Ep.21 陰口人狼⑤(脚本)
〇高い屋上
風見陽「さあて、今から私と君の腹の探り合いだ」
風見陽「面白くなりそうだね!」
品川悠香「そうですか?」
風見陽「うん。だってこのゲーム、性格が悪い人が勝つようにできてるから」
風見陽「私と君は良い勝負すると思うよ」
品川悠香「・・・」
品川悠香「私って性格悪いですか?」
風見陽「悪いよ。少なくとも──」
風見陽「この人たちよりはずっと・・・」
品川悠香「・・・」
風見陽「悲しい?」
品川悠香「はい」
品川悠香「やっぱり私って、そんなふうに見られてしまうんですね・・・」
品川悠香「明日香にはよく性悪女だって言われてました 被害者ぶってるとも」
品川悠香「・・・私の振る舞い、演技に見えます?」
品川悠香「悲劇のヒロインぶってる勘違い女に見えます?」
風見陽「・・・」
風見陽「いや、君のそれは演技じゃないね」
風見陽「君は猫を被ってるんじゃなくて、本気で自分を猫だと思い込んでる」
風見陽「それくらい、認知が歪んでる」
風見陽「自分の性格の悪さに気付いてないところが一番の性格の悪さだよ」
品川悠香「・・・」
品川悠香「やっぱり、自分の匂いには気付かないものですね」
品川悠香「私ってワキガらしいんですけど、匂います?」
風見陽「うーん、ちょっと匂うかな」
品川悠香「・・・」
風見陽「私が今風上に立ってるのは君の匂いを嗅ぎたくないからだし」
品川悠香「ごめんなさい」
風見陽「謝らなくていいよ! ワキガなんて誰でもなるから!」
品川悠香「それに比べて、あなたは良い匂いがしますね」
品川悠香「私の汚い鼻でも分かるくらいに」
風見陽「えー、悠香ちゃん鼻にコンプレックスあるの〜?」
品川悠香「いちご鼻だってよく言われます」
風見陽「そんなことないのにな〜」
風見陽「まぁでも・・・よく見たらちょっとブツブツかもね」
品川悠香「・・・」
風見陽「私の顔はどう? 悠香ちゃんから見ても可愛い?」
品川悠香「「悠香ちゃんから見ても」って言い方の時点で可愛い自覚ありますよね」
品川悠香「可愛いですよ 非の打ち所がないくらいに」
風見陽「え〜、歯並び悪いってよく言われるんだけどな〜」
品川悠香「そんなの、矯正すれば良いじゃないですか」
風見陽「歯並び悪いことは否定しないんだ」
品川悠香「・・・」
品川悠香「良くはないと思います でも、私は特に気になりません」
風見陽「悠香ちゃんは優しいね〜」
風見陽「さすが、八方美人」
品川悠香「八方美人ではないと思いますけどね」
風見陽「ところでさ・・・」
風見陽「悠香ちゃんはこのサブミッションの存在をどこで知ったの?」
品川悠香「・・・?」
品川悠香「あなたって本当にスキルのことを知らなかったんですか?」
品川悠香「てっきり演技かと・・・」
風見陽「そこは本当に知らない たまたま通りかかったらなんか巻き込まれた」
品川悠香「意外ですね」
風見陽「で、スキルって何?」
品川悠香「・・・」
品川悠香「強力なアイテムみたいなものですよ」
品川悠香「この先、「敵を殲滅」するにはそれが必要になる」
品川悠香「サブミッションは・・・それを手に入れるためのイベントで・・・」
品川悠香「・・・」
風見陽「・・・」
品川悠香「これ以上は秘密です」
風見陽「・・・残念」
風見陽「でも悠香ちゃん、笑った顔は可愛いね」
品川悠香「・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
???「ただいま〜」
???「あっお父さん、おかえり」
品川悠香「お仕事お疲れ様」
品川拓哉「ありがと 悠香の笑顔は今日も可愛いね」
品川悠香「えへへ」
品川拓哉「あれ、お母さんは?」
品川悠香「明日香と買い物行くって」
品川拓哉「そうか・・・」
品川拓哉「ごめんね、悠香を一人にさせちゃって」
品川悠香「別に気にしてないよ 私にはお父さんがいるし」
品川拓哉「・・・」
品川拓哉「本当は悠香だけじゃなく、お母さんも明日香も・・・みんなの笑顔が見たいんだけどな・・・」
