EX②.スプリンターズ/(ミス)フォーチュン(脚本)
〇地球
今この瞬間、世界のどこかの誰かは、
銃を握って、戦場を走り回っている───
〇国際会議場
────戦争の話をする。
戦争する上での利点(メリット)は、
大雑把に、以下の通りだ。
①戦争関連産業・経済循環の活性化
②自国に対し脅威的な諸外国の排除・侵略
③国際的な発言力の向上
だが、所詮これらは、
『綺麗事を並べた結果』に過ぎない。
何故なら、戦争によって起こる
実害(デメリット)については──────
───簡単にイメージ出来るだろう?
〇荒廃した街
心身への一生完治しないダメージ
家屋や主要施設の倒壊による生活機能のマヒ
食料・水源の汚染によって起こる飢餓
物価高騰の影響によるインフレの加速
etc,etc,etc・・・
〇ステンドグラス
『幸福量保存の法則』
人類全体の幸福(+)と不幸(-)の総和はプラスマイナスゼロになる、という考え方だ
────そんな、オカルト話を聞いて、
アタシはこう思うんだ
〇黒
〇空港の外観
2025年
〇空港のエントランス
ホロ「・・・本当に、長い間お世話になりました!」
父「私たちのような『難民』が暮らせれたのも 町の人たちのおかげです・・・!」
母「本当に、こんなに良くして下さって・・・ 何だか寂しくなっちゃいますね・・・」
・・・
・・・・・・
ホロ「ほら、レラも何か言ったら?」
・・・昨日散々言ったから、いいよ別にっ
ホロ「お別れする時くらい、キッチリしなきゃ!」
・・・うるさっ(ボソッ)
母「レラ!」
八代 経理(やしろ けいり)「良いんです! 気持ち、分かりますから!」
熱斗「寂しがってるの、見え見えだっつーの」
光「・・・あっちに着いたら、連絡してね?」
光「向こうの中学校の様子とか・・・ 色々教えてくれたら嬉しいな・・・」
・・・・・・はいはい
熱斗「・・・それじゃーさ、『またな』」
光「・・・『またね』」
・・・『またね』
〇空港の滑走路
〇飛行機の座席
ホロ「オモテちゃん、 結局間に合わなかったみたいだね・・・」
・・・挨拶済ませてたんだから、
別に大丈夫でしょ
ホロ「最近、特に忙しそうだから・・・ 『行けたら行く!』って言ってたんだけど」
・・・
・・・ホロ姉、
屋上のあの目立つ衣装、見える?
〇空港の屋上
〇空
ホロ「・・・・・・う゛ぅ」
ホロ「う゛ぁぁん・・・・・・」
・・・『またね』、ウラナイ姉ちゃん
〇中規模マンション
半年後、初夏(ナチャーロ リェータ)
〇おしゃれなリビングダイニング
いてきまー
父「年々食べるの早くなってるなぁ(しみじみ)」
母「もう中3なんだから、成長期よ成長期」
ホロ「お か わ り」
父「『ボスキャラ』かな?」
「あっはっはっはっは!」
〇名門の学校
私たちの国の学校は
ほとんどが『小中高一貫』の国立校。
日本と違って、
基本的にクラス替えが無いのも特徴だ。
〇おしゃれな教室
エレナ「レラ、おはよ!」
おはよ、エレナ
エレナ「そういえば、『EYOF』の選考会、 もうすぐ、始まるじゃない」
『ヨーロッパ・ユース・
オリンピアン・フェスタ』
14〜18歳を対象にしたスポーツの祭典
エレナ「最近どう?しっかり、走ってる?」
いまは負荷軽めの週間だから・・・
テンポ走とかフォーム矯正くらいかな?
エレナ(内容、ガチのガチだ・・・)
???「エレナ、ちょっと」
ダリア「『EYOF』ボランティアの事で相談あるんだ」
ダリア「”一緒に来てもらっていいか?”」
エレナ「・・・」
行ってきなよ、アタシは大丈夫だから
エレナ「・・・ごめんね」
戦争中に地元に残っていた『残留組』と
難民として国外に退避した『疎開組』。
2つの立場の違いと、閉鎖的な環境が、
クラスの中に溝を作っていた。
〇グラウンドの隅
(広背筋ストレッチ、意外にキツイな)
「オイ」
・・・・・・昼休みに隅っこで
ストレッチするのも許さないって魂胆?
