読切(脚本)
西条 ログフライ「秋のぉー」
西条 ログフライ「夜長にぃー」
西条 ログフライ「銅鑼の音ぉー!!!」
西条 ログフライ「ごおおおおおおおおんんん!!!!!」
西条 ログフライ「ッハッハッハッハッハッハッハ」
〇湖のある公園
黒木 橙華「ちょっともーーー!!!」
西条 ログフライ「っっっっっ!」
西条 ログフライ「なんだどうした?」
黒木 橙華「いい加減にして!」
黒木 橙華「そんなのちっとも風流じゃないわ!」
西条 ログフライ「そうか?」
西条 ログフライ「しん、と澄んだ夜空に響き渡る轟音は、風流じゃないか」
西条 ログフライ「古池に響く蛙の音みたいにな」
黒木 橙華「それ、全然違うと思うけど」
黒木 橙華「「風流な場所で風流なことが言いたい」とか言って呼び出しといて」
黒木 橙華「もっとマシなこと言いなさいよ」
西条 ログフライ「銅鑼の音はお気に召さなかったか」
西条 ログフライ「そうだな」
西条 ログフライ「黒木、手を貸して」
黒木 橙華「へっ?ちょっと、」
西条 ログフライ「伸ばす指先も霞む闇夜、」
黒木 橙華「・・・」
西条 ログフライ「繋いだ相手は君か他人か、」
西条 ログフライ「紛うことなどないさ何故なら、」
西条 ログフライ「君の指にはマメがある」
黒木 橙華「離してっ!」
西条 ログフライ「ッハッハッハ」
黒木 橙華「もーーー」
西条 ログフライ「恥じることはない、マメは努力の証だ」
黒木 橙華「見た目と声だけはかっこいいんだから・・・」
黒木 橙華「一瞬見とれちゃったじゃない」
西条 ログフライ「?」
黒木 橙華「なんでもないっ」
西条 ログフライ「さあ、もう遅い」
西条 ログフライ「帰るとしよう」
〇女の子の一人部屋
黒木 橙華「ふう、さっぱりした」
黒木 橙華「あ、メッセージ」
西条のアホ「”とても有意義な時間だった”」
西条のアホ「”僕という人間に深みがでたよ”」
西条のアホ「”おでんで言ったら、火を止めて一晩おいた感じだ”」
黒木 橙華「はぁ・・・」
西条のアホ「”次の土曜日も空いているだろう”」
西条のアホ「”次はピー・シー・パークに行くぞ”」
黒木 橙華「ちょっ、遊園地!?」
黒木 橙華「”なんで私があんたと遊園地行かなきゃならないのよ”」
西条のアホ「”┐(´д`)┌”」
西条のアホ「”駅前に9時だ”」
黒木 橙華「っ!」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「こんなの、デ、デートみたいじゃない」
黒木 橙華「あいつは何とも思わないわけ?」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「・・・何着ていこう」
〇遊園地の広場
黒木 橙華「結構人いるわね」
西条 ログフライ「うむ」
西条 ログフライ「黒木、まずはあれに乗るぞ」
黒木 橙華「乗らないわよ」
西条 ログフライ「乗らない!?」
黒木 橙華「私絶叫系とか、ダメだから」
西条 ログフライ「遊園地に来てジェットコースターに乗らないなんて、」
西条 ログフライ「寿司をとったのにマグロを食べないようなもんじゃないか」
黒木 橙華「別に、そういう人いるでしょ・・・」
黒木 橙華「全然、下で待ってるから」
黒木 橙華「乗ってきていいわよ」
西条 ログフライ「・・・いや、あれは別にいい」
黒木 橙華「いいの?」
西条 ログフライ「僕も今日はサーモンの気分だ」
西条 ログフライ「それよりこれ!」
西条 ログフライ「趣のある兎がいたぞ」
黒木 橙華「ラビー・アップデートくん・・・」
黒木 橙華「か、かわいい・・・」
ショップ店員「1,400円になります」
西条 ログフライ「どうもありがとう!」
黒木 橙華「ちょっ、買ったの?」
西条 ログフライ「こっちが黒木」
黒木 橙華「お、お揃いなの?」
西条 ログフライ「それは結果論だ」
西条 ログフライ「僕もこの子が気に入った」
黒木 橙華「・・・ありがと」
黒木 橙華「・・・あれ?」
黒木 橙華「あんたのそれ、よく似てるけど違うやつじゃない?」
西条 ログフライ「・・・?」
黒木 橙華「えーと、その子はラビー・ラブラブデートちゃん?」
西条 ログフライ「ラブ・・・!?」
西条 ログフライ「──」
黒木 橙華「いろんなのがいるのね」
黒木 橙華「そっちも可愛い」
西条 ログフライ「あ、ああそうだろ」
西条 ログフライ「よし、次だ!」
〇ショッピングモールのフードコート
西条 ログフライ「飯はここだ!」
西条 ログフライ「僕が席を探してくるから、黒木は並んでてくれ」
黒木 橙華「あ、ちょっと!」
黒木 橙華「もー」
黒木 橙華「ん、メッセージ」
西条のアホ「”席は押さえたぞ”」
西条のアホ「”フードコートが平城京だとしたら”」
西条のアホ「”西大寺のあたりだ”」
黒木 橙華「・・・左奥ね」
黒木 橙華「”あんたは何を食べるの?”」
西条のアホ「”僕の食べたいものは、君と同じだ”」
西条のアホ「”これまでも、これからも”」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「”私激辛脳ミソシャットダウンカレーにするけど”」
西条のアホ「”僕はまだ残業したい”」
西条のアホ「”シャットダウンしない程度のカレーで頼む”」
