第0話 その猫は君と踊る(脚本)
〇地球
〇地球
〇宇宙空間
〇宇宙空間
・・・
カ
エ
リ
タ
イ
〇黒
〇塔のある都市外観
「うっわぁぁ! 爆発した!!」
〇男の子の一人部屋
「ジン、何騒いでるんだ?」
ジン「あっ、兄さん 今帰ってきたの?」
兄さん「ああ それよりどうしたんだ? 大きな声出して」
ジン「聞いてくれよ! やっと街が発展したのに反乱起きてさぁ また最初からやり直しだよ」
兄さん「なんだ、ゲームやってたのか」
ジン「もうちょっとでクリアだったのに」
兄さん「ハハハ そうキレるなって お土産持ってきたからさ」
ジン「お土産?」
兄さん「ほら」
ジン「卵? 今日の晩飯に食えって?」
兄さん「おいおい 食べちゃダメだよ これは貴重な卵なんだ」
ジン「高級鶏の卵? でも食べないと腐っちゃうよ」
兄さん「違う違う 温めて孵化させるんだ」
ジン「えーと・・・ 育てて卵を産ませて 増やしてから食べろって?」
兄さん「そうじゃなくて これはうちの会社で開発した生物の卵でね 面白い物が生まれるかもしれないんだ」
ジン「面白い物? 何の卵なの?」
兄さん「それは孵化してからのお楽しみさ」
兄さん「孵化に少し時間はかかるかもしれないが 気長に諦めないで待っていてくれ」
ジン「分かったよ」
兄さん「実は・・・また出張があって 今度は暫く帰って来れそうになくてね」
ジン「また遠くに行っちゃうの?」
兄さん「ごめんな 出張から帰ってきたら暫く家にいられるから それまで待っててくれないか」
ジン「・・・」
ジン「わかった まってる」
兄さん「なるべく早く帰るようにするから いい子にして待ってるんだぞ」
ジン「うん」
兄さん「卵を頼んだよ」
〇モヤモヤ
それが兄さんとの最後の会話になるなんて
思いもしなかった・・・
〇男の子の一人部屋
ジン「兄さんが帰ってこないってどういう事?」
親戚の叔父「落ち着いて聞いてくれ 君の兄さんは事故で・・・」
ジン「ウソだ! そんな事ない 兄さんは仕事が終わったらきっと帰ってくる 約束したんだ」
親戚の叔父「ジン・・・」
〇黒
〇L字キッチン
ジン「兄さんは今日も帰ってこない」
ジン「・・・兄さんは死んでない 生きてる、絶対」
ジン「元気出さなきゃな 卵かけご飯でも食べて・・・」
ジン「いつもよりしょっぱいや・・・」
ジン「・・・」
ヒドイ・・・ヒドイ・・・
ジン「え?」
タ ベ ラ レ タ ァ
ジン「幻聴かな?」
〇黒
10年後・・・
〇怪しいオフィスビル
〇オフィスの廊下
〇オフィスの廊下
侵入者発見!! 侵入者発見!!
総員は直ちに警戒を強化せよ!
