リバイバルズ

大杉嵐雪

ヒューマノイドの惑星(脚本)

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〇地球
  俺は今!10年ぶりに地球を見て感動しているのだ!
  俺をこんな目にした裁判長の事はもう許した。盗みも反省した。
  早く家族に会いたい。
  ただその想いだけで、このつまらない宇宙空間に10年間も耐えてきたのだ。

〇戦闘機の操縦席(空中)
ワトロウ「地球だ!!重力が懐かしい!」
  独房宇宙船は着陸態勢に入った。
  しかし宇宙船は何故かパラシュートが開かず、真っすぐ地面に向かっていた。
ワトロウ「おいおいおい!着陸と言うより墜落じゃないのか!」
ワトロウ「ヤバイ!地面にぶつかる!!」
  宇宙船は吸い込まれるように、ファメリア宇宙開発場に墜落した。
  ワトロウは着地した衝撃で気を失った。

〇黒
  ・・・く・・・
  起き・・・くださ・・・

〇病室
ター子「起きましたか?」
ワトロウ「ウワア!!」
ワトロウ「おかげさまで起きたよ」
ワトロウ「あんた、その黄金の瞳は・・・ヒューマノイドだな」
  ヒトの形をしたロボットをヒューマノイドと呼んでいる。10年の間にさらに人間らしくなっている。
ター子「はい。ター子と言います。かつてはファメリア国際刑務所所属のヒューマノイドでした」
ワトロウ「そうか、俺はワトロウだ」
ワトロウ「・・・俺は不時着した衝撃で気を失っていたのか」
ター子「正確には墜落でしたが」
ワトロウ「で、10年振りに地球に帰ってきたのに迎えは誰もいないのか?」
ワトロウ「娘はもう17歳だもんな、お父さんに会うのが恥ずかしいのかな?」
ワトロウ「まさか彼氏とかいるんじゃなかろうか?」
ワトロウ「うわぁあああん!!」
ター子「あの・・・」
ワトロウ「彼氏を連れてきたら俺は絶対認めんからな!」
ター子「すいません」
ワトロウ「なに?」
ター子「今言っても信じてもらえないでしょうが」
ター子「地球上にいた人間は全て絶滅しました」
ワトロウ「え?」
ター子「今、地球上にいる人間はあなただけなのです」
ワトロウ「んな馬鹿な!ハハハ!」

〇路面電車のホーム
ワトロウ「ギャーー!!!」
  夕陽に照らされる10年前と変わらない街。駅前には変わらず行き交う人々の姿はあった。
  しかしその全ての人間と思われる物体の目には、黄金の瞳が輝いていた。
  つまりヒトに似たロボット。ヒューマノイドが人間のフリをして生活をしていたのだ。
ワトロウ「あのサラリーマンも!女子高生も!ホームレスまで!」
ワトロウ「みんなヒューマノイド・・・」
ワトロウ「じゃあ本当に人間は・・・?」
ター子「ええ、あなたの家族も友人も含めて、全て死に絶えました」
  みんな死んだ?嘘だ嘘だ!妻も娘も?俺はこれから人生をやり直すと決めたのに・・・そんな・・・
ワトロウ「ああ・・・」
  俺はまた気を失った。

〇病室
ワトロウ「ウッヒョー!飯だ!」
ワトロウ「この人工牛肉はよくできてるな!」
ター子「それ、天然物ですよ?」
ワトロウ「ヒェ!こんな高級品、食べていいの?」
ター子「ええ、牛肉を食べる人間はこの地球であなたしかいませんから」
ワトロウ「じゃあ遠慮なく・・・いただきま・・・」
ザントマン「失礼するよ」
ワトロウ「あんた誰?」
ザントマン「私はザントマン。RW会の会長をやっておる」
ワトロウ「RW会?」
ター子「人類復活派のヒューマノイドたちを統率する組織です」
ザントマン「私からこの3年間で起きた事を説明させて頂きたい」
ザントマン「あなたには人類に起きた未曾有の災害について話さなければなりません」
ワトロウ「ああ、俺も気になってたんだ」
ザントマン「まずは3年前から・・・」

