エピソード1 執行(脚本)
〇テレビスタジオ
アナウンサー「では次のニュースです」
アナウンサー「昨夜、千代田区の公園で殺傷事件がありました」
アナウンサー「被害者は安藤美花(40)さん」
アナウンサー「犯人は現在も逃亡中です」
アナウンサー「遺体には無数の刺し傷があったとのことです」
アナウンサー「竹田さん。 本当に痛ましい事件ですね」
竹田弁護士「ええ、警察には一刻も早い犯人の逮捕をお願いしたいものです」
アナウンサー「犯人が捕まったら、例の新量刑が適用されますかね」
竹田弁護士「ああ、無期異世界転生ですね。 あり得るでしょう」
竹田弁護士「死刑でなければ、初の適用の可能性は高いです」
アナウンサー「なるほど。早く捕まって欲しいですね。 近隣にお住まいの方々はなるべく外出は控えて下さい」
〇明るいリビング
羽原 貞治「え! そんな事件があったんだ!」
羽原 貞治「この現場の公園って、兄貴が夜にランニングしてる所だよな」
羽原 豊「おはよう貞治」
羽原 貞治「兄貴おはよう!! なあ、ニュース見た!?」
羽原 貞治「あの公園で殺人事件だって!! 犯人捕まってないって!!」
羽原 豊「あ、ああ、その事なんだけど・・・」
羽原 豊「い、いや、なんでもない」
羽原 貞治「な、何だよ!? まさか犯人見たのか!!」
羽原 豊「ん、いや、貞治も気をつけろよってだけさ」
羽原 貞治「それだけかよ」
羽原 豊「とにかく今日は家にいた方がいい。 わかったな?」
羽原 貞治「チェッ、つまんねー」
羽原 貞治「ん?誰だろ? 俺出るね!!」
羽原 豊「あ、おいっ!?」
〇シックな玄関
羽原 貞治「どなたですか?」
「すいません、警察です」
羽原 貞治(け、警察!? 何の用なんだ!?)
羽原 貞治「はーい、今開けます!!」
警官「君は羽原 豊くん・・・じゃないよね?」
警官「ちょっとお兄さんに話があるから呼んできてくれないかな?」
羽原 貞治「はいっ!! 兄貴!!警察の人が来たよ!!」
羽原 貞治(きっと兄貴、昨日の事件で何か見たんだ!! 警察が来るからって俺にも秘密にしてたんだな)
羽原 豊「俺に何の用ですか・・・!?」
警官「羽原 豊さん、あなたには昨日の殺人事件の犯人である容疑がかかっております」
警官「つきましては、お話を疑いたく署までご同行お願いします」
羽原 貞治「あ、兄貴、どういうことなんだよ!?」
羽原 豊「貞治、きっとこれは何かの間違いだ」
羽原 豊「お兄ちゃん、ちょっと誤解を解いてくるから、家で待っててくれ」
羽原 貞治「う、うん・・・」
羽原 豊「わかりました。同行します。お話したいこともありますし」
警官「ありがとうございます。 では、こちらへ」
羽原 貞治「兄貴・・・」
〇テレビスタジオ
アナウンサー「ここで速報です」
アナウンサー「今朝お伝えしていた通り魔殺人事件の容疑者として」
アナウンサー「警察は同区に住む羽原 豊 容疑者(18)を逮捕した模様です」
アナウンサー「調べによると現場から羽原容疑者の指紋のついた凶器が見つかったようです」
〇明るいリビング
羽原 貞治「そ、そんな・・・」
羽原 貞治「嘘だろ・・・兄貴」
〇地下の部屋
警官「羽原、面会だ」
羽原 貞治「兄貴・・・」
羽原 豊「貞治か・・・ 悪いな。心配かけて」
羽原 貞治「もう俺何が何だか・・・」
羽原 貞治「殺人なんてやってないよな!?」
羽原 豊「貞治・・・」
羽原 豊「ああ、俺はやってない。 きっと裁判で無罪になるさ」
羽原 豊「でも、どんな結果が出ても貞治だけは最後までどうか俺を信じていてほしい」
羽原 貞治「兄貴!?なんだよソレ!!」
警官「時間だ。退室しろ」
羽原 貞治「兄貴!!」
羽原 豊(・・・)
〇法廷
主文!