繰り返す──
〇オフィスの廊下
「アーア ミツカッチャッタ」
「見つかっちゃった、じゃないだろ! お前何であんなとこで 怪しげなスイッチ押すんだよぉ」
「ネコチャンハ 『コレヒヒン』ッテヤツ オウセイ ナンダッ!」
「それを言うなら『好奇心』! ・・・はぁ とりあえずここから脱出するぞ」
「ニャ、ニャ! ネコチャンニ マカセテ カワイイ ネコチャンニ」
「今度は絶対スイッチとか押すなよ? 絶対だぞ?」
「オマカセ ニャ! カラダ カシテ ニャ」
「大丈夫かなぁ・・・」
警備員「侵入者を発見した! 至急応援を頼む!」
「やっべぇ! 見つかった」
「オイカケッコ? アソボ、アソボ!」
「遊びじゃねーって ・・・くそっ この場は任せる、捕まるなよ!」
「ニャニャニャ!!」
警備員「逃すか!」
〇黒
「ネコチャン アタラナーイ! ムテキ ムテキ」
ネコチャン「ニャッハー!!」
ネコチャン「オニゴッコー!」
〇黒
〇オフィスの廊下
警備員「なっ!? あれは・・・」
〇黒
〇オフィスの廊下
ネコチャン「・・・」
ネコチャン「マヨッタ!」
ネコチャン?「お、お前ぇ! ここ何処だよ 入ってきた場所わかるだろ?」
ネコチャン「ワカンナイ!」
ネコチャン?「マジか・・・ もう身体返せよ! 追手も巻いたしここからは僕が」
ネコチャン「ヤダ!」
ネコチャン?「おい!!」
ネコチャン「マダ アソブ!」
〇会議室のドア
ネコチャン「ドア! タブン ココ!」
ネコチャン?「おい! 勝手な行動を・・・」
ネコチャン「ポチット、ナ!」
ネコチャン?「何を押しているんだ! とりあえず部屋の中に・・・!!」
ネコチャン「ニャア?」
〇諜報機関
科学者らしき女性「だ、誰!? ・・・まさかエッグズー?」
「やっべぇ とりあえずクソネコ! 身体返せ」
「ワカッタ ジン カエス」
〇会議室のドア
〇諜報機関
ジン「え、えーっと・・・ 僕達、いや僕はアヤシイモノではなくって ちょっと道に迷っただけで」
ジン(流石に怪しまれるか)
科学者らしき女性「・・・もしかして、ジン君? ギブソン博士の弟の」
ジン「え? なんで僕の事知って・・・」
科学者らしき女性「あなたの事は博士から聞いているわ 中に入って」
ジン「え? あ、はい」
〇諜報機関
マグノリア「私はマグノリア あなたのお兄さんの元部下」
ジン「兄さんの?」
マグノリア「まさか侵入者が彼の弟クンだったなんてね 安心して 通報なんてしないから」
ジン「・・・」
マグノリア「あなたがここに来たという事は ギブソン博士を助けに来たのでしょう?」
ジン「兄さんは無事なのか!?」
マグノリア「ええ ここの地下に幽閉されている」
ジン「兄さん・・・」
マグノリア「ねぇ、さっきのエッグズーは? あの子も部屋に入れてあげて」
ジン「エッグズー?」
マグノリア「とぼけなくていいのよ あの子が博士から託された卵でしょう?」
ネコチャン「ネコチャン ヨンダ?」
ジン「わわっ!? こら、出てくるなよ」
マグノリア「私と博士はその子達の研究をしていたの 隠さなくてもいいわ あなたが孵化させたのね」
ジン「え、えーっと・・・」
マグノリア「廊下にいるの?」
ネコチャン「タベラレタ!」
マグノリア「え?」
ジン「えーっと・・・ あの卵は僕が食べまして」
マグノリア「えっ!?」
ネコチャン「ジン ニ ネコチャン タベラレタァ!!」
マグノリア「それって」
ジン「あっ、ちょっとまてって ・・・ カラダ、カシテ」
〇不気味
ネコチャン「カワイイ ネコチャン!」
〇諜報機関
マグノリア「一体あなたは・・・」
ネコチャン「ジン ニ タベラレタ カラ カラダ カリテル ニャ」
マグノリア「どういう事? 卵を孵化させたんじゃないの?」
ジン「TKG(卵かけご飯)にして 食べました!」
マグノリア「はぁ!? 貴重な卵だったのよあれは」
ネコチャン「ネコチャン ジン ト イッショ フタリデヒトツ ナッタ!」
ジン「卵美味かったです」
マグノリア「はぁ・・・」
ネコチャン「ネコチャン カナシイ」
