窓女(まどんな)さん

渡邊OZ

第一話 令和の狐狗狸(こっくり)さん(脚本)

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〇可愛らしい部屋
小園のぞみ「『窓女さん』、『窓女さん』、どうぞおいでください!」
小園のぞみ「もし、おいでになられましたら『はい』のダイアログにお進みください」
小園のぞみ(ついに呼び出せたのね!! 都市伝説だと思ってたわ)
  のぞみの右手が小刻みに震えだす。
小園のぞみ「指が勝手にタイピングを・・・・・・」
小園のぞみ(心臓が口から飛び出しそうだわ。落ち着くのよ、のぞみ!!)
  (バックアッププログラム起動中)
  私は『窓女』。何がお望み?
小園のぞみ「お願いです。私とまどかのネット上の誹謗中傷をすべて消去してください!!」
小園のぞみ(まるで、ネットの幽霊とチャットしているみたいだわ)
小園のぞみ「あなたと契約すれば、願いは果たされる。そうですよね!?」
  (自然言語処理中・・・・・・)
  私の封印を解くことね。
  見返りに願いを叶えてあげるわ!
小園のぞみ「あと、もう一歩でデコードできるわ!」
小園のぞみ「あいたたたっ!」
小園のぞみ「ホームボタンを押し忘れたせいかしら」
  いつの間にか、椅子から転げ落ちている、
  のぞみ。
小園のぞみ「もしかして、誹謗中傷が消えているの!?」
小園のぞみ「嘘っ!信じられないわ!!」
小園のぞみ「やったぁ。私、ひきこもってないで、堂々と表を歩けるよ!」
  (全データ削除完了・・・・・・)

〇公園のベンチ
  翌朝。
  さびついた遊具がある都立公園。
小園のぞみ(こんなに外の空気が心地いいなんて・・・・・・)
  黒猫が野良犬に襲われて、高い木の枝から降りられなくなっている。
小園のぞみ「しっしっ! 弱い者いじめは駄目よ!」
  のぞみの気迫に圧されて、野良犬は退散する。
  木の枝から飛び降りた黒猫を、胸元でキャッチするのぞみ。
小園のぞみ「何かあったら、いつでも駆けつけるわ」
  黒猫は、一斉に駆け出していく。
小園のぞみ「診る人、『たゑ』? 相談料、『時価』?」
小園のぞみ「この際、占いも交番も変わらないわ」
たゑ「いかにも訳ありの顔をしている。難を引き寄せる相のおなごじゃな」
小園のぞみ「あの、占い師さん?私、すごく困っていて・・・・・・」
たゑ「あたしゃ、占い師じゃないよ。あくまでも『診る人』だ」
小園のぞみ「どうか待ってください! 置いていかないでください!!」
小園のぞみ「もう誰も私をひとりぼっちにしないで!!」
小園のぞみ「待ってくださ~い!」

〇屋敷の門
  表札がかすれて読めない古いお屋敷の前
たゑ「なんだい!? この星蘭庵まで追ってきたのかい?」
  肩を上下に震わせ、息が上がっているのぞみ。
小園のぞみ(まどかのために、あきらめないんだから!!)
たゑ「右手を隠しているようだけど、何かやましいことでもあるのかい?」
小園のぞみ「私、降霊術をしたんです・・・・・・」
たゑ「あんた、さては、呼び出した霊をお返ししなかったんだね」
小園のぞみ(もしかして、パソコンのホームボタンを押し忘れたせいかしら!?)
たゑ「何を無責任なことを言っているの!」
小園のぞみ「痛っあ」
  たゑの右の手のひらが、赤くなっている。
たゑ「あたしゃ、本気の相手しか診ない。中途半端な奴には適当な処方で十分よ!」
たゑ「どうしてもというなら、診断料は100万だよ!」
小園のぞみ「100万!?そんなの無理です~」
たゑ「あんたの本気はそんなもんかい?」
小園のぞみ「何でもやります!いや、やらせてください」
たゑ「・・・・・・」
たゑ「荷物をさっさとまとめるんだね」
小園のぞみ「えっ!?」
たゑ「二度は言わん。100万はいいから、まずはあたしの荷物をとっとと運びなさい」
小園のぞみ「100万払わなくてもいいんですか! って、この荷物重っ!」
たゑ「あたしがあんたの年頃の時は、その何倍も重い荷物を片手で運んだわ」

