異世界ベースボール ~フワッとしか知らなかったので、なんだかおかしなルールになりました~

アーム・ザ・コニー・ロト男

第五話『ピッチャーが投げる球を受け止める人間はいない方がいい』(脚本)

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〇武術の訓練場
レヴィリック「ドワーフの職人ビビゼルだ」
ビビゼル「注文のあったボールの試作を幾つか作ってみたが、どうだ?」
マコ「おお、色々ある。こっちはちょうどいい大きさだけど、まんま鉄球。こっちはちょっと柔らかすぎるかな?」
ビビゼル「引き続き改良を加えていく予定だ。 色々と試して感想を聞かせてくれ、それとバットというのはこれでいいのか?」
マコ「そうそう、だいたいこんな感じ」
ビビゼル「こっちも木や鉄を始め色々な素材で作ってみたから後で感想を聞かせてくれ」
マコ「球を投げる手とは反対の手にはめてボールをキャッチする大きな手袋みたいなヤツで、絵で描くとこんな感じかな」
ドロシー「マコは絵が上手ね」
マコ「こう見えてデザイナー志望だったから」
レヴィリック「なんだそれは?」
マコ「服のデザインを考えて作る仕事。 だから縫物も得意だよ」
ビビゼル「それでお嬢ちゃん。 これを使うとどうなるんだ?」
マコ「飛んできたボールを取りやすくする道具って感じかな? 素手だと痛くて取れないだろうし」
ビビゼル「ふむ。この指の間にある網の目状の箇所でボールを受け止めることで、衝撃を逃がす構造という訳か。素材は?」
マコ「うーん、たぶん何かの皮かな?」
レヴィリック「作れそうか、ビビゼル?」
ビビゼル「ワシを誰だと思っている?」
レヴィリック「期待しているぞ」

〇武術の訓練場
レヴィリック「次はヤ・キュウのグラウンドについてだ。とりあえず紙に書いてみろ」
マコ「えっと、確か白線がこんな感じであって、ベースが四つあるんだったかな?」
レヴィリック「【べーす】とはどんなものだ?」
マコ「これくらいの四角い白いヤツ。だけどこのバッターが立つメインの所は形が違ったな。ちょっと変わった五角形っぽいヤツ」
レヴィリック「ベース間の距離は?」
マコ「・・・・・・いや、全然分からない」
レヴィリック「だいたいでいいから」
マコ「うーん、ここから・・・・・・この辺りまでかな?」
レヴィリック「20ウェルトくらいか」
マコ「なに、そのウェルトって?」
ドロシー「この世界の距離の単位よ。20ウェルトだと・・・・・・30メートルくらいね」
マコ「・・・・・・あのさ、前々から気になっていたんだけどさ。ドロシーって私の言葉になんか詳しくない?」
ドロシー「私、趣味で神の御使いに選ばれた【異世界人】や生まれた場所である【彼の地】のことを調べているのよ」
ドロシー「マコを迎えに行くことになったのも、この辺りが理由の一つね。だからマコの話もある程度は分かるつもりよ」
マコ「ドロシーがいてくれてよかった」
レヴィリック「【べーす】とやらもビビゼルに用意させよう。それで? ピッチャーはどこに立つんだ?」
マコ「そんなの真ん中に決まってんじゃん」
レヴィリック「その決まりを知らないから聞いているんだ」
マコ「そうだった。えっと四つのベースの真ん中ね。でね、ちょっと小山みたいに高くなっていた気がする」
マコ「そんでバッターがバットを持ってこのメインベースの横に立つ」
マコ「そしてピッチャーが球を投げて、バッターがそれを打つ」
レヴィリック「もし打てなかったらどうなる?」
マコ「キャッチャーが捕ってストライクかボール」
レヴィリック「ちょっと待て。何やら新しい単語が出てきたな【きゃっちゃー】とはなんだ?」
マコ「ピッチャーが投げたボールを取る人。 こんな感じにしゃがんで飛んできたボールをキャッチするの」
レヴィリック「なんの為に?」
マコ「・・・・・・なんの為だろう?」
レヴィリック「何か意味があるのは分かった」
ドロシー「ねぇ、マコ。キャッチャーってピッチャーの仲間なのよね?」
マコ「うん」
ドロシー「ピッチャーはその仲間に向かって球を投げるの?」
マコ「うん」
ドロシー「だけどピッチャーの役目はバッターに打たれない球を投げることよね?」
マコ「うん」
ドロシー「おかしくない?」
マコ「? なんで?」
ドロシー「だって、バッターが打てない球を投げるということは、キャッチャーを殺しかねない球を投げるってことじゃない」
マコ「・・・・・・ごめん、ちょっと意味が分からない」
ドロシー「試しにやってみた方が分かりやすいわね。・・・・・・じゃあ、この鉄球でいいか」
マコ「えっ? その重たい鉄球を投げるの?」
ドロシー「それでさ、私がピッチャーだったとするでしょ?」
マコ「うん」
ドロシー「それで、だいたいあの辺りにバッターがいるとするでしょ?」
マコ「うん」
ドロシー「それでバッターが打てない球を投げるとさ」
  ひゅっ、ドカーン!!
マコ「・・・・・・メッチャ高速で飛んだし、地面が抉(えぐ)れ弾けたんだけど」
ドロシー「こんな感じになるんだけど。この時、球を真正面から受けるキャッチャーは無事でいられると思う?」
マコ「ううん。多分、死んじゃうと思う」
ドロシー「やっぱりそうよね」
マコ「いやいや待って! ちょっと待って! その前におかしい! なんで鉄球をあんなに早く投げられるの!」
ドロシー「ほら、私、魔法使いだから。魔法を使えば重さとか関係ないし」
マコ「魔法使い、すご!」
マコ「いや、凄いのは分かったけど! そこはもっと手加減して投げるとかしてさ!」
ドロシー「でも、そうしたらバッターに打たれるわよね。それって駄目じゃない?」
マコ「・・・・・・確かに」
レヴィリック「というか、あれくらいなら打てないこともないだろう」
マコ「打てないわよ! なら打ってみなさいよ!」
  ガキーン、ドスッ
マコ「・・・・・・打った。嘘でしょ。鉄の塊でしかない重たい棒を軽々振って、凄い速さで飛んできた鉄球を撃ち返した」
レヴィリック「確かに重すぎて扱いづらいが振れないこともないし、あの程度の鉄球なら打てないこともない」

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