マグノリア「それでエッグズーと融合してしまったのね」
ネコチャン「ネコチャン アキタァ ジン コウタイ」
ジン「そのエッグズーってなんなんですか 兄さんの失踪に何か関係が?」
マグノリア「エッグズーはね・・・」
〇魔法陣
私達は宇宙から来たとされる生物を発見し
研究していたわ
ただ、その生物はすぐに死んでしまった
そこで残された遺伝子を元に
復元できないか実験する事になったわ
色々な生物に遺伝子を組み込んで
様々な生物に試した
その中で生き残った生物が卵を産んだの
それが『エッグズー』よ
卵から生まれた彼らは
生まれてすぐ目にした物を親と慕い
従順に育つの
彼らは食べた物を力に変える能力もあった
鉄を喰わせたら硬く
人を喰わせたら知識を・・・
そんな彼らを軍事利用しようと
上層部は考えているようなの
〇諜報機関
ジン「軍事利用だって!?」
マグノリア「博士はそれだけはさせないように 最後まで反対していたわ だからきっと幽閉されて・・・」
ジン「・・・」
マグノリア「ところで、どうやってあなたはここへ? このビルの警備は厳重だったはず そのエッグズーの力?」
ジン「それは・・・」
〇男の子の一人部屋
ジン「ただいまー!」
ジン「・・・」
ジン「あれから5年・・・ もういないのに何を期待しているんだ」
???「オカ・・・エリ?」
ジン「うあ? なんか俺じゃない声が俺の中から!?」
???「コトバ・・・オボエタ ガッコウ」
ジン「幻聴が聞こえるなんて疲れてるのかな」
ジン「可愛いねこちゃん動画でも見て 落ち着くか・・・」
〇ポップ2
カワイイ・ニャ・ンコタン「良い子のみんな! 今日も疲れてる? そんな時はネコチャン体操だよぉ」
カワイイ・ニャ・ンコタン「ニャ、ニャ、ニャンコターン ニャンニャニャン ネコネコネコチャーン」
〇男の子の一人部屋
ジン「あーネコチャンかわいい 癒されるなあ」
???「ニャ?」
ジン「まだ幻聴が聞こえる・・・」
???「チガウ・・・ ネコチャン カワイイネコチャン」
ジン「さっきよりも幻聴がはっきりと!?」
???「ネコチャン ナレルヨ カラダ カシテ」
ジン「え?」
ネコチャン「カワイイ ネコチャン」
ジン「うわあ! 一体これって・・・」
ネコチャン「ネコチャン カリル タノシイ」
ネコチャン「コレ ナニ」
ジン「わあ! 勝手にPCいじるな!! ・・・ん? なんかメールが来てる」
〇サイバー空間
君の兄さんは幽閉されている
真実を知りたくば彼の会社を調べるがいい
〇男の子の一人部屋
ジン「これって一体どういう・・・ 兄さんは生きているのか」
ネコチャン「モジ ヨメナイ ムズカシ」
ジン「身体はおかしくなるし幻聴聞こえるし 兄さんは幽閉されてるとか もうわっかんねぇ」
ジン「・・・」
ジン(もしかして兄さんは 僕に助けを求めているのか)
ジン(ひょっとして・・・ 兄さんから貰った卵で 僕にとんでもない力が宿ったんじゃ)
ジン「おい! 僕の中の化け物! お前は何ができるんだ?」
ネコチャン「バケモノ チガウ ネコチャン! ネコチャン ハヤイハヤーイ」
ジン「建物に侵入できたりは?」
ネコチャン「ソロリソローリ デキル アトハ オドル」
ジン「あんま強くなさそうだけど・・・」
ネコチャン「ニャ」
ジン「僕が強くなればいいか 兄さんを助け出せるくらいに!」
〇黒
〇諜報機関
ジン「それでやっとここへ辿り着いたんです こいつの力で気付かれずに侵入して」
ジン(こいつが変なスイッチ押さなきゃ もっと楽だったんだけどな)
マグノリア「そうね、エッグズーの力があれば 博士を助けられるかもしれないわ」
ジン「兄さんに会いたい」
マグノリア「でも他に何か能力は無いの? 博士が託したくらいだから もっと特殊な能力ありそうだけど」
ジン「こいつは早く移動したりくらいしかできない それでも兄さんを助け出せるなら これ以上力は求めないよ」
マグノリア「そっか・・・ ではこれを持っていって」
ジン「これは?」
マグノリア「カードキーよ これで博士の幽閉されている部屋に 入る事ができるはず」
