これは動悸(脚本)
〇川沿いの公園
ケイ「おはよう、早いねぇ。 まだ約束の時間十分前だよ」
ケイ「え、俺の方が早いって?」
ケイ「そりゃそうだよ、俺が映画館行きたいって誘ったんだもん」
ケイ「・・・・・・チケット代をまだ払ってない?」
ケイ「いいよ、いいよ。 ペアチケットを買わなきゃ特典のキーホルダーが貰えなかったんだ」
ケイ「別の時間を指定できるなら一人で二回見に行けば良いけど、これはそうできないから」
ケイ「かといって好きな作品に空席を作るのも嫌だからね」
ケイ「そのチケットはおまけみたいなもんだよ」
ケイ「だからむしろ貴重な時間を貰えて感謝してる」
ケイ「立ち話もなんだし歩きながら話そうか」
〇街中の道路
ケイ「ところで・・・・・・」
ケイ「映画館に行く理由ってなんだと思う?」
ケイ「いや、大した話じゃないさ」
ケイ「今時サブスクリプションサービスで名作はスナック感覚で見放題」
ケイ「真夜中でも見ていいし、寝転がりながら見てもいい」
ケイ「台詞を聞き逃したら戻す事も出来る」
ケイ「そんな中映画館に行く理由ってなんだろねって」
ケイ「一回のチケットはそこそこするし、時間も指定されている」
ケイ「万が一面白くない作品でもすぐに止められないし、むしろ勿体ないからと頑張って最後まで見ちゃうかも」
ケイ「・・・・・・『映画館は嫌いか』って?」
ケイ「いいや、むしろ俺は映画館が大好きだよ」
ケイ「家じゃ準備出来ない巨大なスクリーンで大音量のbgmを流すなんて最高の贅沢だ」
ケイ「最新作が見られるのも醍醐味だよね」
ケイ「新しいスマホでもスイーツでもそうだけど流行の最先端にいる感じがしていい」
ケイ「あと映画館に行くために都会に出るのも結構好きだな」
ケイ「勿論全てがそうという訳ではないけど、映画館周辺ってその地域では栄えているっていうイメージない?」
ケイ「近くのコンビニ行くくらいならジャージでいっかってなるけど、都会に行くとなるとオシャレしなきゃって思うんだ」
ケイ「せっかくオシャレしたら地元にはないカフェに行ったり、背伸びした店に入ってみたり・・・・・・」
ケイ「映画館単体のメリットではないけど、結果的にメリットだと思うな」
ケイ「最初の話と矛盾するかもしれないけどレジャー施設にしては手頃な値段っていうのも良い点だと思う」
ケイ「配信サービスと比べたら高いけど水族館とか遊園地に比べたら安いよね」
ケイ「なんだったらサービスデーに行けばもっとすごい!」
ケイ「・・・・・・ごめん、喋りすぎちゃった」
ケイ「オタク気質っていうのかな。 好きなことになると相手の返事を待たずに話しちゃうのは悪い癖だね」
ケイ「直さなきゃなぁ」
ケイ「え、別にいい?」
ケイ「へへ、そう言ってくれるとすごく嬉しい!」
〇映画館の入場口
ケイ「話しているうちに目的地に着いたね」
ケイ「ポップコーン買ってくるからちょっと待ってて!」
〇映画館のロビー
ケイ「・・・・・・」
ケイ「あとは・・・・・・」
ケイ「二時間君の隣に座る事が出来るのが映画館のメリットだよ」
ケイ「・・・・・・なんてね」
色々と語っているけど、どれも前置きにしかすぎずにラストの一言が本音なんだろうなーって思ってしまいますね。こういう伝え方も可愛いですね。
付き合い始めたばかりのカップルにとって、他のアトラクションより映画館って親密度がより高まるという感じがします。大画面、大音量でその感動や興奮を共有できる素晴らしいスペースですね。キザな彼の言葉がより彼女のモチベーションをあげたと思います!!
彼の本当の気持ちが可愛いですね、それが一番の目的だったんですね。ストーリーの展開が楽しくて最後まで集中して読ませて頂きまいた。