BPM120

うさぎ

読切(脚本)

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〇大きな木のある校舎
  大阪市立第三小学校
  俺は、春からここで教鞭を執ることになった。

〇教室
辻 楓真「で、ここが教室やろ〜」

〇学校の廊下
  縁もゆかりもないこの土地で教師になることを選んだ理由は──

〇体育館の中
辻 楓真「ここが体育館。始業式ここでするんやから ちゃんと覚えときや〜?」
吉田 悠斗「あっ、はい!」

〇渡り廊下
辻 楓真「まぁ、学校案内はこんなとこかな〜。 はいじゃあ吉田せんせぇ、なんか質問ある?」
吉田 悠斗「いえ、特には!すみません、お忙しいのに案内してもらって」
辻 楓真「ええよええよ〜。みんな東京から新任の先生が来るって浮足立ってたんよ。 案内させてもらうなんて光栄やわぁ」
吉田 悠斗「えっと、はい!よろしくお願いします!」
辻 楓真「もぉ固いわ〜。気楽にいこうや? 引っ越しも大変やったやろ。どう、新居」
吉田 悠斗「はい!近くに美味しいたこ焼き屋があるみたいで」
辻 楓真「えっ、どこどこ?」
吉田 悠斗「たこたこ丸って」
辻 楓真「あー!近くにあるんや。 ええね、僕もあそこ好きよ〜」
吉田 悠斗「そうなんですね。今日さっそく買って帰ります」
辻 楓真「うん、そうしぃ〜」
辻 楓真「てか、聞きたいことあるねんけど、質問してええ?」
吉田 悠斗「あ、はい」
辻 楓真「なんで大阪にしたん?生まれも大学もこっちちゃうやろ」
吉田 悠斗「えっと、それは・・・」
吉田 悠斗(大学でゲイばれして地元で教員になりにくくて。なんて言えるわけない)
辻 楓真「ま、ええわ」
  辻先生は保健室の前で立ち止まり、ドアの鍵を開けた。

〇保健室
辻 楓真「ここが僕の城〜。なんちゃって」
吉田 悠斗「えっ、あっ、はい。保健室の先生だったんですね」
吉田 悠斗(なるほど、だからこんな派手な格好して・・・)
辻 楓真「そうそう、カウンセラーもやっとるから他の学校にも行くけど、基本はここに常駐しとるよ」
辻 楓真「いつでも遊びに来てね?」
辻 楓真「でも、こんな可愛い子が来るおもてなかったから、ほんまラッキーやわ」
吉田 悠斗「えっ、かわいいって?」
辻 楓真「ん?吉田せんせぇは僕のタイプってこと~」
吉田 悠斗「えっ、あの、えっと」
吉田 悠斗「からかわないでください」
  学生時代の嫌な気持ちを思い出す。
  教員になるんだから生徒の模範となるように、気持ち悪い、子どもの前では言わないでね・・・
  平然とそんな言葉を投げかけられ、いつしか自分自身も隠すのが当たり前だと思ってきた
辻 楓真「からかってへんよ。一目惚れ、かな?」
吉田 悠斗「あの、俺・・・」
辻 楓真「男には興味ない?」
吉田 悠斗「えっと、教員がそういう発言をするのは良くないかと」
辻 楓真「えっ!今どきそんなん言う方が教育によろしくないわ~」
辻 楓真「せやろ?」
吉田 悠斗「うっ」
  たしかに。いじめや偏見をなくそうなんて教えておきながら自分はソレがバレることをビビっている。
  なんて学生時代の気まずい雰囲気を思い出していると、辻先生が顔を近づけてじっとこちらを見ていた。
吉田 悠斗「わっ、えっと、すみません。なんですか?」
辻 楓真「偏見はあかんよ?すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、又は社会的関係において、差別されないってね」
吉田 悠斗「・・・日本国憲法ですか?」
辻 楓真「そ。よう勉強しとるやーん。僕は十三条の方が好きやけど」
吉田 悠斗「すべて国民は、個人として尊重される」
吉田 悠斗「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大限尊重する」
辻 楓真「うん。一緒に幸せ追及しちゃう?」
  全てを見透かしているような目で見つめられて、ドキッとした。
  けど、きっとこのドキドキは恋なんかじゃない。
辻 楓真「ま、ええわ。 これから時間はたっぷりあるんやし、ゆっくり仲良うなろうな?」
吉田 悠斗「え、遠慮します!」
  保健室から立ち去ろうとしたらガッチリと肩を組まれ、また至近距離から見つめられる。
辻 楓真「ほな、とりあえずたこ焼き食べに行こかぁ~。 吉田せんせぇの新居も気になるし」
吉田 悠斗「えっ!?家に来るんですか?」
辻 楓真「はよ帰るで~」
  こちらの問いかけなど無視して、辻先生は俺の手首を掴んで歩き出した。
辻 楓真「うーん。心拍数早いね? これってドキドキしてくれてるってこと?」
吉田 悠斗「な!バカなこと言わないでくださいっ!」
  少しでも不安を減らそうと縁もゆかりない土地まできたのに、新生活へのドキドキが治まらない。

コメント

  • 新たな恋がはじまりそうなドキドキな予感がいっぱい詰まってますね。私も、今の時代人を好きになるのに性別なんて関係ないと思っています。全てのひとが偏見なく堂々とできるようになるといいですね。

  • 辻先生の距離の詰め方はずるいですね。ずるずると引き込んでくる感じで。ゲイを隠しての新生活での初日にこれは、、楽しいことになりそうですね。

  • 保健の先生が容赦なく話してて、彼もたじたじですね。笑
    でも、あんな風に迫られたらドキドキしちゃいますよ!
    きっと一緒に食べるたこ焼きはおいしいと思います!

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