ジン「ありがとう」
マグノリア「B12フロアに博士がいるはずよ それと・・・」
警備員「マグノリア博士 この辺で侵入者が・・・」
ジン「やっべ!」
警備員「お前は誰だ!!」
マグノリア「・・・」
警備員「待て!! 逃がさないぞ」
マグノリア「ジン君・・・」
〇オフィスの部屋の前
ネコチャン「オイカケッコ?」
ジン「頼む!」
ネコチャン「ハーイ」
〇黒
〇オフィスの部屋の前
ジン「なんとか逃げ切ったか」
ネコチャン「ニャ」
力士のエッグズー「待て」
錻力のエッグズー「この先には行かせない」
ジン「こいつらもしやエッグズー? おい、なんとか切り抜けるぞ」
ネコチャン「ネコパーンチ!」
力士のエッグズー「効かぬわぁ!」
錻力のエッグズー「我が鉄杭を喰らえ!」
〇黒
ネコチャン「イターイ!」
ジン「あいつら、動きは遅いぞ 次の攻撃が来る前に足を狙え!」
ネコチャン「ニャ!」
〇オフィスの部屋の前
力士のエッグズー「グォッ!」
力士のエッグズー「不覚・・・」
ネコチャン「イタカッタ ニャ!」
錻力のエッグズー「くっ・・・速い!」
ネコチャン「ニャ!!」
ジン「今のうちに急げ!」
ネコチャン「オシリ イタイニャ」
ジン「僕だって痛い けど少し我慢だ!」
ネコチャン「ニャ」
〇ビルの地下通路
ネコチャン「ツカレタァ」
ジン「兄さんがいるところまで あと少し・・・」
〇研究施設の廊下(シャッターあり)
〇研究施設の一室
兄さん「君は・・・?」
ジン「助けに来たよ兄さん」
兄さん「ジンか、大きくなったね」
ジン「兄さんは老けたね」
兄さん「はは・・・」
ジン「っと 急いでここから逃げよう!」
兄さん「しかしここの警備は・・・」
ジン「大丈夫」
ネコチャン「ネコチャン マカセテ」
ジン「詳しい事は後で説明する 掴まって!」
ネコチャン「イクヨ!」
〇黒
〇ビルの地下通路
ネコチャン「ツカマッテル ニャ」
兄さん「あ、ああ・・・」
兄さん(エッグズーの力か・・・)
〇ビルの地下通路
ジン「もう少しで出口・・・」
ジン「何か、いる!」
「侵入者っていうのはお前さんかい」
ジン「・・・!」
髑髏のエッグズー「お前、なんか妙な気配だなぁ」
ジン「・・・」
髑髏のエッグズー「フンッ!!」
ジン「兄さん、離れてて!」
髑髏のエッグズー「お前の力は攻撃をかわすだけか」
ネコチャン「ニャァ・・・ モウ ヘロヘロ」
ジン「くっ」
ジン(流石にずっと走っていたから 僕もネコも体力が限界だ でも・・・)
ジン「僕が兄さんを助けるんだ!!」
〇ビルの地下通路
髑髏のエッグズー「何っ!?」
ジン「絶対・・・兄さんを助けるんだ」
髑髏のエッグズー(まだ弱々しいが 覚醒しつつあるのか)
髑髏のエッグズー「・・・行け」
ジン「え?」
髑髏のエッグズー「今は力試しをしただけさ まだお前さんの敵じゃねぇ」
ジン「・・・」
髑髏のエッグズー「ほらほら早く逃げなぁ」
ジン「兄さん、行こう」
髑髏のエッグズー「今はまだ、な」
〇怪しいオフィスビル
マグノリア「こっちよ! 早く乗って」
兄さん「マグノリア!」
ジン「え?」
マグノリア「私もあなた達について行くわ 博士と私は一心同体なんだから」
ジン「えぇ!?」
〇SHIBUYA SKY
髑髏のエッグズー「これで良かったんですか?」
「鼠は暫く泳がせておけ それより計画はどうなっている?」
髑髏のエッグズー「順調に進んでいます あと半年で実行に移せるかと」
「そうか」
髑髏のエッグズー「では私はこれで」
「・・・」
〇地球
人と異形が予期せぬ出来事をきっかけに共存する物語はよくありますが、食べてしまったと言う発想は面白いと思いました。
また、バトルシーンで左右に攻撃をかわす表現も上手かったです。
「食べるんかーい!」というツッコミは置いといて、お腹の中から語りかけてる所といい、バディの関係性が新鮮でした!
貴重な卵を卵かけご飯にして食べた結果がこれですかw
ニャンともぐらっぱさんらしいアブノーマルな展開。
タップノベルでここまで猫の俊敏さを演出できることに感動モノ。