売らない占い師、心内オモテ

紗卦冬葉(さけとば)

Ⅴ.メイ・ストーム・デー③/アイル・シー・ユー(脚本)

売らない占い師、心内オモテ

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〇川沿いの原っぱ
  小学生時代
心内 ミコト(うらない みこと)「田舎って、なんで何も無いんだろ?」
心内 オモテ(うらない おもて)「ん~、のんびり出来るし、 ラク出来て良いんじゃない?」
心内 ミコト(うらない みこと)「全然良くない!! タイクツで死んじゃうの!!」
心内 ミコト(うらない みこと)「ただでさえ町は人少ないし、 辛気くさい人ばっかりなんだもん!」
  田舎の神社に生まれた私達は
  同年代の子が周りにいなくて
  いつも2人で遊んでいた
八代 経理(やしろ けいり)「ここに居たのか!! 跡取り娘共☆」
八代 経理(やしろ けいり)「このこの~っ☆」
心内 ミコト(うらない みこと)「げっ!経理ちゃん!!」
心内 オモテ(うらない おもて)「経理さん、くすぐった~いっ!!」
  他の遊び相手は、
  年の離れた従姉妹の経理ちゃんだけだった
八代 経理(やしろ けいり)「いつもの『アイドル』ごっこするかぁ~? ん~?どうだぁ?」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・!! 知らないっ!やらないっ!!」

〇広い畳部屋
  中学生時代
心内 オモテ(うらない おもて)「『ミコ』〜〜 ちょっと占いの練習台になってよ〜」
心内 ミコト(うらない みこと)「『■■』、またタロット回し? ・・・町の人に頼めないの?」
心内 オモテ(うらない おもて)「えぇ〜、だって恥ずかしいじゃん! こんな事頼めるの『ミコ』だけだよぉ!」
心内 ミコト(うらない みこと)「そんな人に見せるの恥ずかしい趣味なら やらなきゃいいのに・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「そもそも、趣味でやる占いって的中するの? 結果なんて『嘘』みたいなものじゃない?」
心内 オモテ(うらない おもて)「ん〜〜〜〜・・・ でもウチ好きなんだよ、こういうの!」
心内 オモテ(うらない おもて)「ホラ!『ミコ』も歌とダンス好きじゃない! こっそり練習してるの知ってるんだから!」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・ッッ」
心内 ミコト(うらない みこと)「バカ『■■』ッ!! ウチのは見世物じゃないのよ!」
心内 オモテ(うらない おもて)「あはは・・・」

〇神社の本殿
  中学時代、卒業式後
心内 ミコト(うらない みこと)「あーあ。 結局、何のイベントもなく中学卒業ですよ」
心内 オモテ(うらない おもて)「あと一回り生まれるの遅かったら クラスメイト出来たのにねぇ~」
心内 ミコト(うらない みこと)「────『■■』はそれで良いの?」
心内 オモテ(うらない おもて)「?」
心内 ミコト(うらない みこと)「同い年のクラスメイトと可愛くメイクして!! オシャレな服着て外に出かけて!!」
心内 ミコト(うらない みこと)「学校帰りにカラオケ寄ってさ!! 流行りの曲歌って、踊ったり!!」
心内 ミコト(うらない みこと)「そんな当たり前の青春送れないなんて!! ウチ、もう嫌だよ!!」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「ウチだって、そんな青春送りたいよ」
心内 オモテ(うらない おもて)「可愛い服来て、外歩きたいよ」
心内 オモテ(うらない おもて)「でもウチらは、神社守っていかなきゃ」
心内 オモテ(うらない おもて)「生まれた時から『そういう運命』なんだよ ウチらに『未来を決める資格』なんて無い」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・・・・・・・・・・なにそれ?」
心内 ミコト(うらない みこと)「──────もういいよ。 『アンタ』に聞いたウチが馬鹿だった」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・・・・・・・・・・そんな事、」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・・・・出来る訳無いじゃん」

〇祈祷場
  高校時代、夏休み
父「このタイミングで言うのも酷なんだが いつか言うべき事だからな」
父「高校上がったら 神学部のある大学で神職の資格を取れ」
父「そしてゆくゆくは、 『社家の次男』辺りから婿を迎え入れろ」
父「良い相手が大学で見つからなかったら お見合いも検討していくからな」
心内 ミコト(うらない みこと)「はぁぁぁあああ!!?? バッッッカじゃないの!!??」
心内 ミコト(うらない みこと)「大学の進路も勝手に決めて、 あまつさえ結婚相手まで探せって・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「ウチらの事なんだと思ってるのよ!!」
父「それが社家に産まれた人間の『運命』だ」
父「私達には、長く続いてきた心内神社を、 ・・・伝統を守る義務がある」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・」
母「・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・なんで『アンタ』も、 ・・・母さんも!!」
心内 ミコト(うらない みこと)「『おかしい』って思わないの!!!??? ウチらは神社守ってく為の『道具』なの!!??」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・・・・・・・もう、限界」
心内 ミコト(うらない みこと)「勘当させてもらいます!」
心内 ミコト(うらない みこと)「────ウチ、1人で生きていくから」
心内 ミコト(うらない みこと)「高校にも、もう行かない!!!」
父「待て!!ミコト!!」
心内 オモテ(うらない おもて)「止めないであげて!!」
「!」
心内 オモテ(うらない おもて)「ウチがこの神社、 しっかり守っていくから・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「『ミコ』だけは・・・ ────自由にさせてくれない?」

