エピソード1(脚本)
〇高い屋上
片岡あずき「平川くん、どうしたの?」
片岡あずき「こんなところにわざわざ呼び出して・・・」
片岡あずき「席も隣なのに」
平川アキラ「・・・」
片岡あずき「休憩時間終わるよ」
平川アキラ「やる」
平川アキラ「俺の弁当」
アキラはあずきに
弁当の入った袋をさしだす
片岡あずき「あらあら、」
片岡あずき「早弁をやめる気になってくれたのかしら」
平川アキラ「ちがう」
平川アキラ「俺の大事な弁当」
平川アキラ「片岡さんに食べてほしい!!」
片岡あずき「えっ」
片岡あずき(これって・・・告白!?)
片岡あずき「わ、私のこと、、、よく知らないでしょ」
片岡あずき「制服もまだ届いてないくらい」
片岡あずき「転校してきたばかりだし」
もじもじしだすあずき
片岡あずき「私の何がいいの?」
片岡あずき「皆に煙たがれてる風紀委員なのに」
平川アキラ「・・・」
片岡あずき「お弁当交換しよっか」
平川アキラ「・・・その片岡さんのお弁当は」
平川アキラ「――もうない」
片岡あずき「・・・はい?」
平川アキラ「間違えて食べてしまって、俺」
片岡あずき「いやいや」
片岡あずき「間違えるわけないじゃん」
片岡あずき「席も違うのに」
平川アキラ「休み時間、トイレ行って」
平川アキラ「戻った席が、片岡さんの席だったわけで」
平川アキラ「当然机のなかに入ってるのも片岡さんの弁当なわけで──」
平川アキラ「つい」
片岡あずき「ついって何よ!いつの話!?」
平川アキラ「5分前」
片岡あずき「5分前て・・・」
片岡あずき「ここへの移動時間考えたらなんやかんや」
片岡あずき「お弁当1分で食べなきゃ計算合わない」
平川アキラ「うん、1分で食べた」
片岡あずき「たこさんウィンナー食べたのっ!?」
平川アキラ「たこさんなんて、うちのオカンにしては」
平川アキラ「気が利いてるなぁて思ったんだよねぇ」
片岡あずき「まさか・・・主役のハンバーグも!?」
平川アキラ「いやァ旨かったなぁ!」
平川アキラ「チーズインしてんだもん」
片岡あずき「・・・」
平川アキラ「オホン・・・」
平川アキラ「で、代わりに俺のお弁当を食べていただきたい、と」
平川アキラ「スマン!」
〇大きな木のある校舎
キンコーン
〇教室
片岡あずき「授業中も休憩中も」
片岡あずき「早弁ばっかりしてるから」
片岡あずき「こんなことになるんでしょ!」
平川アキラ「いやァ」
平川アキラ「授業中に皆と食べるご飯は」
平川アキラ「特別ウマイんだってば」
片岡あずき「・・・貴方、授業中に早弁することを」
片岡あずき「『皆と食べる』と表現するわけ?」
平川アキラ「・・・ごめん」
片岡あずき「どうしたの急に?もういいわ」
平川アキラ「ホントにごめん」
片岡あずき「うん、だからもういいって」
平川アキラ「そうじゃなくて──」
平川アキラ「片岡さん、早弁嫌いなのに」
平川アキラ「早弁させる羽目になってゴメン」
片岡あずき「・・・は?」
平川アキラ「この授業までに弁当食べないと」
平川アキラ「賞味期限切れちゃうかも」
平川アキラ「うちのオカン」
平川アキラ「深夜に弁当作ったから」
片岡あずき「この風紀委員の私が早弁!?」
片岡あずき「できるわけないでしょ!」
平川アキラ「だよな」
片岡あずき「当たり前でしょ」
平川アキラ「せっかくの唐揚げなのに」
片岡あずき「・・・唐揚げ?」
――――ゴクリ
あずきのお腹が、グーと鳴る
片岡あずき「も、もう早弁でもなんでも」
片岡あずき「やってやるわよ」
平川アキラ「そうこなくちゃ!」
片岡あずき「ん?ちょっと待って・・・」
片岡あずき「次の授業て――――」
平川アキラ「地理だね」
――――ガララ
ムスッとした教師が入ってきた
平川アキラ「教師はネチネチのネッチー」
平川アキラ「早弁バレたら」
平川アキラ「職員室で2時間ネチネチ説教」
ネッチー「おい座れ~毎回毎回同じことを――――ったく、ネチネチネチネチ・・・」
片岡あずき「もう、やだァ」
〇学校の裏門
〇教室
ネッチー「~~であるからしてぇ」
平川アキラ「おい、早く食えよ」
片岡あずき「わ、分かってるわよ」
ぷるぷる震える手で
机のなかの卵焼きを箸で掴むあずき
ネッチー「私が学生時代にいったアルメニアという国は~~」
隙を見て卵焼きを頬張るあずき
平川アキラ「どうだ?ウマイだろ」
片岡あずき「・・・緊張で味がひない」
ネッチー「ん?」
片岡あずき「(恐る恐る)モグモグ・・・」
ネッチー「おい!お前何か喰ってるだろ!?」
――――ドキィ!!