黒木 橙華「・・・一口食べさせてやろ」
〇西洋の円卓会議
黒木 橙華「・・・」
西条 ログフライ「女神様・・・」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「なんであんたは着替えてないのよ!」
黒木 橙華「コスプレスタジオ行きたいって言ったのあんたでしょ!」
西条 ログフライ「そうだが?」
黒木 橙華「私にだけこんな格好させておいて、」
西条 ログフライ「よく似合ってるぞ黒木」
黒木 橙華「へ?そ、そうかな」
西条 ログフライ「こっち、目線くださーい」
黒木 橙華「ちょちょっと、」
黒木 橙華「・・・こうかな」
西条 ログフライ「・・・」
黒木 橙華「撮りすぎ!」
黒木 橙華「西条のコスプレも見たかったな」
黒木 橙華「ていうかあんた、いつもその服ね」
西条 ログフライ「僕はこの服しか着ない」
西条 ログフライ「7着ある」
黒木 橙華「何よそのこだわり・・・」
〇公園のベンチ
黒木 橙華「遊園地も結構楽しいわね」
黒木 橙華「・・・フフ」
黒木 橙華「ぷにぷにだ」
西条 ログフライ「そんなに気に入ったのか」
黒木 橙華「かわいいじゃない、かばんにつけとこ」
黒木 橙華「・・・ねえ」
黒木 橙華「・・・あんたも、つけとけば?」
西条 ログフライ「つけるわけないだろう」
黒木 橙華「・・・」
西条 ログフライ「こんなゆるい世界の住人を」
西条 ログフライ「それに、並んで歩いたら変な誤解を生むぞ」
西条 ログフライ「梨の木の下で帽子を正すことはない」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「そんなにイヤなわけ?」
西条 ログフライ「しかし、そこまで気に入ったのなら」
西条 ログフライ「うちの兎も持っていくといい」
黒木 橙華「もういいわよ!」
〇神社の石段
黒木 橙華「・・・」
西条 ログフライ「やっぱりここか」
黒木 橙華「!」
黒木 橙華「何よ」
黒木 橙華「あんたなんか、」
西条 ログフライ「ごめん、黒木」
黒木 橙華「!」
西条 ログフライ「言葉が過ぎた」
西条 ログフライ「ごめん」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「ラビーくん、私は嬉しかったんだから」
西条 ログフライ「!」
黒木 橙華「あんたは私とお揃いは嫌みたいだけど」
西条 ログフライ「・・・」
黒木 橙華「そもそもあんた」
黒木 橙華「いつもいつも連れ回して」
黒木 橙華「私のこと、どう思ってるのよ」
西条 ログフライ「・・・」
西条 ログフライ「僕の人生が・・・」
西条 ログフライ「僕の人生がおでんだとしたら!君は!」
西条 ログフライ「大根だ!」
黒木 橙華「・・・!」
西条 ログフライ「君は、そういう存在だ」
西条 ログフライ「大根がないとおでんは成立しない」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「だからそれ、家庭によるじゃない」
西条 ログフライ「そうだな」
西条 ログフライ「だが、他の家庭のことは知らない」
西条 ログフライ「僕の家だ」
西条 ログフライ「僕の家のおでんは、大根なしでは成立しないんだ」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「・・・そっか」
西条 ログフライ「・・・黒木、」
西条 ログフライ「黒木・・・!」
西条 ログフライ「黒木橙華!」
黒木 橙華「な、何よっ」
西条 ログフライ「それだけじゃない」
西条 ログフライ「僕はっ!」
西条 ログフライ「同時に僕が、君にとっての大根でありたいっ」
西条 ログフライ「そう、思っている」
黒木 橙華「・・・!」
黒木 橙華「それって・・・」
黒木 橙華「どんだけ不器用なのよ」
黒木 橙華「もー・・・」
黒木 橙華「・・・いいわ」
黒木 橙華「私から言ってあげる」
西条 ログフライ「黒木・・・」
黒木 橙華「あんた、」
黒木 橙華「私の彼氏になりなさい」
西条 ログフライ「か、辛子!?」
黒木 橙華「へ!?」
西条 ログフライ「辛子は、じゅ、重要、だよな!?」
西条 ログフライ「僕の家のおでんには、必ずついているが・・・」
西条 ログフライ「な、なくても食べられる?」
黒木 橙華「・・・」
黒木 橙華「ぷっ」
黒木 橙華「アハハハハハハハハ」
西条 ログフライ「な・・・」
黒木 橙華「私の人生がおでんなら、」
黒木 橙華「あんたは辛子よ!」
西条 ログフライ「ど、どう解釈すれば」
黒木 橙華「考えなさい!」
黒木 橙華「ホントに辛子かもね」
黒木 橙華「こいつがいなくちゃ、刺激がなくてつまんないわ」
二人とも素直じゃないなぁ。
お互い何かを言ってくれるのを待ったり、結局遠回りになってしまいますが、それも恋の楽しみの一つなのかもしれませんが。
西条くん、唯一無二の個性強すぎなキャラですね。ヤミツキになりそうです。ちなみに私もおでんは大根が最重要です。辛子もマストです。
おでんの大根という求愛の仕方、なんだか心にしみいりますね。いわゆるキザな台詞より私はすごく好きです。それに一緒にいて飽きない、からしのようにピリッとアクセントがある人って最高です!