出発の日3(脚本)
〇開けた高速道路
あれから、一時間近くたっただろうか?
俺は、予備用のヘルメットを被せ、リュックを背負ってもらった優愛を後ろに乗せ、元々あった装備を横にかけ直し
日もくれてきた頃、とある場所を目指してバイクを走らせていた。
宮崎 優愛(ヤンキー)「ねぇ!どこにいくの?」
九重 翔馬「え!?」
バイクが風を切り上手く会話ができない。
途中赤信号に止まったときようやく会話が成立する。
宮崎 優愛(ヤンキー)「ねぇ、どこにいくの?」
九重 翔馬「ん?ああ、とりあえず風呂だな」
宮崎 優愛(ヤンキー)「え?お風呂?」
九重 翔馬「そう、お風呂」
宮崎 優愛(ヤンキー)「なんで?」
九重 翔馬「なんでってそりゃ、行きたいからだろうよ」
宮崎 優愛(ヤンキー)「そうなの?」
九重 翔馬「そうなの!まあ、付き合わせて悪いんだけど、予定上、どうしても今日行っとかないとだったんだよ。だから頼むわ」
宮崎 優愛(ヤンキー)「そうなんだ・・・」
宮崎 優愛(ヤンキー)「わかった。まあ、私は送ってもらってる身だし付き合うよ」
そして、信号がまた青になりバイクが走り出した。
優愛は、話をしてみるとわりと明るい性格らしく、俺のくだらない話にも笑顔で対応をしてくれた。
そうこうしながらしばらく走ると、とある温泉郷に到着する。
〇温泉旅館
宮崎 優愛(ヤンキー)「わぁッ!すごいね!いきたかった所ってここ?」
そこには湯気がゆっくりと空へ登り、ポツポツと明かりの灯り始めた日本情緒溢れる建物が並んでいた。
自慢の建物には『箱根饅頭』や、『温泉蒸しプリン』等の文字が書かれた登りが風に躍り、道行く人の視線を集めている。
九重 翔馬「そう、知らないか?箱根温泉。名前くらいは聞いたことあるんじゃないか?」
宮崎 優愛(ヤンキー)「わかんないけど、でもすごいね!! 日も陰ってきてて、すごい風情を感じるよ!ふふふ!翔馬についてきて良かった!」
九重 翔馬(笑顔が眩しい・・・。君はそんなに無邪気に笑って、さっきまでとは全然違うじゃないかフフフ(鼻高々))
九重 翔馬「まぁ、付き合わせてるし、ここは俺が出すから、気にしないで好きな温泉選べよ」
宮崎 優愛(ヤンキー)「え?悪いよ、それに乗せてもらってるのにこんなことまで」
九重 翔馬「それはそれ。これはこれ。大丈夫だ、問題ないノープロブレムだ」
宮崎 優愛(ヤンキー)「それ同じ事2回言ってるから」
そう言って、優愛はけらけらと笑う。
九重 翔馬「そういや、おまえ着替えは?あるの?」
宮崎 優愛(ヤンキー)「あ・・・えっとたぶんタオルだけなんとかなれば下着はあるし、服も・・・あ!あるある」
九重 翔馬「そっか、なら大丈夫だな」
そんな風に他愛ない話をして俺たちは入る温泉を決め、近くの橋の上で待ち合わせることにする。
〇温泉街
30分ほどたったころ、橋に行くが優愛の姿はない。
九重 翔馬(ふぅ~、あれ?)
どうやら、先についたようだ。橋に腕を乗せ、日の沈んでしまった温泉郷の灯りを見ながら今日一日を思う。
九重 翔馬(・・・渋滞に巻き込まれたり、目当てのラーメン屋は休みだったり、家出少女ひろったりと何かと濃い1日だったけど、まぁいっか)
九重 翔馬(だがしかし、泊まるとこどうすっかな・・・)
九重 翔馬(初日は温泉だけ贅沢して適当にスーパーで惣菜買って、テントの予定だったけど)
九重 翔馬(さすがに女の子とテントに二人はかなり気まずくね?)
九重 翔馬(てか、理性が持つ自信がない。湯上がり女子高生とか・・・)
九重 翔馬(・・・エロくね?)
