彼と彼女のCINEMA

アシッドジャム

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〇電車の中
  バイトへ向かう電車の中にいた
彼女(ハァ)
彼女(憂鬱だ)
彼女(全部こいつのせいだ)
彼女(何で同じ電車なの!)
  先週、同じバイト先に入ってきた男と同じ電車に乗っていた
彼女(何で電車ガラガラなのに隣に座ってくるのよ!)
  この男とソリが合わないと彼女は思っていた
彼女(何で寝てんのよ!)
彼「着いたら起こせよ」
彼女「じゃねーよ!」
彼「着いたのか」
彼女(やば、 声出てた)
彼「ち、 まだ着いてねぇじゃん 起こすの早い」
彼女「知らないよ 自分で起きれば」
彼「へー そういうこと言っちゃうんだ」
彼女「何よ?」
彼「別に」
彼女(「別に」 言われてムカつくセリフ第五位をこいつが言うと一気に一位に急上昇だわ!)
彼女「言いたいことがあるなら言いなさいよ!」
彼「おまえ性格悪いよな」
彼女「誰がおまえよ! 誰が性格悪いのよ! あんたに言われたくないのよ!」
彼「ははは」
彼女「何笑ってんのよ!」
彼「別に」
彼女「また! 別にって言われるとムカつくからやめてよね!」
彼「はいはい」
彼女(ムカつく! 歳はタメでも私の方がバイトでは先輩なのよ!)
彼女(ちょっとイケメンだからって調子こいてんじゃないわよ!)
  突然、サングラスの男が目の前に現れた
彼女(何この人?)
敵1「ふ」
彼女(なんか笑ってるし、 いつからいたの?)
敵1「バグ発見 これから処理します」
彼女(は?何言ってんの? もしかして頭おかしい人? こわっ!)
  サングラスの男が銃を向けてくる
彼女(なになになに?)
彼女(いきなり知らない人から銃向けられるとか、あり得ないんですけど!)
彼女(おい!意地悪イケメン!なんとかしろよ!)
彼女(って 寝てるし!)
彼女「ちょっと起きて!」
彼「俺の女に手は出させねぇよ」
  彼女は彼に肩を抱き寄せられる
彼女(は?なになに?)
彼女「ほぎゃー!!!」

〇大水槽の前
  電車の中にいたはずの二人は水族館にいた
彼女「ここどこ?」
彼「ハハハ!」
彼女「なに笑ってんのよ!」
彼「ほぎゃーって何だよ?」
彼女「うるさい!」
監督1「カット!」
監督1「セリフ違うよ!」
彼女「ちゃんとやんなさいよ!」
彼「わりー」
彼女(はぁ 映画撮るからどうしても出演してくれって、先輩に土下座までされて)
彼女(仕方なく来てみれば)
彼女(どうして相手役が元彼なのよ)
彼女(マジでありえないし)
彼「驚くってシーンで「ほぎゃー」っていうのが」
彼「思い出したら笑っちまって」
彼「すいません、監督」
監督1「頼むよ〜二人とも」
監督1「一旦休憩しようか」
彼女「何で私まで怒られんのよ」
彼「まぁ機嫌なおせよ」
彼女「誰のせいよ!」
  ジュースを彼女の頬につける彼
彼女「冷た!」
彼「ハハハ」
彼「その驚いた時の目が好きなんだよな」
彼女「急に変なこと言うな!」
彼「これ好きだったろ?」
彼女(なんなのよ)
彼「この水族館懐かしいな」
彼女「覚えてたんだ?」
彼「ずっと好きだった女の子と初めて来た水族館だからな」
彼女「あ、あっそう」
彼「顔が赤いぞ?またいちごオレで冷やしてやろうか?」
彼女「ハァ!!! 照れてねぇーし!赤くねぇーし!」
彼「ハハハ! 相変わらずかわいいな」
彼女「うっさい!」
彼女(もうなんなのよ?)
  突然二人の目の前に大きな男が出現した
彼女(え? どこから出てきたこのおっさん?!)
敵2「HaHaHa! おっさんじゃないよ! ぼくまだ21歳だよ!」
彼女(え?年下! じゃなくて、わたし今、声に出してないよね? なになになに?どういこと?)
  サングラスの大男は大きな武器を二人に向けた
彼女(なになになに?!)
敵2「このデータは処理しま〜す」
彼「ここの思い出は忘れるわけにいかないんだよ」
彼女「え?」
  彼は彼女の手を握る
彼「やっぱ、俺おまえのことまだ好きだわ」
彼女(ってキュンじゃねぇ〜し!)
彼女「ほぎゃー!」

