エピソード1(脚本)
〇アーケード商店街
私の名前は中野絵美里
自分で言うのもなんだけど・・・
美人じゃないし、スタイルも全然よくない──
でも、こんな私と付き合ってくれる、自慢の彼氏がいる──
ミュージシャンの九頭隆介だ──
九頭隆介「今日はみんな僕のために集まってくれてありがとう」
九頭隆介「次の曲は僕の大事な人を思って作った曲です」
九頭隆介「聴いてください『英美里love』」
九頭隆介「♪おーおー、Ⅰ love 英美里」
中野絵美里「隆介・・・」
〇テーブル席
中野絵美里「でねでね・・・」
中野絵美里「隆君たら私のことを歌ってくれるの・・・」
葛西里香「あんたバカなの?」
葛西里香「ミュージシャンって言っても自称でしょ?」
葛西里香「商店街の路上で歌っているだけの人でしょ」
葛西里香「それはミュージシャンって言わないのよ」
葛西里香「ただのヒモって言うの!!」
中野絵美里「酷い!! 何で隆介のことそんなに悪く言うの?」
中野絵美里「確かに隆介は無職だし・・・」
中野絵美里「いつも、私にお金をねだってくるし・・・」
中野絵美里「でも、そんなことはどうでもいいの!!」
中野絵美里「私は隆介と一緒にいるだけで幸せなの!!」
葛西里香「いい加減に目を覚ましなよ・・・」
葛西里香「英美里にふさわしい男がそのうち現れるわよ」
葛西里香「あいつが目当てなのは英美里のお金だけ」
中野絵美里「そんなことないから!!」
〇高級マンションの一室
中野絵美里(里香には怒ったけど、最近不安なことがある・・・)
中野絵美里(隆介の帰りが遅いこと・・・)
中野絵美里(こんな遅い時間まで何をやっているんだろ?)
中野絵美里(ひょっとして浮気?)
中野絵美里(だんだん不安になってくる・・・)
九頭隆介「ただいまー」
中野絵美里「おかえりなさい」
中野絵美里「こんな遅くまで何してたの?」
九頭隆介「作曲で忙しかったんだよ」
中野絵美里(本当かなあ?)
九頭隆介「シャワー浴びてくる」
中野絵美里「隆介のスマホが置きっぱなしだ・・・」
中野絵美里「見ちゃいけないよね・・・」
中野絵美里「でも、浮気されているか心配だから・・・」
中野絵美里「見ちゃえ!!」
愛子「今日は隆ちゃんに出会えてよかった♡」
恵里佳「今度いつ会える?」
裕美子「隆くん、だ~い好き♡」
中野絵美里「何これ・・・」
九頭隆介「何、勝手に人のスマホを見てんだよ!!」
中野絵美里「ごめんなさい・・・」
中野絵美里「ねえ、隆介・・・ 来週の日曜日何の日か覚えている?」
九頭隆介「来週の日曜?」
九頭隆介「近所のラーメン屋が半額デーとか?」
中野絵美里「ううん。何でもない。 忘れて・・・」
中野絵美里(本当は私の誕生日なのに・・・)
〇テーブル席
中野絵美里「隆介に浮気されたー」
中野絵美里「しかも、複数の女性と浮気しているみたい・・・」
葛西里香「サイテー」
中野絵美里「しかも、私の誕生日を覚えてくれてなかった・・・」
葛西里香「本当にサイテー!!」
葛西里香「あんな男、とっとと別れなよ」
中野絵美里「でも、まだ隆介のことが好きなの」
葛西里香「そんな態度だから舐められるのよ!!」
葛西里香「私が信頼できる男を紹介するから」
葛西里香「あんなクソ男のことは忘れなさい!!」
〇遊園地の広場
日曜日──
中野絵美里「里香から紹介された男性とデートすることになってしまった・・・」
中野絵美里「まだ、隆介のことが忘れられないのに・・・」
小野寺浩平「初めまして、絵美里さん」
小野寺浩平「小野寺浩平といいます」
中野絵美里(結構、イケメンだ)
中野絵美里「は、初めまして。 中野絵美里といいます」
中野絵美里「今日はよろしくお願いします」
小野寺浩平「こちらこそよろしくお願いします」
小野寺浩平「いやあ、こんな綺麗な方だとは思わなかったですよ」
中野絵美里(感じのいい男性だな・・・)
〇メリーゴーランド
