プロローグ(脚本)
〇タワーマンション
・・・一生懸命働いてきた。やっと手にしたマイホーム。引っ越しが無事に終わり、新居で迎える初めての夜。
私は大堀あすか。あと1ヶ月で32歳の誕生日を迎える。30歳を超えてからは歳を重ねることへの抵抗は一切なくなった。
都内のIT企業で働きながら、毎月コツコツと貯めてきた軍資金を元手についに夢のタワーマンションの一室を購入した。
これからの時代、いくつだろうとどこにいようと自分のことは自分でできる大人でいたい。
新居での生活に心を躍らせつつ、外観を見るとよく働いてきたなと自分のことを褒めたくなる。
〇マンションの共用廊下
──35年ローン。この家を終のすみかにするつもりで購入した。親には心配されたけれど、私の人生は私が決める。
1年前に当時付き合っていた彼氏と別れてから結婚に対する熱意も消えていた。私は仕事と家と推しさえいれば幸せだ。
今日はいつもより少しだけ奮発して買ったおつまみとビールで引っ越し祝いをしよう。
何より今日は推しのドラマが初回放送。新しく買ったソファとテレビで推しを堪能したい。これが私が目指したタワマン生活だ。
・・・え!?家の前に誰か座ってる!?
星川怜「気持ち悪い・・・」
大堀あすか「!!!!!!!!!?!!」
星川怜「まじで気持ち悪い・・・・・・・・・」
大堀あすか「あの・・・大丈夫ですか?」
星川怜「今日初日なのに・・・」
大堀あすか「はい?あの、ここ家なんですが、ご自宅帰れます?」
星川怜「・・・大丈夫なんで・・・ほんとに・・・」
大堀あすか「あ、そうですか。わかりました。じゃあおやすみなさい(いや、大丈夫っていうか、ここ家の前だからね・・・・・・?)」
〇シックなリビング
大堀あすか「流石にびっくしりたけれど、大丈夫かしら・・・それにしても、ひどく酔っ払って廊下で寝ちゃうなんて・・・」
正直初日から不穏だなと思いつつ、お酒やつまみを用意しているとあっという間にドラマの放送開始時間になった。
大堀あすか「やっぱり、れいくんはかっこいいな・・・。お気に入りのものに囲まれて新居でみるドラマ、至福の時間だわ」
大堀あすか「それにしても、隣の人なんだったんだろう・・・明日の朝までいたりしないよね・・・」
〇マンションの共用廊下
──翌朝・・・
ドアを開けると、昨日の人はさすがにいなかった。お隣さんなのだろうか。頻繁にそういうことが起こると少し不安だな・・・
星川怜「──あ、昨日はどうも」
大堀あすか「!!!!!!!!!!!?!!」
・・・昨日の人?え?誰かにくんに似ている・・・誰だろう・・・
星川怜「昨晩はご迷惑おかけしました。あの・・・ひとつお願いがあって・・・」
大堀あすか「なんですか・・・?」
星川怜「もしも、また僕に昨日のようなことがあっても話しかけないでほしいんです」
大堀あすか「・・・はあ・・・わ、わかりました(だとしたら家の前にいないでよね・・・)」
星川怜「ありがとうございます。じゃあそういうことで」
大堀あすか「話しかけないでってどういうこと!?そもそも人の家の前にいること自体おかしいでしょ。それにしても誰かに似ているのよね・・・」
大堀あすか「あ・・・!!私もこんなこと考えている時間なかった。早く仕事行かなくちゃ!!」
──今思い出しても、なぜあの時彼が私に話しかけないでほしいといったのかはわからない。
それでも彼との最初の思い出となったこの日を私は一生忘れることはないと思う。
夢のタワマン生活がスタートし、どんな日常が繰り広げられるのかと思いきや、まさかのイケメン!話しかけないで、という言葉の真意が気になりますね!
彼氏と別れて結婚も諦めた。そうなればタワマンと仕事の行ったり来たりでしょうね。平凡な生活の始まりかと思えば、そうは問屋が卸さない展開が始まりそうな気がしてきました。
話しかけないで、なんて言われたら余計謎すぎて正体が気になっちゃいます。誰かに似てる、、?!誰なのでしょう。新しいタワマンといい、何かが起こりそうな予感に胸が高鳴ります。