エピソード8(脚本)
〇路面電車のホーム
〇路面電車の車内
秋山裕介「なんでこんなときに母ちゃんが倒れたりすんだよ・・・」
〇昔ながらの一軒家
井戸端学「ごめんくださーい!」
霧島由美「あら、あなたさっきの。 まだお菓子足りなかったの?」
井戸端学「いえ、お菓子はもういいんです。 それよりも、ロウソクをください!」
霧島由美「ロウソク?」
〇タクシーの後部座席
高速で携帯をいじっている伸生。
伊藤正樹「いったいどうするつもりなんだ?」
伊藤伸生「SNSに拡散してんだ。今夜19時、ありったけのロウソクを持って、大沼国定公園に来てほしいって」
伊藤正樹「ロウソク? そんなもの何に使うっていうんだ?」
伊藤伸生「ロウソクの灯りは人の灯りと一緒だ」
伊藤伸生「灯りの数だけ人の命があって、人の命の数だけ、和美先生を見守る人たちがいる」
伊藤正樹「・・・?」
伊藤伸生「そういうのを、和美先生たちに気づいてほしいと思って」
伊藤正樹「よく分からんが・・・今時ロウソクなんてもっている家庭の方が・・・」
伊藤伸生「今日は7月7日だよ」
伊藤正樹「そうか! ロウソクもらい!」
伊藤伸生「7月7日のロウソクもらいは、すっかり北ハロウィンみたいに言われてるけど、元々はどこの家庭でもロウソクを立てたんでしょ?」
伊藤正樹「それはそうだが、ロウソクもらいの風習は、道内でも函館を含む一部の地域だけだぞ」
伊藤伸生「大丈夫だよ、それでも」
伊藤伸生「だって函館には、和美先生の教え子も、和美先生のお父さんの元教え子も、たくさんいるでしょ?」
心配する正樹に、親指をグーにする伸生。
〇総合病院
自動ドアの横には七夕の笹飾りがあり、沢山の短冊が吊り下げられている。
短冊のうちの一つにそっと手を触れる美砂。
『裕介のバカが、少しでも治りますように 美砂』
美砂「・・・・・・」
秋山裕介「ハァッ・・・ハァッ」
美砂「な、なんでここに!?」
慌てて背中で短冊を隠す美砂。
秋山裕介「またお前かよ! お前こそなんでここにいんだ!」
美砂「こ、ここうちの病院だもん!」
秋山裕介「マジか!」
秋山裕介「い、いや! そんなことより、昨日からうちの母ちゃん入院してんだろ!?」
秋山裕介「生きてるか!?」
美砂「あっ。秋山さん。 確か302号室に」
美砂「ちょっ、ちょっと!」
〇病室(椅子無し)
秋山雫「あら、裕介。おひさ」
秋山裕介「おひさじゃねーよ! 元気そうじゃねえか!」
秋山有紀「大変だったのよ、私が帰ってきたときには、お腹痛いって騒いで」
秋山雫「そうよ、あんたいないし、お父さん出張だし、仕方なく救急車呼んでねえ」
秋山有紀「そしたら、ただの食べ過ぎだって」
秋山有紀「まったく、お母さんの食い意地もどうにかしてよ!」
秋山裕介「わざわざ大沼から飛んで帰ってきたんだぞ!」
秋山裕介「くっそ! 心配して損した! むかつくむかつくむかつく!」
秋山雫「あんま怒ってると禿げるわよ」
秋山裕介「母ちゃんが原因だろうが!」
秋山有紀「だから、なんで大沼なの?」
秋山雫「まさか駆け落ち!?」
秋山裕介「ちげーよ!」
秋山雫「あんた、ここのお嬢さんの美砂ちゃんとなら駆け落ちしてもいいわよ。かわいいし、お金持ちだし」
秋山裕介「だからちげーって!」
あ、あの!
〇大きい病院の廊下
顔を赤らめた美砂が、廊下に立っている。
〇病室(椅子無し)
美砂「この書き込みって・・・?」
そう言って、美砂が携帯の画面を見せる。
〇総合病院
〇病室(椅子無し)
秋山雫「じゃあ、あんたたちは和美先生と、そのお父さんを助けるために・・・?」
秋山裕介「ロウソク千本集めようって、伸生と学と約束したんだ!」
秋山雫「えらい! 感動した! さすがは我が息子! 千本なんて言わず、一万本集めなさい!」
秋山裕介「できるかよ!」
秋山雫「有紀。あんた、高校の友達に連絡できるでしょ? すぐに連絡網回して」
秋山有紀「了解!」
秋山雫「それと、美砂ちゃん」
美砂「は、はい!」
秋山雫「あなたは裕介と一緒に先に大沼に行って、現地で声かけてロウソク集めて」
秋山雫「私たちも後から向かうから」
美砂「は、はい!」
秋山裕介「てか、なんで母ちゃんが指示してんだよ! 病院はいいのかよ!」
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