「ヨシ、それで行こう」
羽原 貞治「でもアンタはそれでいいのかよ!? 拉致監禁の被害者になったら色々面倒な事もあるんじゃ?」
野原検事総長「俺の事など気にするな」
野原検事総長「私は・・・お前の勇気と覚悟に感動しているんだ」
羽原 貞治「え!?」
野原検事総長「稀に異世界転生に変な幻想を抱いて転生を希望する輩には会うが、お前みたいな動機の人間には初めて会った」
野原検事総長「それに冤罪被害者の身内に会ったのも初めてだ」
野原検事総長「本来なら冤罪証明に協力したいくらいなんだが・・・」
野原検事総長「あの事件はアンタッチャブル・・・ 私に協力出来る事はこれぐらいだ」
野原検事総長「すまなかったな」
羽原 貞治「野原さん・・・」
羽原 貞治「アンタいい人だな・・・ さっきは殴って悪かった」
野原検事総長「なに・・・かまわんよ」
野原検事総長「お前が兄貴に会えることを私も祈っておくよ」
野原検事総長「それに、もしかしたらこっちの世界に帰る手段がナツレで見つかるかもしれないしな」
羽原 貞治「ありがとうございます・・・」
野原検事総長「さぁ!!早く兄貴に会いたいんだろ!! ウチと警察に連絡するんだ!! 目的はそうだな、金目当てとかにしておけ」
羽原 貞治「え、ええ!!」

〇テレビスタジオ
アナウンサー「続いてのニュースです」
アナウンサー「昨日、羽原貞治容疑者(18)が野原検事総長を拉致監禁し自宅に立て籠っていた事件について」
アナウンサー「犯人の羽原氏が警察に取り押さえられたとの事です」
アナウンサー「なお、羽原氏は調べに対して、金目的でやったと供述しているとのこと」
アナウンサー「なお、野原検事総長は数発殴られた怪我はあるものの、そのほかに目立った外傷は無い模様です」

〇法廷
  主文!
  被告人を無期異世界転生に処す!!
羽原 貞治(兄貴・・・ 俺もこれで無期異世界転生者だ・・・)

〇黒背景
  羽原 貞治
  無期異世界転生執行日
羽原 貞治(目隠しをされたまま搬送されて、かれこれ3時間くらいか・・・)
羽原 貞治(ゲートが国会議事堂にあることを秘密にするため、あえて遠回りをしているんだろうが・・・)
羽原 貞治(知らなかったらと思うと・・・ 背筋が凍るな・・・)
羽原 貞治(兄貴は・・・ どんな心境だったんだろうか・・・)
  羽原 貞治!!
  目隠しをとるぞ!!

〇地下室
羽原 貞治(これがゲートか・・・!?)
羽原 貞治(なんて禍々しいんだ・・・)
  では、あの黒い渦に飛び込め!!
羽原 貞治(これで本当に異世界に・・・ナツレに行けるのか)
羽原 貞治(兄貴・・・!!)

〇オフィスの廊下
  あの日・・・俺は冤罪で有罪になった兄貴に酷いことを言ってしまった・・・
  辛い状況だったはずなのに・・・
  俺だけでも兄貴の無実を信じるべきだったのに・・・

〇地下室
羽原 貞治(待ってろよ・・・)
羽原 貞治「今行くぜ!!」

〇ホテルの部屋
野原検事総長「羽原貞治は今頃異世界転生している頃か・・・」
野原検事総長「ふっ・・・」
野原検事総長「わっはっはっは!! 上手くいったぞ!!」
野原検事総長「私がママに機密情報をうっかり漏らしていたなんてバレたら失脚だったからな」
野原検事総長「だが、まさか兄貴に再会するために異世界転生したいなんて訳の分からない動機をもってるとはなぁ。ツイてたよ」
野原検事総長「それに熊井総理の転生者増の指令にも貢献できるし、まさに一石二鳥だな」
野原検事総長「『死人に口なし』ならぬ『転生者に口なし』ってところだな」

次のエピソード:エピソード3 邂逅

コメント

  • 野原総長……!
    →野原総長おまえー!!

  • 兄弟の関係がリアルに描かれていて良いですね。異世界に行ったあとに検事総長があんなコメントするとは。割と話せるやつだと思っていたのに。次が気になります。

  • 実は敵!
    の割には口が軽い?

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