まるで小学生のイチャモンじゃん
ダリア「ンなワケっ! 学校代表で大会出るんだろ?応援対象だよ」
ダリア「『エレナから離れてくれ』」
・・・
ダリア「アイツは戦争中でも国に居続けてくれた」
ダリア「一度国を離れたお前といると クラスの規律が乱れるンだよ・・・」
・・・『どーでもいいよ』
ダリア「じゃあ今度から、エレナをシカトしてくれ」
・・・はぁ?
ダリア「一番、波風立たない方法だろ?」
ダリア「エレナの意思の強さ、知ってるだろ? 真正面から言っても受け入れてくれるか?」
・・・
ダリア「──ッ!」
〇壁
何でアンタなんかの為に、
エレナとの関係ブッ壊さなきゃいけないの?
ダリア「離せよッ」
『どーでもいい』ってのは
『アンタ達の体裁』の事よ!
『残留組』とか!『疎開組』とか!
こっちは知ったこっちゃない!
ダリア「離せよ!!」
「止めてよ!」
エレナ「こんな、、不毛なコト・・・ せっかく戦争、終わったのに・・・」
エレナ「────何で、身内同士でも、 争わなきゃいけないの・・・?」
・・・
ダリア「・・・」
ダリア「・・・認めてねェから」
ダリア「『誰のお陰』で戻ってきた平和だと思う?」
ダリア「平和ってのは『タダ』じゃねェンだよ・・・」
ダリア「アタシは、『平和の価値』も知らないで、 のうのうと『幸せ』享受してる奴が、」
死ぬ程嫌いなんだよ、バカヤロォ
・・・
〇おしゃれなリビングダイニング
母「おかえり〜、晩御飯出来てるよ〜」
後で。
カバン置きに来ただけ。走ってくる。
母「・・・」
ホロ「レラ、デカい大会出るの初めてだし、 緊張してるのかな・・・」
母「学校で色々あったみたい(情報通) デリケートな問題だわ、ホント」
母「まぁ、こっちはどっしり構えて 支えてくしか無いのよ、アンタの時みたいに」
ホロ「えっ・・・、ワタシって反抗期酷かった?」
母「(真顔で見つめる)」
ホロ「・・・苦労かけました🙏」
母「・・・『どデカい案件』あったでしょ?」
ホロ「・・・うん」
母「アンタはアンタで辛かったと思うけど、 あの子はあの子で辛いんだよ、『今』がね」
母「”戦争は終わってからも戦争”なんだから」
〇空
───ヤになっちゃうね、いつの時代もさ
〇稽古場(椅子無し)
ワタシは昔、アスリート養成校で
大好きなフィギュアを専攻していた。
〇橋の上
ドーピングはゼッタイに嫌だった。
申し入れを拒否した次の日から、
ワタシは代表選考から除外された。
〇土手
程なくして、世界大会の検査で、
国ぐるみのドーピングが発覚した。
機関から下された判決は、
『全選手の出場停止処分』
本意でも不本意でも、国の代表達は
『ドーピングに手を出した』という
消えない烙印を押されることになる。
────ワタシは、『全部』嫌になって、
大好きなフィギュアから、離れた。
そして、程なくして『戦争』が始まって、
ワタシたちは『難民』になったんだ・・・
〇川沿いの原っぱ
はぁ・・・ぜぇ・・・ッ
────なんか、ここの景色、
心内神社の近くの河原に似てるな・・・
あの頃、本当に楽しかったなぁ
ははっ、何か泣けてきた・・・っ
『逃げられなかった立場』
と
『逃げるしかなかった立場』
「レラ、結構遠い所まで、走ってきたね?」
!!
エレナ「お疲れ様、ここ、私の秘密基地なんだよ」
エレナ・・・
比べる事の出来ない、人間の『不幸』
エレナ「・・・ダリアの事で、 話しておきたい事、あるの」
エレナ「丁度いいし、ちょっと、いいかな?」
アタシ達に出来ることは────
〇国立競技場
『EYOF』陸上競技選手権
-選考会当日-
〇更衣室
・・・緊張するなぁ
よりにもよって、誘導役ダリアだし・・・
絶対会っちゃうじゃん・・・
はぁ・・・気まずっ・・・
・・・メッセージ?