小野寺浩平「次はメリーゴーランドに乗りましょうか」
中野絵美里「はい」
中野絵美里「メリーゴーランドの乗り物代くらい、私、払いますよ」
小野寺浩平「いいですよ。 自分が全部払いますよ」
中野絵美里「そんな悪いですよ・・・」
小野寺浩平「遠慮なさらず」
中野絵美里「失礼ですが、ご職業は?」
小野寺浩平「市役所の職員です。 公務員ですね」
中野絵美里(隆介とのデートのときは、いつも私が払っていたけど、これが普通のデートの感覚なんだな・・・)
〇観覧車のゴンドラ
小野寺浩平「今日はデートできて楽しかったです」
中野絵美里「私もです」
中野絵美里(小野寺さんは優しくて、話も面白くて、ちゃんとした職業で、浮気とかもしなさそうで・・・)
中野絵美里(こんな人が彼氏になったら、たぶん私も幸せなんだろうな・・・)
中野絵美里(でも、何だろう? この胸のモヤモヤは・・・)
絵美里のスマホの着信音
中野絵美里「ちょっと、失礼します」
中野絵美里「もしもし・・・」
「絵美里、どこにいるんだよ??」
中野絵美里「隆介? そ、そんなのどこでもいいじゃない・・・」
「いいわけないだろ!!」
「俺は絵美里がいないと生きていけないんだ!!」
「だから絶対に絵美里のことを話さないからな!!」
中野絵美里「隆介・・・」
中野絵美里「小野寺さん・・・ ごめんなさい・・・」
中野絵美里「私、やっぱり、好きな人がいるんです・・・」
小野寺浩平「僕じゃダメなんですか?」
中野絵美里「ええ・・・」
小野寺浩平「それじゃ、仕方ないですね」
〇高級マンションの一室
中野絵美里「ただいま」
九頭隆介「こんな遅くまでどこ行っていたんだよ?」
九頭隆介「絵美里・・・」
九頭隆介「ハッピーバースデー」
中野絵美里「えっ!? どうして・・・」
九頭隆介「知っているよ。 今日が絵美里の誕生日くらい・・・」
九頭隆介「知らないふりをして驚かしたかったんだよ」
九頭隆介「それにこの指輪を買うために、ホストクラブでバイトをしていて・・・」
中野絵美里「私はてっきり浮気しているものかと・・・」
九頭隆介「バカ!!」
九頭隆介「俺が絵美里以外の女を好きになるわけないだろ!!」
中野絵美里「隆介・・・」
〇テーブル席
中野絵美里「でねでね・・・。 隆介ったら、指輪をプレゼントしてくれたんだよ♪」
葛西里香「何で小野寺さんを振っちゃったのよ!!」
葛西里香「それに、ホストの客に貢いでもらったお金で誕生日プレゼントを買うなんてサイテーのクズ男じゃない!!」
中野絵美里「いいの。それでも私は隆介と一緒にいれて嬉しいから」
葛西里香「勝手にしてよ!! もう、私、知らない!!」
「私、帰る!!」
中野絵美里「いいんだ・・・」
中野絵美里「私は幸せなんていらない・・・」
中野絵美里「不幸でもいいから地獄の底まで、隆介と一緒に堕ちていくの・・・」
「サイテーのクズ」と「それを助長することを生きがいとする女」のセットですね。共依存の典型のようなカップルでゾッとしました。二人で恋愛物語を紡いでるつもりが、関係性のバランスが崩れるとあっという間に刃傷沙汰のホラーになりそうです。里香の存在がストーリーにリアリティを増す役割で、すごくよかったです。
人生ひとそれぞれだし、こういう形ではなくとも一般的理想からかけ離れたタイプの男性を好きになってしまう人沢山いると思います、自分を含めて。大事なのは後で後悔しないように引き際を見定めることですね。失った時間やお金を取り返すのは簡単ではないから。
若かれし頃、バンギャだったので、こういう男性ってリアルにまわりにいました。私は友人の立場だったので、彼女と同じく、やめておけばいいのになぁと客観的に思ってました。ほぼヒモなところも、お金を稼ぐのにてっとりばやくホストクラブで働くって考えることとかも、リアルで震えました。でも女子はこういう男性にはまってしまうんですよね〜涙