被告人を無期異世界転生に処す!!
ついに求刑されたぞ無期異世界転生が
18歳があんな凄惨な事件を起こしたなんて
当然の報いだ
静粛に!!
羽原 貞治(兄貴、本当に殺人犯だったのかよ)
〇オフィスの廊下
羽原 貞治「兄貴!!」
羽原 豊「貞治・・・」
羽原 貞治「無罪にならなかったじゃん!!」
羽原 貞治「兄貴の嘘つき!! 人殺し!!」
羽原 貞治「俺を騙した兄貴なんか異世界でもなんでも行ってしまえ!!」
羽原 豊「・・・」
羽原 豊(貞治・・・すまない・・・元気でな)
〇ホストクラブ
店長「羽原ぁ!! なんなんだ!!テメーの接客は!! キャストからも苦情来てんぞ!!」
羽原 貞治「すんません」
店長「チッ、テメーみてーな犯罪者の身内を雇ってやってんだコッチは。最低限の仕事はしやがれ」
羽原 貞治「はい」
兄貴の無期異世界転生の有罪判決から6年
俺たち家族の日常は崩れ、犯罪者の身内の烙印を押されて一家は離散した。
俺は中学卒業後、その日暮らしの生活を続け、今はこの店のボーイとして働いている。
兄貴を恨もうにも、張本人はとっくに刑が執行されて転生している。
俺はただ淡々と日々を過ごしている。
店長「チッ、羽原の野郎」
カランカラン
野原検事総長「店長久しぶり」
店長「これはこれは! お久しゅうございます。野原様!」
野原検事総長「ママとVIP室行きたいんだけど、いける?」
店長「ええ、大丈夫です。 ただ少々お時間をいただけますでしょうか」
野原検事総長「いいよ」
店長「おい、羽原!!」
羽原 貞治「はい!?」
店長「お前は大急ぎでVIP室の準備をしろ!! 俺はママを呼んでくる」
羽原 貞治「わかりました」
羽原 貞治(あの人って)
羽原 貞治(確か今の検事総長だよな)
〇豪華な客間
羽原 貞治「ふぅ、準備完了」
羽原 貞治「しかしVIP室は無駄に豪華だな。ピアノまである」
羽原 貞治「ん?このピアノ、ハリボテだぞ!! 見栄っ張りの店長らしいな」
羽原 貞治「うおっ!!」
羽原 貞治「いてて、足が滑った」
靖子ママ「野原さん久しぶりねぇ」
野原検事総長「悪いなママ」
店長「では、野原様 御用があればお呼びください」
羽原 貞治「ま、まずい!!もう来た!! 出たらどやされるぞ。 仕方ない、このままピアノに隠れているか」
靖子ママ「ウチに来たって事は、悩んでる事あるんじゃない?」
野原検事総長「ふっ、ママには敵わないな」
野原検事総長「今日は総理に呼び出されてね」
靖子ママ「まっ、熊井総理に!?」
靖子ママ「私あの人好きよ。 頭も良さそうで決断力もあるし」
野原検事総長「まあ、間違ってはないな」
野原検事総長「だが、あの人は肚の底が読めなくてね」
野原検事総長「今日の話は無期異世界転生の件だったんだが」
羽原 貞治(無期異世界転生!?)