〇遊園地の広場
  一瞬で水族館から遊園地に移動していた
彼女「なになになに?」
彼「ハハハ」
彼女「なに笑ってんのよ!」
彼「だって、ほぎゃーって驚き方面白すぎでしょ?」
彼女「は?」
監督2「カットォォ!」
監督2「ダメでしょセリフ違うよ」
彼女「すいません。監督」
彼女(なんでわたしが、 間違えたのは彼でしょ?)
彼女(世界的に有名な監督の作品に出れるから頑張ろうと思ったのに)
彼女(よりにもよってなんで彼なの?)
彼女(共演が高校時代に片思いしていた彼だなんて、どういう偶然なのよ)
監督2「じゃあちょっと休憩入れようか!」
彼女「はい」
彼「おまえ変わらないな」
彼女「わたしのこと覚えてたの?」
彼「もちろん」
彼女「そっか」
彼女「高校の時は話せなかったから、ちょっと意外だな」
彼「一度だけ話したよ」
彼女「覚えてるの?」
彼「この遊園地覚えてる?」
彼女「うん」
彼女「高校の時の遠足で来たよね」
彼「これ」
  彼は彼女にジュースを差し出した
彼「好きだったろ?」
彼女「え?何で知ってるの?」
彼「何でって、あの観覧車で話してたからさ」
彼女(そう あの時、友達とはぐれたんだ)
彼女(携帯の電波も入らなくて、途方に暮れていたわたしを彼が観覧車に乗って上から友達探そうって言って一緒に探してくれたんだ)
彼女(でもテンパりすぎて、しょうもないことしか喋れなかったんだ)
彼女「あの時はありがとう」
彼「いや、俺が一緒に観覧車に乗りたかったんだ」
彼女「え?」
  突然、号泣するクマが現れた
彼女「え?なに?何で泣いてるの?っていうか着ぐるみじゃないの?」
彼女「何この音?」
敵3「このエリアデータは処理されます 残念!」
彼女「なんなのこのキャラ?見たことないし!」
  彼は彼女をお姫様抱っこした
彼女「ちょ、ちょっと!いきなりどうしたの?」
彼「キミがどこにいても絶対会いにいくよ」
彼女「え?」
彼女「なになになに! ほぎゃーっ!」

〇映画館の座席
  彼はかつて彼女と来た映画館にいた
超監督「キミのDNAから再現できたのはこのくらいが限界みたいだね」
超監督「これからどうする?」
彼「彼女を復元することはできないんだろ?」
超監督「残念ながら」
彼「それなら彼女を探しにいくよ」
超監督「人類が消えて千年以上経過してるんだよ?」
彼「ああ」
彼「でも俺の国の和歌って歌は千年以上も残ってたんだぜ?」
彼「約束したんだ」
彼「どこにいても会いにいくってさ」

コメント

  • 作者さんの描く作品は、デビッドリンチ映画の不条理感と時空を超えたSF感の両方を併せ持つハイブリッドな世界観のものが多いですね。本作品もジェットコースターの上り下りのごとく読者を翻弄しながら進行し、最後は主人公の切ない願いに着地するという鮮やかさ。いちごオレやバナナミルクといったアイテムの使い方も印象的でした。

  • 目まぐるしく変化するシーンと”ほぎゃー”、謎だらけの展開でしたが、驚きのラストに集結していく様子がすごく綺麗な物語ですね。

  • 最後の最後の展開にとても驚きましたよ。時空を超えても、人間の肉体を失っても、私達の想いはずっと記憶の中に残っているのかもしれませんね。ほぎゃーってついでちゃうおもしろい声もまた、彼女のチャームポイントのひとつだったんでしょうね。

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