角を曲がる時は食パンを

すたん

読切(脚本)

角を曲がる時は食パンを

すたん

今すぐ読む

角を曲がる時は食パンを
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇住宅街
  服のデザインの課題に追われて、寝坊してしまった。
詩織(やばい、遅れる!)
  角を曲がると目の前に急に人影が・・・
  どん!
詩織「きゃっ!」
西園寺礼音「おっと!うわぁ!」
  そのまま相手を押し倒してしまう
西園寺礼音「・・・っつ、いたた・・・」
西園寺礼音「お怪我はないですか?」
  下敷きになったのは和服姿の男性
詩織(なんて綺麗な着物だろう)
  着物を食い入るように見る
詩織「あ、えっと。 私は、大丈夫です・・・」
詩織「いきなりぶつかってしまって、すみません」
西園寺礼音「いえいえ、私も前を見ていなかったので」
西園寺礼音「お怪我がなくて、よかったです」
  ・・・
西園寺礼音「あの・・・そろそろ降りて頂けますか?」
詩織「わぁ、ごめんなさい!」
  急いで身体を起こす。
詩織(私のバカ、着物に夢中になりすぎた)
詩織「重かったですよね!」
詩織「いや、その前に痛かったですよね!」
詩織「せっかくの着物が汚れたりしていませんか」
詩織「弁償・・・と言いたいのですが、 ・・・どうしましょうか?」
詩織(高そうな着物だ、お金どうしよ・・・)
西園寺礼音「ははは、焦らなくて大丈夫ですよ」
西園寺礼音「あなたがちゃんと胸の中に飛び込んでくれたので、痛くありませんでした」
西園寺礼音「それに、着物も・・・」
  着物をチェックし始める
詩織「あ・・・!!」
  着物の裾が切れてしまっていた。
詩織「本当にごめんなさい!」
西園寺礼音「あらら、これは破れてしまいましたね」
西園寺礼音「まあ、仕方ないです」
西園寺礼音「それより、あなたが無事でよかったです」
  にっこり笑う彼に、何も言えなくなる・・・
西園寺礼音「でも困ったな」
西園寺礼音「これから得意先にご挨拶する予定だったんだけど、このままだと流石に行けないな・・・」
詩織(私はなんてことを・・・)
詩織「あの、少しだけお時間頂けないですか?」
西園寺礼音「・・・?」
詩織「私の叔母が、服を作っていて」
詩織「もしかすると直せるかもしれません」
詩織「ちょうど今から行くところなのですが、いかがでしょうか?!」
西園寺礼音「そうでしたか。 お気遣いありがとうございます」
西園寺礼音「とても嬉しい提案ですが、 少し時間がないように思うので、 服を着替えます」
詩織「でも・・・」
西園寺礼音「安心してください、 近くに車を待たせてありますので」
  おもむろに携帯を取り出してどこかに電話する。
  すぐに外国車が私たちの傍に止まった。
  運転手が降りてきて、ドアを開ける。
  ──パタン
詩織「あの・・・!」
西園寺礼音「着物のこと、本当に気にしないで」
西園寺礼音「お話ができて楽しかったです」
西園寺礼音「ではまた」
  そう言って、去ってしまった。
詩織「行っちゃったよ・・・」
詩織「名前も聞いてないのに・・・」
詩織「あっ! 早く叔母さんのとこ行かなきゃ!」