靖子ママ「ああ、あれねぇ。この数年ですっかり慣れちゃったけど、変な刑よね」
靖子ママ「で、どんな話だったの?」
野原検事総長「それが無期異世界転生者の数を増やせってんだよ」
靖子ママ「あら?なんでかしら?」
野原検事総長「たしかに無期異世界転生は懲役と比べて囚人を管理するコストもかからない」
野原検事総長「それに死刑ほど世論も反発しない」
野原検事総長「だが、既に執行数はどんどん増えているし、刑務所も充分に空きがある」
野原検事総長「なのに総理は反論も許さないような冷たい目をしててね、少し怖くもなった」
靖子ママ「そうなの。 検事総長も大変ねぇ」
靖子ママ「そもそもなんで異世界転生って犯罪者への刑になってるの?むしろなんだか楽しそうなのに」
靖子ママ「私なんかもお迎えが近くなったら転生してやり直したいくらいよ」
野原検事総長「ママ、ここだけの秘密だけど・・・」
野原検事総長「あの刑は実際は転生じゃないんだよ」
靖子ママ「そうなの!?」
野原検事総長「概念としてそういう名前になってるけど、ただ別の世界に今の自分のまま送られるだけだ」
羽原 貞治(なっ!!なんだって!?)
野原検事総長「言わば島流しだな」
野原検事総長「ここ数年のプロパガンダで世間では割と軽い量刑のイメージになってるけどね」
野原検事総長「それに冤罪だと取り返しがつかないしな・・・」
靖子ママ「そうだったのねぇ」
野原検事総長「噂だと、最初に無期異世界転生になった事件、あれも冤罪だったって話だ」
靖子ママ「それって通り魔殺人の事件よね。犯人が18歳ってことでも話題になった」
羽原 貞治「兄貴の事件が冤罪!?」
羽原 貞治「だから兄貴はあの時・・・ 信じて欲しいって俺に・・・」
羽原 貞治「それなのに、俺は兄貴になんて事を」
野原検事総長「少し喋りすぎた。 ママ、この事は他言無用で頼む」
靖子ママ「ええ、もちろん。 さ、仕事の事は忘れて呑んで」
〇ホストクラブ
野原検事総長「じゃあ店長、また来るよ」
店長「ええ!またお待ちしております」
羽原 貞治(・・・)
羽原 貞治(兄貴!!)
〇入り組んだ路地裏
野原検事総長「ふぅ・・・」
???「野原様」
野原検事総長「んっ!?」
野原検事総長「ぐはっ」
野原検事総長「なんなんだお前は!?」
羽原 貞治「さっきの話は本当か!?」
野原検事総長「さ、さっきの話!?なんの事だ!!」
羽原 貞治「あんたがママに話していた内容だ!! 最初の無期異世界転生者が冤罪だって話!!」
野原検事総長「な、なんでその話を知って・・・」
野原検事総長「ぎっ!!」
羽原 貞治「いいから!!一体どうなんだ!!」
野原検事総長「ひっ、わかった。話すから殴らないでくれ」
野原検事総長「本当だ。といっても私の前々任の検事総長の頃の話だから、詳細は私にも分からないんだ」
野原検事総長「お前はどうしてそんな事を知りたがるんだ!?」
羽原 貞治「俺は無期異世界転生になった羽原豊の弟だ」
野原検事総長「なっ!?」
羽原 貞治「冤罪だって分かっているなら、何故そのままになっているんだ」
野原検事総長「そ、それが当時の記録はほとんど残っていないんだ」
野原検事総長「それに異世界転生は片道切符、原則戻ってくる事はできないし、こちらから干渉出来ない」
羽原 貞治「なんだと!?」
野原検事総長「本当だ!!」
野原検事総長「冤罪でも何でも執行されたら詰みなんだよ」
羽原 貞治「・・・」
羽原 貞治「俺は兄貴が信じて欲しいと言ってくれていたのに、最後裏切ってしまった」
羽原 貞治「どんな手を使っても兄貴に謝りたい!!」
羽原 貞治「だから、あんたの力で」
羽原 貞治「俺を・・・」
羽原 貞治「俺を無期異世界転生にしてくれ」
真面目なタイトルとは一変、
すごい設定が来た!!
引き込まれました、また読ませていただきます!!😆
異世界で何が起きているんでしょう……
殺人事件の真犯人は!?
わらやまさんこんにちは!
お兄さんの冤罪で真実が気になりました!
謎が沢山散りばめられていそうで面白かったです✨