破邪の拳 ~ニート武道家の地下格闘技トーナメント~

武智城太郎

第二三話 完成(脚本)

破邪の拳 ~ニート武道家の地下格闘技トーナメント~

武智城太郎

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〇警察署の医務室
青馬文彦「ZZZ・・・」
青馬文彦「ここは・・・!」
青馬文彦「闘技会場の医務室か・・・」
青馬文彦(試合が終わってから、半日も眠ってたのか・・・)
青馬文彦(試合・・・!)
青馬文彦「くそっ、負けた!」
青馬文彦「恥だ! 屈辱だ!」
青馬文彦「どうして奥義が効かなかったんだ!?  いったい何が足りなかったんだ!」
青馬文彦「だが今さらもう遅い。おれは破邪神拳の名誉に泥を塗ってしまった」
青馬文彦「潔く切腹を・・・」
斎藤亮介「所長、どうします? 救急車呼んだほうがいいっすか?」
  間仕切りカーテン越しに、男の声が漏れ聞こえてくる。
  少しめくって覗いてみる。
青馬文彦「・・・!」
青馬文彦(隣りのベッドに根岸先輩が・・・)
青馬文彦(筋肉が収縮して、骨と皮だけのミイラのような無惨な姿に成り果てている・・・!!)
  間仕切りカーテンを開く。
青馬文彦「根岸先輩、これはいったい!?」
根岸学「青馬か・・・」
根岸学「超人的な肉体の代償だ。ウルトラ・ステロイドの持続効果は一年が限度らしい」
青馬文彦「なんて無茶を・・・」
青馬文彦「何の音だ?」
  診察デスクにいた医者が、気を失って床に倒れ込んでいる。
A男「効果が一年なら十分だ」
斎藤亮介「き、きみらって・・・!!」
A男「医者はこいつで昏倒させた」
A男「はるばる日本にまで来たんだ。薬品を売ってもらおうか」
斎藤亮介「あ、あれは売りものじゃないって、なんどもメールしたじゃん」
A男「ならば仕方ない」
  A男は銃を取り出し、斎藤の頭に銃口をむける。
斎藤亮介「ちょ、ちょ、ちょ!!」
青馬文彦「なんだ、あいつらは?」
根岸学「テロリストだ」
根岸学「ウルトラ・ステロイドで最強の戦士を大量に造って、暴力的ジハードを起こすつもりなんだ」
青馬文彦「むちゃくちゃ悪い奴じゃないか!!」
A男「薬品は一つでいい。分析してコピーできるからな」
斎藤亮介「しょ、所長! どうしたらいいっすか!?」
根岸学「もとはといえば、おまえが研究室の画像を勝手にSNSにアップしたせいだろ」
A男「ギブ! ギブ!」
斎藤亮介「待って、待ってって! 出すから!」
  斎藤はUSの薬瓶を取り出し、B男にわたす。
A男「これさえあれば、奴らを皆殺しにできる」
A男「ほら、約束の金だ」
斎藤亮介「七万? たったこれだけ?」
A男「本物は一番上の一枚だけ。あとは新聞紙しさ、ヒヒッ!」
青馬文彦「待て! そんなことは許さんぞ!!」
  文彦はベッドから降り、二人組にむかっていこうとする。
  だがサッと銃口をむけられ、動きを止める。
A男「どんなに体を鍛えたところで、銃一つに勝てやしないのさ」
青馬文彦(こんなとき、どうしたら・・・)

〇古風な道場
竹國無蔵「もし飛び道具で狙われたらじゃと?」
竹國無蔵「そんなときは迷わず逃げよ」
竹國無蔵「じゃが、どうしても相対せねばならぬなら、〝破邪矢受け〟がある」
竹國無蔵「弓を引くときの筋肉の音、飛んでくる矢の音に耳をすまし、身をかわすのじゃ」
青馬文彦「銃が相手でも応用できるんですね?」
竹國無蔵「出来るわけなかろう! 蜂の巣にされるぞ」