〇職人の作業場
  叔母のアトリエにて
洋子さん「詩織、遅いわよ」
洋子さん「先に新作の見本を見たいって言ったの、詩織でしょ」
詩織「ごめん、朝ちょっと、色々あったのって、」
詩織「わぁ、これすごい素敵!」
洋子さん「あんたって子は・・・ほんとに」
  机の上には、様々な型紙や布、そして完成サンプルがあった。
詩織「先生のデザイン、私すごく好きなんだよね!」
詩織「遂に会えるだなんて、幸せすぎる・・・」
洋子さん「しおりはずっと一筋よね」
洋子さん「目の前でパターンを見てにやにやしないように、気をつけなさいよ」
詩織「わかってるって、うふふ」
詩織「あれ、時間過ぎてない?」
洋子さん「さっき、少し遅れるって連絡があったわ」
洋子さん「そろそろだと思うけど」
  ──ピンポーン
詩織「来た!」
洋子さん「はーい」
西園寺礼音「遅れてしまい申し訳ありません」
洋子さん「いえいえ、遠くからご足労頂いてありがとうございます」
詩織「えええええ!」
詩織「さっきの人!」
  思わず指を指してしまった
詩織(ってことはもしかして・・・)
洋子さん「これしおり、指を指さないの」
西園寺礼音「あはは、これは驚きました」
西園寺礼音「叔母様は、洋子さんのことだったんですね」
西園寺礼音「先ほどたまたま道でお会いしたのです」
西園寺礼音「まさか洋子さんの姪っ子さんだとは知らず」
洋子さん「そうだったのね」
洋子さん「詩織、この方が、西園寺先生よ」
詩織(やっぱり)
洋子さん「あなたの大好きなデザイナーさんよ」
詩織「ちょっと、大好きだなんて言わないでよ!」
詩織(まさかだと思ったけど・・・)
詩織(ずっと憧れてた人が、さっきぶつかった人だっただなんて)
西園寺礼音「こんな綺麗な女性に大好きだなんて言われると、照れますね」
洋子さん「詩織には、服飾学校に通いながら、 ここで手伝ってもらっているのよ」
洋子さん「この子、昔から服には夢中でね」
詩織「叔母さん、余計なこと言わないで・・・!」
西園寺礼音「そうでしたか」
西園寺礼音「今日も熱心に観察されていたので、 納得しました」
  そう言って、詩織にウィンクする
詩織(ウィンクした、 西園寺先生がウィンクしたよ!)
洋子さん「お茶を持ってくるわ」
洋子さん「先生、先にご覧になってくださいな」
洋子さん「詩織、失礼のないようにね」
詩織「え、置いてかないで」
  ・・・
  西園寺先生は机に近づきながら
西園寺礼音「詩織さんって名前なんですね」
詩織「あの、着物・・・」
西園寺礼音「洋服も悪くないでしょ」
  いたずらっぽく笑う
西園寺礼音「僕のデザイン、気に入ってくれてたってほんとですか?」
詩織「はい!」
詩織「大胆かつ繊細なデザインは唯一無二で、 毎回新しい要素を入れながら、だけど奇抜過ぎない丁度いいところが最高で、」
詩織「特に体型や性別に囚われないデザインのあり方、その姿勢が、たまらなく好きなんです」
詩織「あと、質感にこだわった・・・」
西園寺礼音「またそんな目で僕を見つめる」
詩織(わああ、また思わず夢中になってしまった・・・)
西園寺礼音「せっかくだから、この後僕のアトリエにも来てみませんか」
詩織「いいんですか?」
西園寺礼音「普段は滅多に人を入れないんだけど、 君からは面白い意見が沢山聞けそうで」
  私を覗きこみながらささやく。

〇幻想
西園寺礼音「もっと、色んな君を知りたい」
西園寺礼音「僕のデザインに君が感じたこと、思うこと、 僕に聞かせて」
  西園寺先生への思いは、更に深みにはまりそうです。

コメント

  • 自分が好きな世界の憧れの人がこんなに素敵な人だったら。
    とにかく嬉しいだろうなぁ。
    その人が描くデザインも、その人も、好きになれたら言うことなしですね。

  • なかなか普通じゃ考えられないこういった出会い方や再会をすると、運命感じてしまいますね。食パンと共にでかけるのは、私にとっては、当時よくやっていた学生時代を思い出し懐かしさもありました。私も運命の出会いしたかったな〜♪

  • ファッションって楽しいですよね。
    自分でデザインした服が出来上がった時の喜びとか、かなり嬉しいものです。
    それを好きって言ってもらえると、めちゃ嬉しいと思います!

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