九重 翔馬(やめろ!考えるな!!こんなのただの変態じゃねぇか!)
九重 翔馬(でも脳内なら無罪)
九重 翔馬「・・・」
九重 翔馬(いや、マジでちゃんとしよう。 まぁ、1日だけだし・・・俺が外のベンチとかで寝るか?虫除けちゃんと入れたっけな?)
がさごそと、俺が肩掛けの鞄を探っていると急にTシャツのスソを引かれて振り替える。
九重 翔馬「・・・?」
そこには某アイドルグループとかにいそうな可愛い系の女の子が
濡れた黒い髪をポニーテールにして、手でパタパタとピンク色に火照った頬を扇いでいた。
宮崎 優愛「おまたせ」
知人か、彼氏と間違われているのだろうか?
九重 翔馬「えっと、どなたでしょうか?」
宮崎 優愛「へ?」
間の抜けた声を出して、女の子がこっちをみる。すると次の瞬間──
宮崎 優愛「もぅ!何いってんの?私だよ!ははは」
と聞き覚えのある声が女の子からかえってくる。
九重 翔馬「え?・・・は?え?」
宮崎 優愛「優愛だよ!ふぅ・・・あっつい」
そう言うと、着ている服の胸元をつまみパタパタして胸に風を送り始めた。
九重 翔馬「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!?」
宮崎 優愛「わっ!なに!?ビックリしたなぁもぅ!」
九重 翔馬「優愛!?」
宮崎 優愛「なに?」
九重 翔馬「優愛?!」
宮崎 優愛「だから、なに?」
九重 翔馬(いや、いやいやいやいや!どうしたの!?どうしたの!!そのビフォーアフターッ!!!!)
九重 翔馬「おまっ!金髪は!?どこに置いてきたんだよ!」
宮崎 優愛「え?ああ、あれは1日用だから」
九重 翔馬「1日用!?そんな落ちるもんなのかアレ!?・・・てか、髪黒っ!!あと睫毛は?!」
宮崎 優愛「え?なに・・・?普通お風呂上がったらつけないじゃん」
九重 翔馬「まじか・・・・・・」
宮崎 優愛「なんなのよもぅ」
口を尖らせる優愛を見て咄嗟に思ったことがそのまま口をついて出てしまう。
九重 翔馬「可愛い・・・」
宮崎 優愛「え・・・?なっ、はぁっ!?////」
九重 翔馬「いや、まじでおまえ絶対そっちがいいぞ!あんな格好なんかしなくていい!おまえはナチュラルに、そのままが絶対良い!」
気づいたら、肩を掴みヤンキーは卒業しなさいと全力で彼女に話していた。
宮崎 優愛「わかった!わかったから!」
両手を前にして俺を制止する優愛を見て、「はっ!」となり、我にかえる。
九重 翔馬「いや、ごめんなんか急に・・・でも、そのくらい驚いたんだよマジで」
宮崎 優愛「はいはい、わかったわかった♪」
笑顔で年下にあしらわれ、テンションを落ち着ける。
〇立ち食い蕎麦屋の店内
それから少しだけ温泉郷を歩き、箱音温泉名物だと言われる『湯気もち』とやらを頂く。
宮崎 優愛「うわっうまっ!何これ!幸せの味がするよっ!」
九重 翔馬(優愛があまりのうまさに、驚いている様子だが、俺はおまえの変身ぶりにまだ整理がついてないよ・・・)
とか思いつつスマホを取り出す。
結局、今日はどこかのビジネスホテルをとろうと思う。
九重 翔馬(この状態でテントは非常にまずい)
九重 翔馬(世の男子諸君には共感していただけると思うからこそ、あえて言うが・・・)
九重 翔馬(湯上がりの女の子と言うものは、我々健全な男子にとってはただの『毒』なのだ!!)
九重 翔馬(正直あまり意識していなかった女子でさえ、そのフローラルな香りと湿った髪の艶っぽさとで魅了してくる!)
九重 翔馬(挙げ句・・・触れることはおろか、近づく事でさえ躊躇してしまうほどに神聖な者のように思えてならないのだッ!!)