品川悠香「私のだけじゃ不満?」
品川拓哉「いやっ、そういう意味じゃなくて」
品川悠香「分かってるよ お父さんは優しいからみんなを笑顔にしたいんだよね」
品川拓哉「・・・うん」
品川拓哉「でも・・・あんなことした俺にそれは無理か」
品川悠香「あんなこと?」
品川悠香「あぁ、私の方のお母さんのこと?」
品川拓哉「うん。悠香にも辛い思いをさせたよね」
品川悠香「全然辛くないけど」
品川拓哉「・・・」
品川拓哉「強がらなくてもいいんだよ悠香・・・」
品川拓哉「こういう時、普通の女の子は悲しむものだから」
品川悠香「・・・?」
品川悠香「あぁ・・・」
品川悠香「そうだね・・・ お母さんがあんなことになるなんて」
品川悠香「本当に・・・私たちって可哀想」
品川拓哉「・・・」
品川悠香「何も死ぬことないのにね・・・」
品川拓哉「・・・やっぱり、悠香は僕の娘だね」
品川拓哉「僕も・・・彼女は死ぬことなかったのになと思う」
品川拓哉「自分が一番になれないってそんなに辛いことなのかな」
品川悠香「・・・よく分からないけど、わがままなんだと思う」
品川悠香「自分が一番じゃないと気が済まないって、言い換えれば負けず嫌いだから」
品川拓哉「悠香の負けず嫌いはお母さん似かな?」
品川悠香「私って負けず嫌い・・・?」
品川拓哉「負けず嫌いだよ悠香は」
品川悠香「・・・そうなんだ」
品川悠香「でも別に、誰かにとっての一番になりたいとか、誰かを一番愛さないといけないとか、そんな考えはないけどね」
品川悠香「お父さんと一緒で」
品川拓哉「みんなを愛したい」
品川拓哉「僕は人間が好きすぎるのかもしれないね」
品川悠香「でもまた浮気がバレたらさすがに面倒だから、やるならこっそりやりなよ」
品川悠香「あんまりお父さんをフォローしすぎると、また明日香に怒鳴られちゃう」
品川拓哉「はははっ、いつもありがとうね悠香」
品川拓哉「明日香も明日香で、怒った顔が可愛いよね」
品川悠香「うん。可愛い」
品川悠香「・・・」
品川悠香「でも、明日香と私は多分、この先分かり合えることはないんだろうなぁ・・・」
品川拓哉「・・・」
品川悠香「本当に血、繋がってるのかな・・・」
品川悠香「私と明日香・・・」
品川拓哉「・・・繋がってるよ」
品川拓哉「僕が保証する」
品川拓哉「だって、当時、お母さんたちにとっての一番は僕だったからね 君たちは間違いなく僕の子種を受け継いでる」
品川悠香「・・・」
品川悠香「それ明日香が聞いたら、怒って家出しちゃうよ」
品川拓哉「あははっ」
〇高い屋上
品川悠香「私の笑顔、可愛いですか?」
風見陽「可愛いよ」
品川悠香「・・・」
品川悠香「そう言ってくれる人、お父さん以外にあなたが初めてです」
品川悠香「私は友達が一人もいないんですが、あなたとなら友達になれるかもしれない」
風見陽「何?同族意識が芽生えちゃった?」
風見陽「生憎、私は友達多いよ」
品川悠香「いえ、あなたなら私のことを理解してくれそうだから」
品川悠香「お父さんと同じように、私と同じ目線で、ものを話すことができそうだから」
風見陽「要は性格悪い者同士仲良くなれそうってことでしょ?」
風見陽「でもね、私は君なんかとは比べ物にならないくらい性格悪いから」
風見陽「君の認知が歪んでるだとか、人として終わってるだとか、そんなの私からしたらどうでもいい」
風見陽「どうでもいいから避けることもないし、歩み寄ることもしない」
風見陽「利用できるかできないかしかない」
風見陽「そんな私とも友達になれるの?」
品川悠香「・・・」
品川悠香「追放します」
風見陽「へー、君の方からするんだ」
品川悠香「大体、情報は出揃いましたから」
品川悠香「「悲劇のヒロインぶってる勘違い女」を書いたのはあなたです」
サブミッション「陰口人狼」
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