破邪の拳 ~ニート武道家の地下格闘技トーナメント~

武智城太郎

第二二話 決戦(脚本)

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武智城太郎

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〇更衣室
  朱雀の選手控室──
斎藤亮介「所長、ダイジョーブすっか? すごい汗ですよ」
斎藤亮介「やっぱ、ヤバイっすよ。これ以上続けんのは・・・」
根岸学「問題ない! あと一試合だ。やれ!」
斎藤亮介「は、はあ・・・」
  ウルトラ・ステロイドを注射されたとたん──
  全身の筋肉が強靭にパンプアップする。
根岸学「グゥボォバアアアァァッッッーー!!」
斎藤亮介「もしかして、決勝で最終形態っすっか・・・?」
根岸学「当然だ。おれのウルトラ・ステロイドの真の力をやっと発揮できる」
根岸学「あいつならば、その実験台にちょうどいい!」

〇劇場の座席
リングアナ「これより、〈天下一闘技会〉決勝戦を行います!!」
「オオオーーッッ!!」
リングアナ「いよいよ最後の試合! 本大会にふさわしい実力者同士の対戦となりました!」

〇闘技場
リングアナ「決勝用のド派手な演出で入場してきた二人が、闘技場の中央で相まみえます!」
リングアナ「おおっと!!  火花を散らすような睨み合いだーっ!!」

〇劇場の座席
リングアナ「両選手とも、さすがに気合いが入っています!」
斎藤亮介「所長・・・」
木下「青馬、破邪神拳の真価が問われるのはこれからだぞ」
リングアナ「破邪神拳の青馬選手と流派不明のザ・ワン選手──」
リングアナ「勝敗の行方はまったく予想がつきません!」

〇闘技場
青馬文彦「おまえを倒して、破邪神拳こそ世界最強であることを証明する!」
根岸学「片腹痛い! 貴様なぞ、おれの敵ではない!」
青馬文彦「また10年前のように惨めに負かしてやる。 この骨皮筋右衛門め!」
根岸学「な、なにを~~!!」
ミスター小林「両者とも、全力で闘うように!」
リングアナ「天下一の格闘家を決める闘い!! ついに始まりました!!」
  ブオーーンッ!!
リングアナ「青馬選手、ザ・ワン選手の猛攻の前に早くも劣勢です!」
青馬文彦(体験したことのない剛腕だ! だが感情的になりすぎているせいで、空振りも目立つ)
青馬文彦(試合開始前の挑発が、功を奏した)
青馬文彦「今だ!!」
  文彦は一瞬の隙を突いて、〈破邪首折り落とし〉を食らわす。
リングアナ「青馬選手のジャンピング・ネックブリーカー・ドロップで、ザ・ワン選手、後頭部を地面に強打ーっ!!」
  間髪入れず、文彦はザ・ワンの右腕をつかみ──
リングアナ「おおっと、腕ひしぎ十字固が完全に極まったーっ!!」
青馬文彦「この技は絶対に脱出できん! おれの勝ちだ!」
  そのとき──
青馬文彦「なに!?」
リングアナ「今のは何でしょうか!? ザ・ワン選手の体が突然サイズアップしたように見えましたが・・・?」
リングアナ「ザ・ワン選手、完全に極められている右腕を力まかせに曲げていく!!」
青馬文彦「パワーがさらに増して・・・!!」
リングアナ「ザ・ワン選手、ついに腕ひしぎから脱出したーっ!!」
  返す刀で、解放された右腕の裏拳で文彦のアゴを殴る。
青馬文彦「ぐっ!!」
  ザ・ワンはゆっくりと立ちあがると──

〇劇場の座席
リングアナ「なんだこれはーっ!? 全身の筋肉が、またさらに二回りも膨張したーっ!!」
リングアナ「ザ・ワン選手が、人間とは思えない肉塊のマッチョ怪物と化したぞー!!」
斎藤亮介「最終形態・・・!! ヤベェよ!!」

〇闘技場
  ザ・ワンは、朦朧としている文彦の道着を片手でつかむと──
  グルグルと回転させて加速をつけてから、真上に放り投げる。

〇黄色(ディープ)

〇闘技場
  文彦は天井のライトに激突してから、地面に落下する。
青馬文彦「うう・・・!!」
根岸学「グヴァハハハハッ!」

〇劇場の座席
リングアナ「青馬選手、全身を強打!! もはやここまでか!!」
リングアナ「情報によりますと、ザ・ワン選手は自家製ステロイドの常用者のようです」
リングアナ「しかし本大会ではドーピングさえ違反ではありません!」
「・・・・・・」
  もはやこの程度のことでは、誰も驚かなくなっている。

〇闘技場
リングアナ「ザ・ワン選手、倒れている青馬選手に近づいて行きます」
青馬文彦「破邪神拳の名誉のため、薬漬けの化け物なんかに負けるわけにはいかない!!」
  文彦は立ちあがると、道着の内ポケットから手袋を取り出して両手にはめる。
青馬文彦「今こそ最終奥義を使うときだ!!」
  文彦は、掌を道着に擦りつけるようにして、両腕を激しく上下に動かしはじめる。
  ザラザラザラ!
  
  ザラザラザラ!
リングアナ「青馬選手のこの不可解な動きはなんでしょうか? 技の型でしょうか?」
リングアナ「ザ・ワン選手も異変を感じたのか、立ち止まって不可解そうに見つめています」
青馬文彦「筋肉ダルマめ! ここまでだ!」
  ザラザラザラ!
  
  ザラザラザラ!
  道着がパチパチと音を立て、髪の毛が逆立ってくる。
青馬文彦「破邪雷神拳!!」
  渾身の気合いを込めて、正拳突きを繰り出す。
青馬文彦「やった!」

〇劇場の座席
リングアナ「なんだ今のはーっ!?」
リングアナ「静電気の放電現象のように見えましたが、あれも破邪神拳の技なのでしょうかーっ!?」

〇闘技場
根岸学「・・・?」
  だがザ・ワンは、ポカンと無傷で立っている。
青馬文彦「・・・効いてない? まだ技が不完全だったのか!?」
青馬文彦「なぜだ! なぜなんだっ!?」
リングアナ「ザ・ワン選手、猛ダッシュで青馬選手に突進していくーっ!!」
リングアナ「肉壁のようなアックスボンバー!!」
リングアナ「青馬選手、まともに食らってしまったー!!」
  カンカン! カンカン! カーン! カーン!!

〇劇場の座席
リングアナ「けっちゃーーく! ザ・ワン選手の優勝です!!」
リングアナ「歴史に残る名勝負!」
リングアナ「伝統の〈天下一闘技会〉にふさわしい幕切れですっ!!」
実相寺嚴三郎「グレート!! アメージング!!」

〇闘技場
根岸学「終わった・・・!」
根岸学「何もかもな・・・」
  だが滝のような大汗と病的に荒い息が止まらない。
  さらには身体のあちこちの筋肉が、ボコボコと異常な陥没をくり返していた──。

〇黒
  次回予告
  
  第二三話 完成
  
        乞うご期待!!

次のエピソード:第二三話 完成

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