九重 翔馬(おいそこの女子!オーバーとかじゃないからな!ガチだから!男の子だって大変なんだからっ!)
そんなことを考えてスマホでホテル検索していると、急に優愛に声をかけられ、少し驚きながら振り替える。
宮崎 優愛「泊まるとこ、決まった?」
九重 翔馬「お!?お、おう!あとは部屋をどっちにするか選んでだな・・・」
スマホの画面に、視線を戻す。
『予約完了』の文字が。
【大人二名様】
→【一室】ダブルタイプ
→【一室】ダブルタイプ
【禁煙】
優愛がポツリと呟いた。
宮崎 優愛「【一室】・・・」
九重 翔馬「え"?ち、違うんだよ!違う違う!これはミスタッチでッ!」
宮崎 優愛「・・・じー」
九重 翔馬(超絶じと目でこっちを見ている!!)
九重 翔馬「バカやろう! んなわけあるか、ミスタッチだよ!ミスタッチ!ははは・・・そんなおまえ、おまえそんなははは・・・」
九重 翔馬「ちょっと電話してきます・・・」
そういってホテルに電話をし、予約の変更をお願いしたのだった──。
〇黒背景
〇ビジネスホテル
──西横インホテル
〇ホテルの部屋
【ツインルーム】
宮崎 優愛「・・・・じー」
優愛が超絶じと目で見てくる
九重 翔馬「正直すまんかった」
案の定空きはなく、優愛に許可を得てツインルーム(ベッドが二つの部屋)に変更で勘弁してもらうことに。
宮崎 優愛「ふふ」
宮崎 優愛「まぁ大丈夫だよ、わざわざ準備して貰ったのにこれ以上はわがままになっちゃうもんね!」
宮崎 優愛「ああーッ!つかれたぁ~!!」
そう言うと、バフッ!とベッドに倒れこむ優愛。
九重 翔馬「いや、まじですまんかった。俺が泊まるとこはどうにかするとか言っときながら・・・」
「いいよぉ~ふふふ、お布団気持ちー」
九重 翔馬「その、なんだ。まぁ襲ったりはしないから」
ポリポリと頬をかき気まずそうにする俺にたいして、優愛は布団から顔半分をだし
宮崎 優愛「ほんとにぃ~?」
といたずらっぽく笑った。
──それから、優愛は自分の持ってきた本を読み始め、俺は荷物を少し整理していた。
すると喉が乾いたことに気付き、回りを見渡すが飲み物がない。
備え付けのお茶と珈琲はあるが、お湯を沸かすのも面倒だと思い、ビジネスホテルに備え付けてある自動販売機へ行くことにする。
優愛に飲み物の事を話し、ついでに何か飲みたい物はないか聞いて、自動販売機へ向かう。
〇エレベーターの前
エレベーター内にある階層マップを見て、自販機のある階へ向かい目当ての飲み物を購入する。
またエレベーターにのり、部屋へと戻るためエレベーターを降りて左に曲がる。
〇廊下の曲がり角
すると目の前に違和感が飛び込んでくる。
なんだろうか?この黒い影は、どうみても子供に見える。
九重 翔馬「・・・?」
九重 翔馬(まさかっ! 幽霊!?いやいや、そんなまさか。いやでも・・・・・・)
目を擦りよく目を凝らしてみる。
九重 翔馬(じ~・・・)
どうみても自分の部屋の前に男の子がたっている。
部屋を間違えたのだろうか?回りを見るがその子以外人影はない。
内心めちゃめちゃビビっているが、平常心を装い、溶けかけの氷みたいな情けない勇気を振り絞って声をかけてみる。
九重 翔馬「よぅ、少年どうした?」
少年はこっちを振り替える。ふむ、なかなかのイケメンである。
そしてどうやら人間のようだ、安心してもう一度改めて声をかける。
九重 翔馬「なあ、君はこんなところでどうしたんだ?」
すると少年は端正な顔立ちをそのままに、口を開く。
橘 和人「・・・」
橘 和人「お母さんに置いていかれた」
九重 翔馬「・・・・・・ん?え?」
九重 翔馬「え!?」
日本一周の旅に出たら、家出少女拾った!
序章: 出発の日 終