隣の彼は不眠症

岸田

読切(脚本)

隣の彼は不眠症

岸田

今すぐ読む

隣の彼は不眠症
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇部屋のベッド
  初めての一人暮らし、初めての仕事。
  新生活、慣れないことばかりで大変な日々。
  引越して数日、私には悩みがあった。

〇部屋のベッド
  ~♪ ♬ ♬ ♪~
  ・・・・・・。
  ~♪ ♬ ♬ ♪~! ♬!
  ああもう! うるさい!

〇マンションの共用廊下
「すいませーん! ちょっといいですか?」
「・・・はい?」
「はい。じゃなくて」
「音楽! うるさいんですけど」
夏樹「あー・・・」
夏樹「もしかして、お隣さん?」
「そう!」
「うるさくて眠れないんです。 静かにしてください」
夏樹「・・・いや、その」
「続くなら大家さんにも言いますから。 では!」
夏樹「あっ・・・」
(よし、これで大人しくなるでしょ)
夏樹「・・・」
夏樹「参ったな・・・」

〇部屋のベッド
  ~数日後~
  ~♪ ♪♪ ♪~
「大人しくならない! なんで?!」
(結構キツめに言ったのに・・・!)
「も~・・・!!」

〇マンションの共用廊下
「あのー! すみません!」
夏樹「・・・はい」
夏樹「ああ、お隣さん」
「そうです! また音楽が、」
夏樹「すみません」
夏樹「ちょっと、声のボリューム下げて・・・」
「なんで・・・!」
(あれ?)
(顔色が悪い それに目の下に隈もある・・・)
「・・・もしかして、」
「眠れてないんですか?」
夏樹「・・・」
夏樹「まぁ、はい」
夏樹「小さい頃から音がないと寝れなくて」
夏樹「お隣さんが来たから、最近いろいろ試してたんですけど・・・」
夏樹「どれもダメで、結局音楽に・・・」
「そう、だったんですか・・・」
(私が、無理させちゃったのかな・・・)
「・・・ごめんなさい」
「先にあなたの理由を聞くべきだった」
夏樹「いや、おねーさんのせいじゃないです」
夏樹「俺がうるさいのは事実だし」
「でも・・・」
(このままだとこの子は眠れないままだし・・・)
「何か、私にできることある?」
夏樹「おねーさんに?」
「うん このままだと私も申し訳ないし」
夏樹「そっか・・・ なら・・・」
夏樹「・・・声」
「声?」
夏樹「人の声があると俺、落ち着くんです」
夏樹「だから、おねーさんが良かったら、だけど」
夏樹「寝るまで、お話してくれたらな、て」
「っ!」
(そんな子犬みたいな顔、するんだ)
夏樹「・・・だめ?」
「えっ?」
「あ~~・・・」
「・・・だめ、ではないよ」
夏樹「ほんと?」
「でも! まずは連絡先交換から!」
夏樹「お隣さんなのに?」
「お隣さんだからこそ!」
夏樹「そっか・・・」
夏樹「まぁ、声聞けるならいいか」
夏樹「電話番号教えるね」
「あ、ありがとう・・・」
  そうして、その日から彼の安眠に付き合うことになった

〇部屋のベッド
  ~その夜~
夏樹「ありがとね、おねーさん」
夏樹「付き合ってもらっちゃって」
「ううん、大丈夫」
「私もこれで眠れるし」
(ほんとに話し相手になっちゃった)
夏樹「なんか話してよおねーさん」
「ええ・・・ 無茶振りしないでよ」
夏樹「じゃあ何か質問していいよ」
「・・・いつから寝れないの?」
夏樹「ん~、小さい頃から」
夏樹「静かなの、怖いんだ」
「こわい」
夏樹「うん たいしたことじゃないんだけど」
夏樹「夜は、親がいなかったから」
夏樹「たぶん、そのせい」
「・・・そっか」
(この話題、あんまり触れないほうがいいかな)
「・・・あのね、」
夏樹「?」
「これ、私が初出社したときの話でね、」
夏樹「!」
夏樹「・・・うん」

〇部屋のベッド
  ~1時間後~
「でね、飲み会で隣になった先輩がいて、」
「地元が同じなんだって! 奇遇だよねぇ」
夏樹「・・・ん、」
「それでデスクも隣みたいで、」
「・・・」
「ねむい?」
夏樹「うん、ねれそう」
夏樹「ありがとう、おねーさん」
「ううん、寝れるならよかった」
「おやすみなさい いい夢見てね」
夏樹「うん」
夏樹「・・・」
夏樹「ほんとはね、」
夏樹「おねーさんの声、 聞いたときから好きだった」
夏樹「きっと・・・ちゃんとねむれるんだな、て」
  ・・・ぐう
「えっ・・・」
「おや、すみ・・・」
  ピッ
「・・・うう~~!!」
「なんでそんなこと言うの!?」
「私が寝れないよ・・・」

〇部屋のベッド
  ~翌朝~
「・・・あんまり眠れなかったな」
(あんなこと言われたら眠れないよ・・・)

〇マンションの共用廊下
夏樹「あ」
「あ・・・」
夏樹「おはよ、おねーさん」
「うん、おはよ」
夏樹「んね、」
夏樹「おねーさんの名前、香織で合ってる?」
「あ、うん、そう」
「連絡先に書いてあったもんね」
(たしか、この子の名前は・・・)
夏樹「香織さん」
夏樹「昨日、めっちゃ気持ちよく寝れた」
夏樹「いつか、ほんとの隣でお話してね」
「えっ」
夏樹「じゃ、また夜に」
「あっ、ちょっと夏希くん!」
「・・・」
「参っちゃった、な・・・」

コメント

  • 心になにか抱えていると寝つきって悪くなりますよね。私も主人と出会うまで将来の事とか不安で夜中に何度も目が覚めるという時期あったのを思い出しました。ヒーリングタイプのCDが割と効果的だったんですが、やはり人間のぬくもりですね。

  • 人の声を聞きながら眠るっていいですよね。
    私も音楽かけないと眠れないので、寝室には音楽かけてます。
    人の声があると安心できるんですよね。

  • こんなふうに頼られちゃったら放っておけなくなりますね。母性本能がくすぐられると思います。
    安心する声の人っていますよね。声は天性のものですから、運命を感じます。

コメントをもっと見る(5件)

ページTOPへ