〇競技場のトラック
ダリア「競技始まるまで、お前はここで待機だとよ」
・・・ダリアの事聞いたよ、エレナから
ダリア「・・・へェ」
ダリア「で? 心変わりでもしたって報告?」
・・・正直、『まだ』整理ついてない
何したらいいのか、してあげられるのか、
全ッ然、思いつかなかった
ダリア「・・・」
でもさっき、知り合いから
アドバイスもらって、吹っ切れたよ
アタシに出来ることなんて、
限られてるんだから────
レラ「『目の前の課題に一点集中しろ』」
レラ「学校背負ってるんだから、 全力疾走(ブッチギリ)で天下(テッペン)獲るよ」
女子100m走の選手は、
所定のスタート位置に集まって下さい。
レラ「そんだけっ!それじゃあねっ!」
ダリア「待てよ」
ダリア「後で飲むなり、アタマ冷やすなり、 お前の好きに使え・・・」
レラ「ありがとう(スパシーバ)!」
〇競技場のトラック
On your marks──────────
────────set.
〇競技場のトラック
あのね、ダリアのお父さん、軍人でさ、
戦争で、亡くなってるんだ。
このご時世、珍しい話じゃ、ないんだけど
だから、人一倍、『残留組』の人達を、
大切に感じてるんだと、思う。
もちろん、『疎開組』は、住む所壊れたり、
侵略された人の集まりって事も、知ってる。
だから、ダリアも、
複雑な気持ちなんだと、思うよ。
私もそうだけどさ、、みんな、気持ちを、
上手く伝えられないんだよ、きっと。
〇競技場のトラック
ゴーーールッ!!!
レラ選手、『大会新記録』です!
すごい!速すぎる!!速すぎるぞこの娘!!
レラ「はぁ・・・ぜぇ・・・」
エレナ「レラ!すごいすごい!! 流石!私の見込んだ通り!!!」
ダリア「・・・」
ダリア「お前、すげェな・・・」
ダリア「やるよ」
レラ「あ゛ぁ〜〜・・・冷たくて・・・ 超気持ちいい・・・」
〇競技場の通用口
心内 ミコト(うらない みこと)「おめでとう、凄いよ、本当に・・・」
ホロ「ワタシの自慢の妹!! 凄くない?凄くない?!?」
心内 ミコト(うらない みこと)「あ、そろそろ休憩終わりだ・・・」
ホロ「・・・今日は来てくれて、ありがとね!」
心内 ミコト(うらない みこと)「また連絡するね!バイバイ👋」
〇空
(────久々に、滑ってみようかな?)
〇タクシーの後部座席
EX③
心内 ミコト(うらない みこと)「ん?」
心内 ミコト(うらない みこと)「もしもし?」
「あ、ウチウチ!」
心内 ミコト(うらない みこと)「詐欺師かな?」
心内 オモテ(うらない おもて)「『ウチウチ詐欺』じゃねーよ! ンなモン、誰も引っかからんわ!」
心内 ミコト(うらない みこと)「占い師も同じようなもんでしょーが」
心内 オモテ(うらない オモテ)「ウチ何かしたっけ!?色々キツいよ?!」
心内 ミコト(うらない みこと)「ポケットWiFiのギガ数減らしてるぞ〜 ウチ、いま海外なんだぞ〜」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・あ、ごめん(切実)」
心内 ミコト(うらない みこと)「あ、そうだ、経理ちゃん元気?」
心内 ミコト(うらない みこと)「『あれ』以来、会えてないからさ・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「元気も元気よ 『不老不死の一種か!』ってくらいツヤツヤ」
心内 ミコト(うらない みこと)「色んな意味で笑えねェ・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・そういえば、あの時からだっけ?」
心内 ミコト(うらない みこと)「お姉が変な肩書き、名乗り始めたのって」
心内 オモテ(うらない おもて)「『変』って言うなバカヤロー! 一応占い師に『二つ名』は必要でしょーが!」
心内 ミコト(うらない みこと)「いやぁ、あまりに特殊過ぎてさ・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「だって、普通に考えてさ────────」
心内 ミコト(うらない みこと)「こんな二つ名、肩書きにしないじゃん?」
スポ根と思って見てました😆
不幸を題材としながらも、さわやかなラスト。
次も楽しみです(((o(*゚▽゚*)o)))
レラが悩みを振り切るように全力で走るシーンがとても良かったです。
個人単位では解決しきれない悩みや、自分のせいじゃない問題に翻弄されながらも「目の前のことを全力でやる」この美しさに胸をうたれ、勇気をもらえた気がします。
『戦争は終わっても戦争』という言葉が刺さりました😭
重く悲しい難しいテーマながらも爽やかな読後感でした☺️
レラちゃんの成長した姿がラストでお披露目など、いつもながら演出もお見事でした!