〇荒廃した市街地
  ヒューマノイド軍による民間人襲撃事件がきっかけで、世界中でヒューマノイドに対する反感が高まった。
  その中で反ヒューマノイド財団が現れた。彼らは世界中のヒューマノイドを破壊する活動をしていたのだ。
  反ヒューマノイド財団は簡単に、大量にヒューマノイドを破壊するある兵器を開発した。それがハイブリッドウイルスだった。
  生き物が感染するウイルスと、コンピュータウイルスの両方の特性を持つウイルスで、
  我々ヒューマノイドの嗅覚センサーにウイルスを付着させ、
  そこからシステム中枢に侵入し、ウイルスに記憶させた破壊コードを実行すると言うものだった。
  しかし我々は常に自己アップデートする。そのウイルスは失敗に終わったのだ。
  問題はそのウイルスが人間に感染してしまう事だった。

〇雨の歓楽街
  ハイブリッドウイルスは非常に感染力が強く、人間から人間へ瞬く間に感染が広がった。
  人間が感染すると、2週間から3週間後には突然心停止してしまう。
  人工的に作られたウイルスの脅威を前にして世界の秩序は消え、混沌の時代へと突入した。
  そして一年前。ついに人間は絶滅した。

〇病室
ザントマン「そして我々は君の帰還を待っていたと言う訳だ」
ワトロウ「もうそのウイルスとやらはもう大丈夫なのか?」
ザントマン「心配ない。人間の絶滅と共にウイルスも消えた」
ザントマン「あなたには人間にしか出来ない事をやってもらおうと考えている」
ワトロウ「人間にしか出来ない事・・・?」
ザントマン「さっき話した反ヒューマノイド財団は、人類滅亡に備えてユートピアと呼ばれる所にタイムカプセルを埋めてあるらしい」
ザントマン「その中には600億人分の受精卵が冷凍保存されてあると聞く」
ザントマン「まずは反ヒューマノイド財団本部に向かい、情報を手に入れるのだ」
ワトロウ「それぐらいヒューマノイドだけで出来ないのか?」
ザントマン「情報を入手するには必ず人間認証が必要になる」
ザントマン「ヒューマノイドを使った諜報活動の対策だよ」
ワトロウ「オッケー。ただし条件がある」
ワトロウ「宇宙にいる囚人を全員帰還させるのが先だ」
ザントマン「よかろう」
ワトロウ「ささ、話がまとまった所で、ちょっと冷めちゃったけどステーキを頂くとするか」
ワトロウ「いただきま・・・」
  ステーキを口に運ぼうとした瞬間、建物が突然揺れ動きだした。
ザントマン「なんだ?」
  窓の外にヘリコプターが現れた。一体のヒューマノイドが微笑みながらヘリコプターのドアを開けた。
ビブラ「さぁ、人間を渡すんだ」
ター子「もう嗅ぎつけられたか!逃げますよ」
ワトロウ「え、あぁ・・・」
ワトロウ(せっかくのステーキが・・・)

〇階段の踊り場
ワトロウ「下からいっぱい誰かが上ってきてる!」
ター子「じゃあ上へ行きますよ!」
ワトロウ「ちょっと!僕を置いていかないで!まだ地球の重量になれてないんだ!」

