熱い視線、熱い顔、熱いカレー、それと甘いバナナジュース。

う。

甘口カレー(脚本)

熱い視線、熱い顔、熱いカレー、それと甘いバナナジュース。

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〇おしゃれな食堂
  今日もいた。
  いつも学食の窓側
  1番端っこのカウンターに座る男性。
  うちの学園内では見ないのに
  お昼の時間になると
  だいたい同じ席に座っている。
  私は、それを確認した後に
  学食の自動販売機のボタンを押して
  カレーの食券を取る。
私「すみません、これお願いします」
  この待っている間も
  つい気になって男性を眺めた。
  誰かを待っている訳では無い、と思う。
  いつもお昼が終わる頃に、
  1人で学食を出ていくから。
  だいたい1人で、自動販売機の中で
  一番人気のないだろう
  バナナジュースのパックを持って
  外を眺めたり、スマホを見たりするだけ。
  私は、出てきたカレーを受け取って、
  意味もなく近くのテーブル席に座り、
  課題を進めるふりをして彼を眺めた。
  何か好きなメニューがあってこの学食に来てるのかな、とか。
  あのバナナジュース、美味しいのかな、とか。
  聞きたいことばかりが膨らんで、実際に聞くことはなく想像だけしている。
  この一連の行動に、深い意味は無い。
  無い、はずだ。
  不意に、バチ、と目が合った。
私(え、うそ・・・・・・っ!)
  私は慌ててすぐに目を逸らす。
  なんで?いつもは振り返らないじゃん。
  外を眺めて、
  ガラスから見える子供に手を振って、予鈴がなると立ち上がって学食を出ていく。
  そうじゃなかった日は、あの男性に気付いてから今まで1度も見ていない。
  そろ、と視線を上にすると、あの席にはもう男性はいなかった。
  また広げただけの課題へと視線を移す。
  良かったような、悲しいような。
  ぐるぐる胸の奥が混ざって、モヤモヤした。
「相席いいですか?」
私「ぁ、どうぞ・・・・・・」
  まだ空いてる席があるのになんでわざわざ。
  そうは思いつつ
  つい咄嗟に返事をしてしまったが
  目の前に映り込む
  あのバナナジュースに顔を上げた。
男性「こんにちは。 ごめんね、急に・・・・・・」
私「いえっ・・・・・・! すみません・・・・・・!」
  なんで謝ったんだ、私。
  謎に緊張して、鼓動がうるさい。
  カタン、と手前に座り
  私を見ると、ふわりと微笑んでくれる。
  普段離れて見ていた分、この距離の近さや
  改めて間近で見る整った顔に、
  ドキドキが止まらない。
  このまま死んでしまうのかもしれない。
  そう思っていたら、男性が口を開く。
男性「その、いつも俺のこと見てたでしょ?」
男性「なんでかなぁって」
  『目が合った時に、
  このタイミングだ、と思って。』
  と笑う男性に胸がぎゅっと締め付けられた。
  なんなの、これ。
  知らない、知らない!
  広げた課題を
  小さく小さく自分の所へ寄せながら
  必死に紡ぐ言葉を考える。
私「え、と、 深い、意味はなくて・・・・・・ その、不愉快でしたよね、 ごめんなさい・・・・・・」
  こんな言葉を聞くと、
  彼は驚いたように目を見開いて、
  あわあわと手を揺らす。
男性「えぇ!いや、ごめん。 謝らせる気は無かったんだ、 本当にただの好奇心で・・・・・・」
  一口も進んでいないカレーを
  スプーンでつつく。
  逆に謝らせてしまった。
  申し訳なさに、キュッと
  先程とは違う痛みが胸を締め付ける。
  どうしよう。何も話せない。
  聞きたいこと、不思議なことは、
  沢山あったはずなのに。
  数秒の沈黙が耐えられず、
  喉で突っかかっている言葉を
  無理やり捻り出した。
「あの、」
  重なる声に、また、しばらくの沈黙。
  やばい、ヤバいっ!
  やっちゃった。どうしよう。
  焦りながら様子を確認しようとすると、
  あははっと愉快に笑う声が聞こえた。
  きゅう、と自分の喉が鳴った。
男性「あはは、ごめん、 あまりに慌てるから、面白くて。 どうしたの?」
私「いっいえ、 特に意味のあることは、何も・・・・・・」
男性「そうなの?じゃあ、 重なっちゃったのは、運命だね」
  にこ、と笑う男性に、
  感情が込み上げて溢れ出してしまいそうだ。
  顔が熱くて、
  なんとか誤魔化そうとカレーをつつく。
  ・・・・・・!そうだ。
  この人の言いかけたことはなんだったのだろう。
  聞こうと顔を上げたら、
  また視線があってしまって、
  言うはずだった言葉は出てこなかった。
男性「カレー、食べないの?」
私「っ!」
  そう言われて、ようやく口に運んだカレーは、
  どんな味がしたか、分からなかった。

コメント

  • 私はお付き合いしてる方であっても、毎回会うたびにはじめの30分くらいはドキドキしてしまい、彼女のようにおかしな様子になってしまうので、とっても共感しました。好きな人と話すのって緊張しますよね。

  • 私も以前働いていたオフィスに出入るする男性に惹かれて、姿をみるだけで緊張して、その後話す機会を得たのに全然言葉が出てこなくてっという経験がありました。今思うと何だったんだろうということなんですが、脳がそう反応したというか、彼女のドキドキ感すごくわかります。

  • 甘いバナナジュースと一緒に、甘い恋もやってきた感じですね!笑
    じっと見られてるとやっぱりわかっちゃいますし、気になる彼の気持ちもわかります。
    でも実際に近づいてきたら…ドキドキキュンしちゃいますよね!

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