〇古めかしい和室
  物が散らかっている、古めかしい茶室。
たゑ「あんたのすべきことは一つ。この『星蘭庵」を隅々まで掃除なさい」
小園のぞみ(本当にそれだけでいいのかしら)
小園のぞみ「掃除100万分って、どれくらいやればいいのかしら?」
小園のぞみ「うん!?何も書かれていないノートみたいだけど」
小園のぞみ「右手がまた勝手に・・・・・・」
小園のぞみ「「衛藤ルコ」さん、何で私、知らない人の名前を書けたのかしら?」
たゑ「隅々までピカピカにしたのね。 えらいお早いこと!」
小園のぞみ「違うんです。つい魔が差して・・・・・・」
  たゑはノートをのぞみから取り上げる。
たゑ「掃除をさぼった挙句、ノートに落書きをしたのね。申し開くことはあるのかしら?」
小園のぞみ「私、わたし・・・・・・」
たゑ「何、声が小さくて聞こえんよ!」
小園のぞみ「もう友達を失いたくないの!同じ被害が出る前に、行動しないと!!」
たゑ「それは、どういうことかしら?」
小園のぞみ「・・・・・・ということなんです。誹謗中傷した人たちに謝ってもらいたいんです」
たゑ「まぁ、いいわ。明日から、毎日学校に行く前に『星蘭庵』を掃除なさい」
小園のぞみ「えっ!?ええっ!」

〇墓石
  集団墓地の一角。墓石はまだ新しく、
  よく手入れされている。まどかの墓もここに並んでいる。
小園のぞみ「また、私、逃げ出したくなったわ、まどか」
小園のぞみ「学校に行かないことには、何も始まらないのはわかっているの」
小園のぞみ「誹謗中傷の一部のログの出所は、私の中学校だったし」
小園のぞみ「でも、すごく怖いの」
  のぞみは、不意に体を掻きはじめる。
小園のぞみ「うん?何か無性に体がかゆいわ」
  のぞみの体の一部、黒猫を受け止めた部分に赤い湿疹ができている。
小園のぞみ「あっ!私、動物アレルギーなのに考えるより前に行動していたわ」
小園のぞみ「そういうことなのね」
  吹きおろしの風が、のぞみの頬をなでる

〇大きな木のある校舎
  大森中学校門前
小園のぞみ「久しぶりの制服、 丈あっているかしら?」
  ハンカチが校門の前に落ちている。
小園のぞみ「ハンカチ?「衛藤ルコ」!?」
衛藤ルコ「ごめん。ごめん。すぐ見つかって、よかったぁ」
衛藤ルコ「じゃあ、またあとでね。小・園・さ・ん」
小園のぞみ「何で、私の名前を。って授業に遅れる~」
女子生徒「これでよかったんですよね、衛藤先輩!」
衛藤ルコ「よくで・き・ました。あとで、SNSでいいねしておくからね」
女子生徒「やったぁ。インフルエンサーの衛藤先輩のためならお安いご用です」
衛藤ルコ「面・白・くなってきたわね」

コメント

  • こんばんは!
    令和のこっくりさんはなるほどネットの中にいるんですね!
    窓女という言葉は創作でしょうか
    とても印象に残りますね👍

  • コックリさん懐かしいです、私の時代もやり方次第で危険だという風潮がありました。SNS社会に生きる若い人たちは、その手軽さの見返りに大事なものを無くしているように思います。のぞみちゃんの亡くなった友達への想いが果たされる日が来ますように・・・。

  • 気になる事象や悲しき事件などがいくつも散りばめられた第一話、それらが今後どのように結びついて明らかになるのか、次話が楽しみですね。

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