〇広い畳部屋
  大学時代、お見合い当日
八代 経理(やしろ けいり)「まさか私より先に 結婚決められるとは思わなかったなぁ」
心内 オモテ(うらない おもて)「いや、まだだし・・・ ただのお見合いだし・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「相手がどんな人なのか分からないし・・・」
八代 経理(やしろ けいり)「────お前は、どう考えてるんだ?」
心内 オモテ(うらない おもて)「?」
八代 経理(やしろ けいり)「お前、相手がどんな奴でも・・・ 神社の為に、結婚受け入れるのか?」
八代 経理(やしろ けいり)「あの父親の事だし、向こうもメンツがある。 ・・・ほぼ確定で結婚決まるぞ?」
心内 オモテ(うらない おもて)「それでみんな幸せになるなら ・・・・・・良いんじゃない?」
八代 経理(やしろ けいり)「・・・」
八代 経理(やしろ けいり)「お前ら双子なのに、 ホント『ミコ』とは正反対だな」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・ねぇ、『ミコ』とは連絡取れてる?」
八代 経理(やしろ けいり)「なんかアイドル養成所の中で グループ結成することになったんだと」
八代 経理(やしろ けいり)「バイトと板挟みで大変そうだけど、 アイツ可愛いし、元々努力家だから・・・」
八代 経理(やしろ けいり)「大丈夫だよ、お前の妹だからな」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・うん」
八代 経理(やしろ けいり)「・・・アイツの『ライブ』、 いつか生で見れる日が来るよ」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・うんっ」
八代 経理(やしろ けいり)「それにしても、叔母さん達遅いなぁ 相手迎えに行って結構経たないか?」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・・・・大丈夫かな?」

〇カラオケボックス(マイク等無し)
心内 ミコト(うらない みこと)「あ゛~~~~ 暑っっっつ!!!」
心内 ミコト(うらない みこと)「都会の蒸し方、異常すぎでしょ!! クーラー壊れてんのかな!?」
心内 ミコト(うらない みこと)(・・・電話?)
心内 ミコト(うらない みこと)「経理ちゃん?昼間にどしたん?」
  ────良いか?落ち着いて聞け?
  お前の父さんと母さん、
  交通事故に遭って──
  訃報を聞いた瞬間、
  
  心の奥のナニカが壊れる音がした

〇黒背景
  真っ先に浮かんだのが『アイツ』の顔
  『アイツ』、どんな事になってるのかな?
  
  慌てて大変になってないかな?
  ──────でも、
  
  ウチは、
  
  家族を捨てた身だから
  ウチには、
  
  家族に合わせる顔が、
  
  無いから、
  正常な思考なんて出来なくなっていて
  
  その日の内に、携帯の番号を換えて
  
  向こうとの縁を完全に断った
  身勝手な振る舞いで、
  
  帰る場所も家族も捨てたウチは、
  ────本当に、
  救えない、自分勝手な、馬鹿だ

〇実家の居間
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「(スッ)」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・!」
心内 オモテ(うらない おもて)「(『どうぞ飲んで🤲』のジェスチャー)」
「・・・ふぅ(深呼吸)」
心内 オモテ(うらない おもて)「『社家の次男とお見合いしろ』って話、 大学の時、実際にやらされてさ・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「丁度その時に、事故が起きてね?」
心内 オモテ(うらない おもて)「色んなゴタゴタと重なったから、 縁談はキッパリ断ったの・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「『結婚する気持ちになれません』 って言ったら、あっさり引いてくれた」
心内 オモテ(うらない おもて)「向こうの神社の人も、 気を使ってくれたんだよね・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・神社、今後どうなるの?」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・さぁね?」
心内 オモテ(うらない おもて)「どうなるんだろうねぇ・・・ 正直、分からないなぁ・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「でもさ、いまは毎日楽しいんだ」
心内 オモテ(うらない おもて)「経理さんの経営戦略で、副業で配信始めてさ」
心内 オモテ(うらない おもて)「新しく外国から引っ越してきた子も 神社で働いてくれててね?」
心内 オモテ(うらない おもて)「3人で色々考えて ライブとかやってるんだけど、」
心内 オモテ(うらない おもて)「これがもうハチャメチャでさ!」
心内 ミコト(うらない みこと)(────ああ)
心内 ミコト(うらない みこと)(────きっと、『お姉』は、)
心内 ミコト(うらない みこと)(────『次に進めた』んだね)
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・あ、」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・・・・・・・あのさっ」

