妹のメイド1(脚本)
〇牢獄
錬金術師 アダムズ「クククッ」
錬金術師 アダムズ「本当に、 実験体になってくれるっていうのかい?」
エルマハルト「・・・はい」
錬金術師 アダムズ「彼女を助けるためとはいえ、 中々できることじゃないよ。クククッ」
錬金術師 アダムズ「行くよ──」
「・・・っ!」
──レイン
これで君を、助けさせてくれるよな?
〇王妃謁見の間
昨日まで貴族の令嬢だったレイン
でも今日からは・・・・・・
レイン「初めまして。 メイドとして働くことになりました レイン・アプソロンです」
「あの子、昨日まで貴族の令嬢だったんですって?」
「うわあ。かわいそう」
「あの髪と瞳を見て。鴉みたいに真っ黒」
「本当にかわいそう。くすくす」
しかもね
あの子はなんと
アルシェビエタ「ようこそ、お姉さま! お待ちしていましたわ!」
レイン「アルシェビエタ・・・・・・さま」
「奥さまの姉君なんですって!」
「ええ、じゃあ、妹のメイドになるの!? あの子!」
アルシェビエタ「ちょっとそこ! さっきからうるさいわよ」
アルシェビエタ「ほんっとにこの家、 使えないメイドばっかりで困っちゃう」
レイン「・・・・・・・・・・・・」
アルシェビエタ「でも、 お姉さまが来てくれたからもう大丈夫ね!」
アルシェビエタ「さっそくだけど、 結婚式の準備を手伝ってほしいの」
レイン「はい・・・アルシェビエタさま」
レイン「仕方がないわ お父さまの命令は絶対だもの」
レイン「それに、もしメイドを拒否したら」
レイン「お義母さまが・・・」
義母「嫌なら教会に出家してもらうわよ」
義母「教会が崇める源竜さまはね」
義母「その虫みたいに黒い髪と瞳の女を たいそう好むそうよ?」
義母「きっと栄誉ある生贄に選ばれてしまうでしょうね!」
義母「うふふ」
レイン「大丈夫」
レイン「心を殺せば何も感じないわ」
〇華やかな裏庭
アルシェビエタ「あっ!!!」
アルシェビエタ「エルマハルトさまだわ!!!!」
エルマハルト「ただいま、アルシェ」
アルシェビエタ「お帰りなさい!」
アルシェビエタ「王国騎士のお仕事はどうなさったの?」
エルマハルトの首に向けて飛びつくアルシェビエタ
少しよろめきながら彼は妹を抱える
エルマハルト「休暇をもらった」
エルマハルト「たまには顔を見せに来いって、 親がうるさいからな」
ふっと笑って、小柄な体を大事そうに降ろした
アルシェビエタ「もう、私に会いたかったって、素直に言えばいいじゃない」
レイン(こんなところで抱きあわなくても・・・・・・)
どうやらアルシェビエタは『ある事実』を綺麗さっぱり忘れているようだ
エルマハルト「ん・・・・・・? 君は?」
エルマハルト「・・・・・・レイン?」
エルマハルト「どうした うちのメイド服を着て何をしているんだ?」
レイン「え・・・・・・、どうしてって」
レイン(まさか、私がメイドになったの知らないの?)
アルシェビエタ「あら、エルマハルトさま聞いてないの?」
アルシェビエタ「お姉さまはうちのメイドになるのよ」
エルマハルト「メイド・・・? レインが? どうして」
アルシェビエタ「お姉さまは縁談がなくなっちゃったの」
アルシェビエタ「行き場所がなくてかわいそうだから、 うちに来てもらったのよ」
エルマハルト「・・・・・・縁談がなくなった?」
レイン(自分から婚約を破棄したのに、 一体何を驚いているのかしら?)
そう、二人はかつて婚約していた
ところがいつの頃からか
レインに隠れて彼は妹と会うようになり
式の直前で、
レインは婚約破棄を言い渡されたのだった
レイン「それでは、失礼いたします」
エルマハルト「待て! 君は本当にそれでいいのか」
エルマハルト「誇りはないのか?」
レイン「・・・・・・ ・・・・・・」
エルマハルト「なあ、こっちを見て話せって」
レイン「あ、ごめんなさ・・・・・・」
肩に伸びてきた手を思わず振り払ってしまった
エルマハルト「・・・・・・」
エルマハルト「本当に、メイドでいいんだな」
レイン「はい」
エルマハルト「そうか・・・・・・」
エルマハルト「なんか、気持ち悪いな」
アルシェビエタ「あら、エルマハルトさま?どこに行くの?待って!」
アルシェビエタ「お姉さま!」
アルシェビエタ「エルマハルトさまに暴力を奮ったこと許さないから!」
アルシェビエタ「後でお仕置きだからね!」
レイン「はい」
アルシェビエタ「水輝石で水責めか、火踊石で火炙りか・・・」
アルシェビエタ「どちらがいいか考えておいて!」
レイン(今の二人のやりとり・・・)
レイン(最高だったわ)
レイン(エルマのことを嫌いになるために、)
レイン(私はここでメイドになったんだから)
レイン(どんどんイチャイチャしてもらわないと)
レイン(・・・・・・)
レイン(もし婚約破棄されなかったら、)
レイン(あんな風に『おかえり』って言っていたの 私だったのかしら・・・)
レイン(・・・・・・)
そんな風に想像することは
きっとすぐになくなる
〇黒背景
ところがその日を境に、
アルシェビエタの機嫌はどんどん悪くなっていった
噂では、二人は夜中に口論をしていたらしい
『お仕置き』と称したレインへの折檻は
日に日に激しくなっていく
レイン「・・・・・・っ!」
〇華やかな裏庭
アルシェビエタ「お姉さま!ちょっと来て!」
アルシェビエタ「今日は遠出しましょう!」
レイン「遠出・・・ですか?」
レイン(変だわ)
レイン(恐ろしいほど、機嫌がいいわ)
アルシェビエタ「そう、遠くに行くの」
〇雲の上
アルシェビエタ「空飛ぶ馬車に乗って」
アルシェビエタ「精霊王源竜を見に行くの!」
レイン「・・・・・・っ!」
レイン(黒髪黒瞳の娘を贄とする源竜に・・・?)
レイン(アルシェビエタは・・・)
レイン(私をどうする気なの・・・?)
つづく
これからって時に終わったので続きが気になります……!レインは良い子。どうにか幸せになってほしい。
オッサンですが主人公に感情移入してるところもありますので続きが見たいです(^^;)タイトルも切ないですね
アルシェビエタが、メイドになったレインを「お姉さま」と無邪気に呼びながら折檻するのが、切ないです。
きっと、縁談が駄目になったのも理由がありそうですね。レインには幸せになってほしいけど、妹の彼氏は嫌だと思ってしまいました(笑)白馬の王子、助けに来て〜!続き楽しみにしています。