サトルクエスチョン

氷室凛

1.出会い(脚本)

サトルクエスチョン

氷室凛

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〇清潔な廊下
  綾樫第一高等学校
  入学式当日、その放課後
  ダダダダ・・・
  廊下を猛ダッシュする、ひとりの男子生徒がいた。

〇学校の部室
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「……おっ、来るぜ。 新入部員候補くん。」

〇清潔な廊下
  生活指導室前──
神宮 開 (ジングウ カイ)(ふぅ、ここがお悩み相談部──。)
神宮 開 (ジングウ カイ)(ここにいると噂の妖怪の尻尾を掴み、 必ず母さんの手がかりを見つけてみせる!)
  ガラッ
神宮 開 (ジングウ カイ)「たのもーー!!」

〇学校の部室
問間 覚 (トイマ サトル)「こんなのが新入部員候補ですか……。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「思った以上に声がでかい」
問間 覚 (トイマ サトル)「……いえ、気を取り直して。」
問間 覚 (トイマ サトル)「お悩み相談部へようこそ、新入生くん。 入学式当日に来るなんて、よっぽど新生活に不安でも?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「悩み!?そんなものはない!」
神宮 開 (ジングウ カイ)「俺はお前の正体を暴きに来たんだ! この妖怪め!!」
問間 覚 (トイマ サトル)「…………。」
問間 覚 (トイマ サトル)「えーと。」
問間 覚 (トイマ サトル)「妖怪。 きみの悩みは妖怪に関係してるということですね?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「だから悩みはないって言ってるだろ! とぼけるなよ、妖怪!もう噂になってんだ!」
神宮 開 (ジングウ カイ)「この学校には「お悩み相談部」っていう 変わった部活がある、しかもその部員は 初対面の相手でも次々に考えを言い当てる──」
神宮 開 (ジングウ カイ)「まるで、相手の心を読んでいるかのように!!」
神宮 開 (ジングウ カイ)「ここから導き出される答えはひとつ。 つまり、お前は──」
  ビシッ!
神宮 開 (ジングウ カイ)「相手の心を読む妖怪。 妖怪サトリだ!!」
問間 覚 (トイマ サトル)「…………。」
問間 覚 (トイマ サトル)「……えーと。」
問間 覚 (トイマ サトル)「ひとつめ。 人のことを指差さないでください。 ふたつめ。 妖怪なんて、いるわけないじゃないですか。」
問間 覚 (トイマ サトル)「高校生にもなって、なにを言っているんですか?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「──っ。 う、うるさい! 妖怪はいるんだ!」
神宮 開 (ジングウ カイ)「じゃなきゃ、母さんが……。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「まあまあ、落ち着けって新入生くん。 なんだか長くなりそうだし、とりあえず そこ座りなよ。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「むっ、なんだ、お前も妖怪の仲間か!? 俺は妖怪の指図なんて受けんぞ!」
問間 覚 (トイマ サトル)「先輩には敬語を使いましょうか、 新入生くん。 他の生徒が戻ってこないうちに、その口調を改めた方がいいですよ。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「ふん、数で脅そうというのか!? 俺はそんなものには屈しないぞ。」
問間 覚 (トイマ サトル)「どうやらわかってないようだから教えて あげますが、ここは生活指導室です。 そしてこのジンゴさんは、生活指導委員長です。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「なっ、生活指導委員……!? ここは「お悩み相談部」じゃ……。」
問間 覚 (トイマ サトル)「やっぱり教室名を見ていませんでしたね。 確かにお悩み相談部でもありますが、それは生活指導室を間借りしてやってるんですよ。」
問間 覚 (トイマ サトル)「年度始めの服装点検で他の生徒は出払って ますが、じきに戻ってくるでしょう。」
問間 覚 (トイマ サトル)「”生活指導委員”の生徒が自分たちのトップにそんな喋り方をする1年生を見たら、どう思うでしょうねぇ?」
問間 覚 (トイマ サトル)「あ、それと、生活指導委員といえば学内では生徒会に次ぐ権力です。」
問間 覚 (トイマ サトル)「高校初日から目をつけられたら大変でしょうねぇ。きみを見るたび、いろんな人の生活指導の血が騒いじゃうかもしれませんね〜。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「うっ……。」
神宮 開 (ジングウ カイ)「で、でも、その、ジンゴ、先輩だって…… 生活指導委員長とかいう割には髪色明るいんじゃあ……。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「ふっふっふっ、わかってないなあ新入生くんよ。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「校則には髪色に関して「過度に派手な色は 禁止とする」としか書かれていない。 具体的な色指定はされていないわけだ。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「つまり!!」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「俺より暗いやつはOK!! 明るいやつはNG!!」
神宮 開 (ジングウ カイ)「そ、そんな……そうなんですね……。」
問間 覚 (トイマ サトル)「この人はこういう人なんですよ……。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「ははっ、いいだろ別に。」

〇学校の部室
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「さて、少し打ち解けたところで、自己紹介でもしようか?」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「俺は仁悟未来(ジンゴミライ)。 さっきサトルが言った通り、生活指導委員の委員長をやってる。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「あ、生活指導委員って言っても、別に目をつけられたからってなんもないからな? さっきのはサトルの悪ふざけだから。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「お前のことを悪く言いふらすつもりもないし、安心しろよな。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「あと「お悩み相談部」なんてのを作ったのも俺な。一応そっちも部長やってるけど、俺もう3年だからさ。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「引退までの短い間だけど、よろしくな。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「ほい、じゃあ次は次期部長のサトルくん。」
問間 覚 (トイマ サトル)「2年の問間覚(トイマサトル)です。 きみが言った通りお悩み相談部の一員ですが、妖怪ではありません。」
問間 覚 (トイマ サトル)「それとよく間違われるのであらかじめ言っておきますが、僕は生活指導委員ではありません。 図書委員です。」
問間 覚 (トイマ サトル)「服装やバイトについての質問は僕にしないでください。 ……以上です。」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「まて、サトル。 大事なことを言っていない。」
問間 覚 (トイマ サトル)「大事なこと──?」
問間 覚 (トイマ サトル)「ああ。」
問間 覚 (トイマ サトル)「お悩み相談部は現在新入部員募集中です。 ──これでいいですか?」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「それ!よくできました!」
仁悟 未来 (ジンゴ ミライ)「ほい、じゃあラスト、新入生くん?」
神宮 開 (ジングウ カイ)「は、はい! この春から貴校に入学させていただきました、神宮開(ジングウカイ)です!」
神宮 開 (ジングウ カイ)「先程は先輩方にナメた口きいて申し訳ありませんでした!」
神宮 開 (ジングウ カイ)「まだまだ至らない点も多々あるでしょうが、よろしくお願いします!!」

次のエピソード:2.失踪

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