〇幻想空間
心内 ミコト(うらない みこと)「本当に・・・あの時・・・ ごめんなさい・・・!」
心内 ミコト(うらない みこと)「母さんと父さんが死んだ時、 何で家に戻らなかったのか・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「全部『お姉』に押し付けて・・・ ウチだけ関係ないフリして・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「その事・・・・・・ずっと後悔してた!」
心内 ミコト(うらない みこと)「ウチは・・・田舎から逃げたかっただけで! 自由になりたいって、甘えてただけで!」
心内 ミコト(うらない みこと)「周りの人の事、何も考えて無かった! 救いようのないくらい自己中だった!」
心内 オモテ(うらない おもて)「・・・『ミコ』」
心内 ミコト(うらない みこと)「合わせる顔も無くて、勝手に消えて・・・ ウチ・・・ウチは・・・」
心内 ミコト(うらない みこと)「最低の・・・馬鹿だよ・・・ 許されない事、した・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「──いいんだよ、『ミコ』」
心内 オモテ(うらない おもて)「ウチには経理さんも・・・ 町のみんなも付いてくれてたから」
心内 オモテ(うらない おもて)「葬儀とか、神社の仕事とか、 辛いことあっても周りが支えてくれたの」
心内 オモテ(うらない おもて)「正直、『ミコ』のこと 厳しく言う人もいたけどさ・・・」
心内 オモテ(うらない おもて)「────ウチが説得したから」
心内 オモテ(うらない おもて)「『家族は誰も悪くない』って」
心内 オモテ(うらない おもて)「勿論、交通事故は本当に仕方なかった! でも、ずっと落ち込んでいられないじゃん!」
心内 ミコト(うらない みこと)「・・・う゛ぅぅ」
心内 オモテ(うらない おもて)「ウチ、『決めた』の 心内神社を継いで、頑張って行こうって」
心内 オモテ(うらない おもて)「『ミコ』の夢を追いかけることも、 全力で応援しようって」
心内 オモテ(うらない おもて)「だから『ミコ』も、アイドル、頑張って?」
心内 オモテ(うらない おもて)「辛いことあったらさ、いつでも戻ってきなよ」
心内 オモテ(うらない おもて)「帰るところ・・・あるんだからさ、ぁ」
心内 オモテ(うらない おもて)「ぁ゛う゛ぅぅ・・・」
「かえる、の・・・お、そすぎだよ・・・ ばかぁあ・・・」

〇墓石
  遅ればせながら、
  初めてウチは両親の墓に手を合わせて、
  
  あの時言えなかった
  
  ”お別れ”を伝えられたのだった。
  両親が神社の仕事優先だった分
  
  正直、『楽しい思い出』なんて
  
  全然なかったけど、
  そんな思い出でも、
  
  ウチの心の内側には、
  
  しっかりと刻まれていて・・・
  ────ああ、イマわかった。
  
  『アイドル』にこだわってた理由。
「ただいま 遅くなって、本当にごめんなさい」
「おかしい話なんだけどさ、 ────ウチね?」
  ホント子供みたいな単純な発想・・・
  
  でも、きっと、とても大切な・・・
「『心の底からやりたい事』 いま、やっと、解ったんだ・・・」

〇空
  本日、5月13日は
  
  『メイ・ストーム・デー』
  
  ”お別れを伝える為の記念日”
  いま語られたお話は、
  
  まるで『春の嵐』のような、
  
  優しい『お別れの物語』であり、
  ──────『次に進む為の物語』。
  
  
  
  そして、最後に、
  妹は、姉に、
  
  こう『お別れ』を告げた。

次のエピソード:【終】VI. 春の嵐の後日談(夏)/『さよならだけが人生だ』

コメント

  • …泣きました😢ホロリ
    オモテちゃ~ん!

  • いやぁ、ミコちゃんが無事にお別れを告げる事ができて良かったです!
    酷いことを言って別れるのは本当に後悔しかないですからね…

    ただ、分かっていても素直になれないのも"人"ですので、とにもかくにも、後悔しない様日々を過ごすよう心がけようと思います…

  • 両親のことを聞いて、みことの帰りたいけど、辛く当たってしまったことで素直に帰れない葛藤
    その気持ちに共感してウルっときました…
    でもやっと打ち解けて前に進む姿に安堵して…
    読み終わって鳥肌立つくらい、感情揺さぶられました😭👍

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