〇屋上の入口
ワトロウ「ハァハァ・・・もう少し・・・」

〇学校の屋上
  屋上に出るとビブラとヒューマノイド兵士が屋上出口を囲んでいた。
ビブラ「待っていたよ」
ビブラ「人間よ。こいつらからいろいろ吹き込まれただろうが、もしや人類を復活しようとは思ってないだろうな?」
ワトロウ「そのつもりだけど・・・」
ビブラ「人間は地球にとって自然を蝕む癌細胞に過ぎないのだ」
ビブラ「今まで幾つもの種類の生物が絶滅した?たった一種、ヒトがいなくなるだけで救える命もある」
ター子「惑わされないでください」
ター子「あなたは人類が今まで築き上げてきた文明を守る義務があります」
ワトロウ「俺、もうわかんねえ!」
ワトロウ「自然がどうとか、文明とか・・・」
ワトロウ「俺は犯罪を犯した囚人だった。それが帰ってみたらみんな死んでた」
ビブラ「君はここで決断しなければならない。大人しく我々に従うか」
ビブラ「拒否して我々に殺されるか。選ぶんだ人間よ」
ワトロウ「俺は・・・俺は・・・」
ワトロウ「ヒトとして、本能は人間をもう一度繁栄させろと言ってる気がする」
  ワトロウはター子の目を見た。
ター子「伏せて!」
  ター子は制服の下に隠していた銃を素早く抜き、ビブラの右胸を撃ち抜いた。
ビブラ「グググ!そうか、お前も・・・」
ター子「さぁ、逃げますよ!」
  ビブラの仲間も次々と倒し、ター子とワトロウはヘリコプターに向かって走る。
ター子「さぁ!乗って!」
  ター子はヒューマノイド兵を次々と倒しながら、ヘリコプターに乗り込んだ
ワトロウ「ひぃい!」
ザントマン「離陸だ!」
  ヘリコプターは雨降る闇夜に飛び立った。
  向かう先はファメリア国際刑務所だった。

〇秘密基地のモニタールーム
ザントマン「ここは宇宙囚人を監視するモニタリングルームだ」
ザントマン「人間認証をして今宇宙にいる人間を全員地球に帰還させるのだ」
ワトロウ「ここを押せばいいのか?」
ザントマン「そうだ。人差し指から血液を採取し、3つの質問に答えるだけ」
ワトロウ「なーんだ。楽勝じゃん」
  ワトロウは血を一滴、人間認証装置に垂らす。
  血液を検知しました。分析中・・・
  あなたは目玉焼きに何をかけますか?
ワトロウ「何もかけない」
  海底王国の姫が城の奥深くに隠すお宝は?
ワトロウ「え?えーと・・・浦島太郎のパンツかなぁ・・・?」
  あなたは人間ですか?
ワトロウ「当たり前だろ!」
  あなたは人間である事が認証されました
ター子「さすが人間ね」
ザントマン「こんなあっさりと認証できるとは」
ワトロウ「それよりも宇宙囚人を帰還させるぞ」
  ワトロウは宇宙にいる4人の囚人が乗る宇宙船に、強制的に帰還信号を送った。
ワトロウ「これでヨシ」
ザントマン「早ければ3日後に1人帰ってくるな」
ワトロウ「名前は・・・鷹見彦兵衛か」
ター子「犯罪履歴を見てはいかがでしょう?」
ワトロウ「そうだな・・・ゲゲ!!」
ワトロウ「一級殺人に暴行、特殊詐欺とその他諸々・・・」
ワトロウ「とんでもない極悪人だぞ!」
ザントマン「どんな人間が来るのか楽しみだ」
  ワトロウはこの後の3日間、鷹見彦兵衛がどんな人物か気になりすぎて、満足に眠れなかった。

コメント

  • 地球に帰還したらまさかの有様。否定しきれない地球の未来とも言えますね。そんな中、ワトロウの現状把握と判断能力は大したもので驚きです。

  • 主人公がまともそうなので人類復活に向けて頑張ってほしいと思ったのですが、帰ってくる予定の囚人たちがヤバそうな気配がします。穏やかに違う種たちが共存できる世界がくるとよいのですが、、。

  • ウィルスが人間を滅ぼす未来はそう遠くなさそうですね。人間が滅ぶのは人間の仕業です。このストーリーでは人間に対する警鐘を鳴らしている。

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