憧れの先輩(脚本)
〇大衆居酒屋
如月 遥「どうした? 何か元気ない?」
私「え? そんなことないです!」
びっくりした
如月さん、さっきまであっちに座ってたのに
如月さんは憧れの先輩だ
私が所属する文芸サークルの2つ上の先輩で、今年はサークル代表を務めている
如月 遥「トイレ行って戻ってきたら、席なくなってたから、ここ座って良い?」
私「あ、はい、大丈夫です」
如月 遥「ありがと」
私(席遠かったから話せないかなって思ってた 嬉しいな)
サークルの打ち合わせという名の飲み会
人数もいるので如月さんと話せないときもある
今日はラッキーだ
如月 遥「ちゃんと食ってる?」
私「大丈夫です 何か頼みますか?」
如月 遥「あー、だし巻き食べたい さっき食べそこねた」
私「じゃあ、頼みますね 飲み物はハイボールで良いですか?」
如月 遥「ん、ありがと」
私「どういたしまして」
私もついでにレモンサワーのおかわりしようと思いながら、注文を済ませた
店員「お待たせしましたー!」
注文したものはすぐに運ばれてきた
如月さんはだし巻きを美味しそうに食べている
如月 遥「そういや、センセの新作、面白かったよ」
私「揶揄わないでください でも、ありがとうございます」
今度のサークル誌に載せる予定の原稿のことだ
如月さんはよく私のことを「センセ」と呼んで揶揄ってくる
如月 遥「最後の主人公が電車に飛び乗るシーン、格好良かった」
私「私もあのシーン、お気に入りなんです ありがとうございます」
私「如月さんも小説とか書いてみませんか?」
如月 遥「俺は読み専だって、知ってるだろ?」
私「そうですけど・・・」
如月さんの言うとおり、彼はいわゆる読み専だ
ジャンルによらず何でも読むし、読書量も多いので、その知識は幅広い
彼がお話を書いたら、きっと面白いだろうに
???「だから、お前の主張は間違ってる!」
大きな声が聞こえて、視線をそちらに向ける
1つ上の先輩たちの議論が白熱しているようだ
如月 遥「また、あいつらか」
如月さんは呆れたような表情を浮かべ、彼らの仲裁をしに行ってしまった
私(せっかく如月さんと話してたのにな・・・)
そう思っているうちに、議論の輪から逃げてきた同級生の田崎くんが隣にやってきたので、彼と他愛ない話をしていた
〇街中の道路
私(あれから如月さんとは話せなかったな)
私「私、こっちなので」
如月 遥「あー、送ってく」
私「え、如月さん!?」
如月 遥「俺もこっちだから」
如月 遥「お前ら、程々にしろよー」
サークルメンバーは皆、「はーい」と行儀の良い返事をする
如月 遥「行こっか」
私「はい」
2人きりになると会話が途切れてしまった
如月さんはどことなく機嫌が悪そうに思える
私「あの、如月さん そんなに暗い道はないので、1人でも平気ですよ?」
如月 遥「俺に送られるの嫌?」
私「嫌じゃないです! でも、如月さんに負担をかけたくないです」
如月 遥「負担なんかじゃないよ」
如月 遥「・・・田崎のが良いんだろうけど」
私「田崎くん?」
如月 遥「仲良いだろ」
私「まあ、同学年の気安さはありますね」
私「如月さん、田崎くんにやきもちですか?」
私(・・・しまった 口が滑った)
自分で思っているより酔っているようだ
私(ごめんなさい、冗談ですって、言わないと)
如月 遥「・・・そうだよ」
私「え?」
如月 遥「さっきも2人で楽しそうに話してたの、良いなって思ってた」
私「え、何ですか、それ 揶揄わないでくださいよ」
期待させないでほしい
胸がつきりと痛む
如月 遥「揶揄ってるわけじゃない」
如月さんが足を止める
私も足を止めた
如月 遥「酔った勢いって思われるのは嫌なんだけど、誤解されたくないからちゃんと言う」
如月さんが真っ直ぐこちらを見つめてくる
何か言わなきゃと思うのに、言葉が出てこない
如月 遥「好きだよ」
心臓がばくばくしている
夢みたいだ
私「私も」
私「好きです」
如月 遥「嬉しい」
私「でも、如月さん、大人だから、私で釣り合うのか・・・」
如月 遥「大人って二つしか変わらないだろ」
私「大人ですよ・・・」
如月 遥「そんなことないと思うけど さっきも田崎に嫉妬してたし」
私「それは嬉しいです」
如月 遥「嬉しいんだ ね、手繋いでも良い?」
返事をするより先に如月さんに手を繋がれる
私「わ、如月さん!?」
如月 遥「嫌?」
私「嫌じゃないです」
如月さんの手は私より大きくて温かい
如月 遥「帰ろっか」
私「はい」
如月さんが歩き始めるのに合わせて、私も足を動かす
繋いだ手に少しだけ力を込めたら、如月さんもぎゅっと握り返してくれた
Fin
王道のキュンにドキドキでした(><)
お酒の力でついうっかり言ってしまった一言。彼も同じだったんじゃないかなぁなんて思いながら、彼の可愛い嫉妬にニマニマしてしまいました!
こんな青春を送ってみたかったです~
人がどう思ってるかなんて、わからないものですよね。
特に好きな人が近くにいて、他の人と仲良くしていたら、自分の心に反して自分のものにしてしまおうという気持ちがでてくるのもすごく共感できます!!
なんとなくそういう展開かなあと想像しつつも、最後送っていくシーンはタップしながら、二人の言葉ひとつひとつにどきどきしました。足取りを止め、きちんと相手の目を見て好きといえる男子、女性なら誰もがキュンとしてしまいます!