〇警察署の医務室
青馬文彦(だめだ、こりゃ)
  文彦は、そばにあった時計をA男に投げつける。
A男「ぐはっ!」
  頭に命中し──
  動転して、やみくもに発砲する。
  二発は壁にめり込み、もう一発は診察デスクの椅子を砕く。
  文彦はその隙をついて、破邪旋回裏拳(バックハンドブロー)でA男を一発で昏倒させる。
斎藤亮介「う、うぐ・・・!!」
青馬文彦「大丈夫か!」
斎藤亮介「ヤ、ヤバいッす・・・」
青馬文彦「傷口を見せてみろ!」
  手で押さえていた脇腹は、出血一つしていない。
  そばに、砕けた木の塊が落ちている。
青馬文彦「・・・椅子の破片が当たっただけだ」
斎藤亮介「ヤッベ、ウルトラ・ステロイド、タダで持ってかれちゃったよ」
青馬文彦「おれはあいつらを追う!」

〇森の中
青馬文彦「うおおおーーっ!!」

〇美しい草原
青馬文彦「いた! あの二人組だ!」
青馬文彦「ヘリコプター!?」
  二人組が乗り込むと、すぐに離陸する。
青馬文彦「くそ、逃げられた!」
青馬文彦「まっすぐこっちへ!?」

〇ヘリコプターの中
  A男の右目には、破邪旋回裏拳でやられた大きな青痣。
A男「あいつめ、許さん!!」
  A男は、機関銃を構えて身を乗り出し──

〇美しい草原
青馬文彦「やばい!!」
  ヘリはなおも、執拗に追跡してくる。

〇草原
  〈動物ふれあい牧場〉の看板が見える。
青馬文彦「しつこい奴らだ!」
  いよいよ、ヘリはすぐ背後まで迫ってくる。
  横っ飛びに飛んで、銃弾の嵐をすんでのところでかわす。

〇山中の休憩所
  だが勢い余って、機関銃はその先にある〈うさぎハウス〉を掃射してしまう。

〇山中の休憩所
  小屋の中では、白い体毛が雪のように舞い──
  ちぎれた長い耳が、いくつも床に散らばっている。

〇空
  ヘリは前進をやめ、その場でホバリングしている。

〇ヘリコプターの中
A男「ならば、こっちをくらえ!」

〇山中の休憩所
  文彦も逃げ回るのをやめ、空中のヘリと対峙する。
  わずかに生き残ったウサギたちは、みんな恐怖で震えている。
青馬文彦「悪党め! 絶対に許さん!」
  文彦は道着の内ポケットから羊毛の手袋をとりだして両手にはめる。
  そして掌を道着に擦りつけるようにして、両腕を激しく上下に動かしはじめる。
  ザラザラザラ!
  
  ザラザラザラ!
青馬文彦「悪党退治は、古来から破邪神拳のつとめだ!」

〇山中の休憩所
  ザザザザッッ!!
  
  ザザザザッッ!!
  道着がバチバチと音を立て、全身を光に包まれる。
  逆立った髪の毛は、まるで針金のようだ。

〇ヘリコプターの中
A男「ミンチに変えてやる!!」
  A男はバズーカを構え、引き金にかけた指に力をこめる。

〇山中の休憩所
  だがそれよりも一瞬早く、
青馬文彦「破邪雷神拳!!」
  文彦が正拳突きを繰り出す。

〇空
  拳から放たれた大量の青白い稲光が、ヘリを直撃する。
  一瞬で飛行不能となり、地面に墜落する。

〇草原

〇山中の休憩所
青馬文彦「・・・・・・!!」
青馬文彦(そうか・・・)

〇法廷
狒々「邪心を捨てて闘え」

〇ボウリング場
竹國無蔵「破邪魂で頑張るのじゃ・・・!」

〇山中の休憩所
青馬文彦「足りなかったのは、〝正義の心〟だったんだ・・・!」

〇黒
  次回予告
  
  第二四話 終章
  
        乞うご期待!!

次のエピソード:第二四話 終章

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