ヴィルペイン

ウロジ太郎

Ep.36/ THE ELUSIVE NIGHT WATCH #26(脚本)

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〇組織の廊下
  僕はあれから、装甲シャッターを物理的に破壊し、壊れた追加装備を外して身軽になってネスト内部に侵入していた。
  ヘルメットも応急修理で直っている。
ナイトウォッチ「バステト、これでOK?」
  僕は通路のパネルを外し、配線にハッキングユニットをとりつけていた。
パステト「ネストのシステムに接続しました。 システムのハッキング、開始します」
ナイトウォッチ「急いでね」
パステト「お任せを。ところで、世渡を生かしておいてよかったのですか」
ナイトウォッチ「人殺しする気はないよ。 僕は、ちーちゃんを助けるために来たんだ」
パステト「了解しました。・・・情報収集及び、システムの掌握、ほぼ完了しました」
ナイトウォッチ「・・・どう?」
  空中にネストの地下施設を表示したウィンドウが表れた。
  下の階層に人を表すマーカーが固まり、研究スタッフとゼニス兵が合わせて150名ほどいる。
パステト「ネストの職員は全員、非常事態のマニュアルに従って最下層の重要施設の防衛にまわっています」
ナイトウォッチ「・・・ちーちゃんは?」
パステト「智是の部屋への職員の出入りのログ・・・なし。何らかのコマンド入力の痕跡・・・なし。智是はまだ無事のようです」
ナイトウォッチ「よし! よし、よし! やった! やったぞ! 中の様子は!?」
パステト「あの部屋はスタンドアローンですので、直接行かなければわかりません」
ナイトウォッチ「なら、すぐ行こう! あとは、ゼニスの兵隊さえ倒せば助けられる!」
  僕は勢いよく立ちあがろうとした。
ナイトウォッチ「・・・うっ、くっ・・・ぅ」
  しかし、ふらふらとよろける。
パステト「戦闘は無理です。死にますよ」
ナイトウォッチ「いや、死なない、よ。 ちーちゃんを助けて、生き残るって約束したんだ。大丈夫・・・」
パステト「紫雲、あなたの身体はもう限界です。 自分でも、わかっていますよね?」
パステト「智是のプランは、こうした事態も想定済みです。奥の手があります」
  ネスト地下施設の中層階にある「実験体監禁施設」と書かれたフロアが赤く点滅した。
パステト「監禁施設のロックを解除し、軍事技術の実験体をゼニス兵たちにぶつけます。混乱に乗じて智是を救出できるはずです」
ナイトウォッチ「実験体って。ちーちゃんと同じ、ゼニスの被害者の人たちじゃ・・・」
パステト「ほとんどは凶悪な犯罪者です。 彼らのゼニスへの憎しみは利用できます」
ナイトウォッチ「それ、人がたくさん死ぬやつ・・・だよね。他に、代案はないの?」
パステト「ありません」
ナイトウォッチ「なら僕が戦う! マイクロマシンとかコンバット・ドラッグで・・・」
パステト「マイクロマシンはもう限界量です。 コンバット・ドラッグのこれ以上の摂取も、オーバードーズで死に至ります」
ナイトウォッチ「でも、人殺しの許可なんて!」
パステト「紫雲。あなたの目的は、智是の救出ではないのですか」
ナイトウォッチ「! わかってるよ!」
パステト「ゼニスのシステムが再起動したら終わりです。実行するには、早く許可を」
ナイトウォッチ「わかってるって・・・!」
パステト「時間がありません。あと15秒以内に決断を。12・11・10・・・」
ナイトウォッチ「・・・! くっ・・・!」
パステト「6・5・4・・・」
ナイトウォッチ「ちーちゃん、僕は・・・!」

〇海辺
根須戸智是「・・・ごめんね。 正義の味方に、してあげられなくて」
久常紫雲「ううん。・・・僕は、君の味方になれればそれでいい」
根須戸智是「しゅーちゃん・・・」

〇組織の廊下
ナイトウォッチ「・・・! バステト、許可する。・・・やってくれ」
パステト「了解しました。監禁施設の軍事技術実験体、危険度SランクからBランクまで、72体の監房のロックを解除」
ナイトウォッチ「・・・・・・」
パステト「階下への隔壁を解放。誘導開始。・・・誘導中。・・・ゼニス兵と接触します」
  ネスト地下施設の図が数秒ごとに更新される。画面が更新されるごとに、実験体のマーカーがどんどん階下へ降りていく。
パステト「・・・戦闘、開始されました。ゼニス兵たちは実験体への応戦で手一杯です」
  実験体のマーカーとゼニス兵のマーカーが入り交じる。
  その数が更新されるごとに、どんどんマーカーが減っていった。
  あっと言う間にゼニス兵のマーカーが半分を切り、そのあと猛烈な勢いで研究スタッフのマーカーが減り始めた。
  おそらく・・・実験体による虐殺が行われている。
ナイトウォッチ「人が、死んで・・・」
パステト「紫雲、侵入ルートが確定しました。 ナビゲーション、開始します」
ナイトウォッチ「・・・あぁ・・・」

〇組織の廊下
  走ってきた僕は、凄惨な光景に立ち止まった。
ナイトウォッチ「・・・うっ!?」
  通路には血まみれの研究員たちと、ゼニス兵の死体がいくつも転がっていた。
ナイトウォッチ「わ・・・わかってた、ことだろ! 今さら、後悔なんて・・・!」
  血まみれのゼニス兵がビクリと動いた。
ゼニス兵「・・・ウ・・・ウゥ・・・」
ナイトウォッチ「! まだ、生きてる! バステト! 手当てを・・・!」
ゼニス兵「ア・・・アァ・・・た・・・すけ・・・」
  ゼニス兵の身体から、力が抜けた。
パステト「心肺停止しました。失血性ショックです。今の装備では、蘇生できません」
  彼の血まみれの薬指で、銀の指輪が鈍く光っていた。
ナイトウォッチ「結婚、指輪?」
  ちーちゃんの笑顔が、頭に浮かんだ。
  そしてあたりまえのことに、僕は気が付いた。誰にだって愛する人はいる。
ナイトウォッチ「この人も・・・! この人にも・・・! ううぅ! うあぁあぁぁっ!」
  僕はその場を逃げだした。
ナイトウォッチ「・・・ちーちゃん! すぐ、行くから!」
ナイトウォッチ「・・・助けるから・・・助けるから、ちーちゃん! ・・・助けて・・・っ!」

〇組織の廊下
  僕は実験体とゼニスの生き残りとの遭遇を避けつつ、最下層までやってきた。
パステト「智是はこの奥です」
ナイトウォッチ「ちーちゃん! ・・・!」
  通路の奥を見ると、突き当たりに白い厳重な装甲扉があった。
  その脇の壁には、操作用の端末が埋め込まれている。
パステト「あの部屋です」

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