天蓋

春瀬由衣

第1話 人生を変える出会い(脚本)

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〇おしゃれな教室
  遡ること、五年。市役所職員の渡辺カルラが、まだ市内の公立大学のニ回生だった頃。
  彼女は、科学系雑誌「ニャートン」愛読者であった。
  科学好きが昂じ、彼女は必修単位でもなければ専攻分野でもない、宇宙論の講義にもぐっていた。
  「それなんの役に立つの?」と親からは言われ。「就活の話の足しにでもするの?」と友人には笑われ。
  でも、好きなんだから仕方ない。そういうものなのだ、学生は。
宇宙論1 教授 樋口「えー、次回の講義では「遠くの天体の温度を知る方法」について講義します。では今日はこれまd」
  担当教員の話を聞き終えないうちに、学生たちはガヤガヤと騒ぎ出す。
男子学生1「てかさー、上身街道沿いに新しくできた「宇宙パンドラ」って名前の居酒屋まじ外れだった。マジもう二度といかねぇ」
女子学生1「来週の講義は現場(ライブ)にいかないといけないから出席できない。成績落ちるかな」
女子学生1「でも、推しのために自分(の単位)を犠牲にするなんて素敵だわ〜」
  講義を受けている学生たちが、教科書をカバンに詰め、思い思いの考えに耽ったり楽しげに会話をしている
  そんな中、カルラだけはその場に放心状態であった。
市役所職員(女性) 渡辺カルラ「はわわ・・・。樋口先生、かっこいいな・・・・・・」
宇宙論1 教授 樋口「何か、わからないところでもありましたか?」
  とうに自室に戻ったと思っていた、今単元の担当教授の出現に、カルラは焦る。
  なにせ、単位登録をしていない講義に”もぐる”のは、本来ならば褒められた話ではない。
市役所職員(女性) 渡辺カルラ「あっあの・・・。すみません、私、履修登録していないんです」
  教授の樋口は、まだパイプ椅子に座ったままのカルラを、優しい目で見た。
宇宙論1 教授 樋口「はは、確かに事務局からしたらあまり喜ばしくないとは思いますが。教員としては、興味があって見にきてくれるのは嬉しいものです」
市役所職員(女性) 渡辺カルラ「でも・・・」
宇宙論1 教授 樋口「大丈夫ですよ。今度私の研究室にきませんか。色々と本があって面白いですよ」
宇宙論1 教授 樋口「今はまだ、あなたには難しいかもしれませんが、ね」
  それが、渡辺カルラと”宇宙”との出会いだった。

〇散らかった研究室
  週末。二人は、樋口の研究室にいた。
市役所職員(女性) 渡辺カルラ「わあ・・・!大学の研究室ってこんな感じなんですね」
宇宙論1 教授 樋口「ええ、ラボによっても違いますがウチはこんなのです」
宇宙論1 教授 樋口「案外、散らかっているでしょう?女性には汚くみえたかもしれませんね」
市役所職員(女性) 渡辺カルラ「い、いえ・・・」
市役所職員(女性) 渡辺カルラ(生活感があって萌えるなんて言えない・・・)
  カルラは胸のときめきを隠すように、樋口に話しかけた。
市役所職員(女性) 渡辺カルラ「ここでは、どんなことをしているんですか?」
宇宙論1 教授 樋口「気になりますか?」
  樋口は、嬉しそうに答えた。

〇シンプルな一人暮らしの部屋
  カルラは、手持ちのパソコンでずっと調べ物をしている。
  さて、彼女も大学四年生になった。
  普通なら、就活と卒論で手一杯のはずの時期である。
  しかし、カルラの宇宙好きはさらに加速した。
  樋口のゼミ生が議論するような最新の話題も、知識として知っているレベル。
  卒業を後回しにするわけにはいかない。でも、知識欲は抑えられない。
  必然的に、ないがしろにされるのは就活ということになった。
  カルラのスマホが鳴った。
市役所職員(女性) 渡辺カルラ(うわ、お母さんだ・・・)
市役所職員(女性) 渡辺カルラ(どうせまた、就活の心配なんでしょ・・・)
市役所職員(女性) 渡辺カルラ(無視しちゃだめかな・・・)
「カルラ!大事な電話には出なさいって言ってるでしょ!」
市役所職員(女性) 渡辺カルラ(うげえ・・・留守電で説教するつもり?)
「どうせ聞かなかったことにするつもりなんでしょうけどね、ママはアナタのためを思って」
市役所職員(女性) 渡辺カルラ「はいはい、消音、っと」
  カルラは再びパソコンに顔を向ける。
市役所職員(女性) 渡辺カルラ「お、最近のトレンドは「宇宙生物学」なんだ!」

〇開けた交差点
  To Be Continued ・・・

次のエピソード:第2話 就活戦線、最悪です。

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