片岡あずき「あ、あ、あの」
ネッチー「喰ってるなぁ!絶対!!」
壇上から下りてくるネッチー
片岡あずき「ち、ち、ちぎゃうんでひゅ」
どんどんあずきのもとに歩いてくるネッチー
ネッチー「バレてんだよ!」
片岡あずき「す、すいま――――」
ネッチー「郷田ァ!!」
あずきのひとつ前の席の
郷田の前でとまるネッチー
ネッチー「ネチネチネチネチ・・・後で職員室来い!」
郷田の弁当をゴミ箱に捨てるネッチー
郷田うらら「!!」
壇上に戻るネッチー
平川アキラ「・・・」
〇教室
授業はネチネチとつづいている
片岡あずき「こ、怖くて食べられないよぉ」
キョロキョロするあずき
平川アキラ「大丈夫だ」
平川アキラ「この角度ならバレねぇ」
平川アキラ「だからビビるな」
片岡あずき「違うの」
片岡あずき「私が怖いのは周りの目」
片岡あずき「早弁がチクられるんじゃないかって」
片岡あずき「怖い」
平川アキラ「心配すんなって」
平川アキラ「誰もチクらねぇよ」
片岡あずき「どうして言い切れる?」
片岡あずき「転校してきたばかりでしょ?」
片岡あずき「どうしてそんな知らない人たちのこと」
片岡あずき「信用できるの」
平川アキラ「信用すれば信用される」
平川アキラ「信用されれば信用する」
平川アキラ「そんなもんだろ」
片岡あずき「・・・私、実は貴方の早弁」
片岡あずき「教師にチクるつもりだったのよ」
平川アキラ「でもチクらなかった」
平川アキラ「俺、片岡さんのこと信用してたから」
片岡あずき「・・・」
平川アキラ「俺がオトリになる」
平川アキラ「その間に食え」
片岡あずき「え」
ネッチー「というわけで~、ん?」
平川アキラ「モグモグモグモグ・・・」
ネッチー「おい、平川ァ!」
ネッチー「何食べてるんだ!あぁ!?」
平川アキラ「いいえ何も」
ネッチー「ガム喰ってんだろうが!?」
片岡あずき「な、何がオトリよ!」
片岡あずき「余計こっちに視線が集まるじゃない」
平川アキラ「ホラ」
あーんと口を開けるアキラ
ネッチー「チッ、紛らわしいことするな!」
片岡あずき「モグモグモグモグ・・・」
こっそりと、箸をすすめるあずき
安部舞(えっ、あの片岡さんが早弁してる?)
安部舞(早弁とか親近感わくじゃん!)
安部舞(片岡さん、嫌いだけど)
ネッチー「授業はじめるぞ!ん?」
安部舞「モグモグモグモグ・・・」
ネッチー「安部ぇ!」
ネッチー「お前も何喰ってんだ!えぇ!?」
安部舞「何も食べてませーん」
安部舞「ほら」
ネッチー「ふざけるなぁ!!」
片岡あずき(安部さん・・・ありがとう)
片岡あずき(安部さんのこと、嫌いだけど)
弁当をかきこむあずき
高橋(あの片岡が早弁?)
高橋(しかもバレバレじゃん・・・チクらないって俺たちを信用してるのか?)
高橋(仕方ねぇな)
高橋「モグモグ・・・」
ネッチー「高橋ぃ!」
郷田うらら「モグモグ・・・」
ネッチー「郷田ァ!」
クラスの至るところで
エアでモグモグがはじまる
ネッチー「やめろぉ!!」
片岡あずき「ごちそうさまでした」
片岡あずき「なんだか、いつもより美味しく感じた」
あずきは気づいていないが
口元に米粒がついている
平川アキラ「あ」
あずきの口元の米粒を
さりげなく、ひょいとつまむアキラ
片岡あずき「えっ」
平川アキラ「ぱくっ」
片岡あずき「ちょ!!」
このとき、あずきの胸はときめき
そしてこのあと、腹をこわした
どんな事がきっかけで一体感を感じるのかわからないものですね。みんなめっちゃいい友達ですね!
私が想像していたよりほっこりした終わり方でとてもよかったです!
早弁デビューのあずき。まさかのスリリングな展開に懐かしさを覚えながらも笑ってしまいました。リアルに傍から見ると滑稽で親しみ湧くのですよね(経験談)ラスト一文はさらに爆笑です!
真面目な彼女の早弁で、クラスに妙な連帯感が生まれているところがツボでした。信じれば信じてもらえるとは、使う状況がすこしづれてはいるけど、なるほど!と思ってしまいました。