君探しの夏(脚本)
〇神社の出店
14歳の夏。
私は初めて恋をした。
〇神社の出店
愛子「どこに行ったの〜?」
私は近所で開かれている小さなお祭りに来ていた。
「お嬢さん」
「なにか探し物?」
愛子「!」
振り返ると、端正な顔立ちをした男性が立っていた。
愛子「あの、お守りを落としてしまって・・・」
和泉「それは大変だね」
愛子「おばあちゃんにもらった大切なお守りなのに・・・」
和泉「よし、一緒に探そう!」
愛子「え、そんな!悪いです」
和泉「いいのいいの」
そう言って、お兄さんは私と一緒にお守りを探してくれた。
〇神社の出店
和泉「あった!」
愛子「え!本当ですか!?」
和泉「このお守りで合ってる?」
愛子「これです!」
愛子「はぁ〜よかったぁ」
愛子「本当にありがとうございます!」
和泉「見つかってよかったね」
愛子「はい!」
和泉「じゃ、俺はこれで・・・」
愛子(え?もう行っちゃうの!?)
愛子(まだ名前も聞いてないのに・・・!)
ガシッ
和泉「わっ!!」
私はお兄さんの袖を掴んだ。
愛子「あの!」
愛子「なにかお礼させてください!」
〇神社の石段
私は焼きそばを2つ買って、お兄さんに渡した。
和泉「本当いいのに」
愛子「いえ、私の気が済みません」
和泉「ありがとう」
和泉「じゃあ・・・いただきます」
お兄さんは美味しそうに焼きそばを食べている。
愛子「お兄さんはこの辺に住んでるんですか?」
和泉「ううん、もっと遠いところに住んでるよ」
愛子「そうなんですか・・・」
愛子「この時期ならどこでもお祭りやってると思いますけど・・・」
愛子「なんでわざわざ遠いところまで?」
和泉「ちょっと会いたい人がいてね・・・」
愛子(ふぅん・・・好きな人でもいるのかな)
愛子(って、なに気にしてるの私!)
愛子(そうだ、名前名前!)
愛子「あの、お名前聞いてもいいですか?」
和泉「名前かぁ・・・」
愛子(あれ、もしかして嫌だったかな?)
和泉「まぁ、大丈夫かな」
和泉「和泉隼也(いずみしゅんや) よろしくね」
愛子「和泉隼也さん・・・」
愛子「素敵な名前ですね」
和泉「ありがとう。君の名前は?」
愛子「榊愛子(さかきあいこ)です」
和泉「愛子ちゃん」
和泉「可愛い名前だね」
愛子「えっ・・・」
和泉さんに可愛いと言われ、頬が赤くなってしまう。
愛子「あ、あの・・・!」
愛子「私たち、また会えますかね?」
和泉「うーん」
和泉「どうだろう」
私がしゅんとした顔をしていると、和泉さんはクスッと笑った。
和泉「明日また、お祭りに来るよ」
愛子「本当ですか!」
愛子「私も、明日のお祭りに行きます!」
和泉「じゃあ、今度は僕が奢るね」
愛子(嬉しい・・・また会えるなんて!)
私は平静を装いつつ、焼きそばをかき込んだ。
〇神社の出店
翌日──
ドンッ
和泉「おっと、失礼」
??「いえ、こちらこそすみません」
和泉「お詫びにいいことを教えてあげよう」
??「へ?」
和泉「この階段を登ったところへ行ってごらん」
和泉「19時からの花火がよく見えるから」
??「そうなんですね。ありがとうございます」
和泉「あと、これ買いすぎちゃったからあげる」
??「え?2つも?」
??「そんな、悪いです」
和泉「いいのいいの」
和泉「じゃ、僕はこれで」
??「変わった人だなぁ・・・」
〇神社の本殿
愛子(和泉さん、どこにいるんだろう?)
愛子(今度は僕が奢るって、冗談だったのかな?)
愛子(せっかく浴衣着ておめかししてきたのに・・・)
愛子「はぁ・・・」
??「・・・・・・」
愛子「あ!」
愛子「和泉さん!」
??「え?」
愛子「私です、愛子です」
??「君・・・誰?」
愛子「えっ・・・」
愛子(あれ・・・?)
愛子(和泉さん・・・じゃない)
愛子(少し背が低くて・・・顔も幼い)
愛子「ご、ごめんなさい!」
愛子「人違いみたいでした」
愛子(恥ずかしい〜・・・)
「ねぇ君」
愛子「はい?」
??「なんで、僕の名前知ってるの?」
愛子「え・・・?」
ドーーーンッ!
その瞬間、夜空に大きな花火が咲いた。
??「わ、本当によく見えるなぁ」
愛子「きれ〜い!」
??「・・・・・・」
??「これ、よかったら一緒に食べない?」
愛子「えっ・・・?いいの?」
??「うん。2つもあるから」
愛子「ありがとう・・・!」
〇VR施設のロビー
12年後──
和泉「ふんふんふ〜ん♪」
愛子「隼也!!」
和泉「愛子。おはよ」
愛子「また過去に遊びに行ってたでしょ!?」
和泉「なんのこと?」
愛子「私が中学生の時、お祭りで一緒にお守り探してくれたの、隼也でしょ!?」
和泉「あー・・・」
和泉「バレちゃった?」
愛子「顔が同じだもの」
和泉「変装して行ったつもりなんだけどなぁ・・・」
愛子「もう、なんで会いにいったの!?」
愛子「14歳の時なんて、まだ垢抜ける前だし・・・恥ずかしいよ!」
和泉「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ」
和泉「あの時未来の僕が、14歳の君と接触しなければ僕たちは出会えなかったんだから」
和泉「君はお守りを結局見つけられず、翌日お祭りには来なかった」
愛子「・・・それって、つまり私たちの出会いは運命じゃなかったってことでしょ?」
和泉「運命とか、僕はよくわからないけど・・・」
和泉「僕は君と一緒にいたいから、過去を変えた」
和泉「それだけのことだよ」
愛子「・・・変な人」
和泉「褒めてくれてありがとう」
和泉「さて、今度は小学生の君に会いに行こうかな〜♪」
愛子「ちょっと!」
和泉「今度はどんな変装していこうかな〜♪」
愛子「・・・もう」
私は無邪気に笑う彼を見て、この先も彼とずっと一緒にいたいと、そう改めて思うのだった。
おわり
タイトルにある「君探し」という言葉に時空を超越した愛の強さを感じました。今は夏祭りのシーズンなので、「この中に未来人が混じっているかも」と想像したら楽しくなりそうです。
過去に遊びに行くってすごくロマンが詰まってていいなぁと感じます!けど過去の改変?とかにならないのかな?
でも今も昔もずっとひとりの人を思い続けてるんだという一途さを感じほっこりしました!
彼女に出会うためには、運命すら変えるってめちゃかっこいいですね!
未来の二人も仲が良さそうで幸せカップルですね。
でも、ひょっとしたら運命を変えに行くのもまた運命なのかも。