デビュー✖DEBUT

志澤みちと

読切(脚本)

デビュー✖DEBUT

志澤みちと

今すぐ読む

デビュー✖DEBUT
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇学食
学生A「なあ、次の授業サボってカラオケでも行かね?」
学生B「いいね~。行く行く~」
学生C「あのセンセの授業眠たくなるしね~」
浅井 鈴(・・・うるさい)
学生C「シュウも行くよね~?」
川田 シュウ「あー・・・」
川田 シュウ「わりぃ。 俺、ゼミ先に呼ばれてるから行けねぇわ」
学生A「うわ~、おつ~」
学生B「んじゃ、うちらだけで行くわ。またね~」
川田 シュウ「おー」
浅井 鈴(うわ、ゴミ置きっぱじゃん・・・)
浅井 鈴(これだからチャラチャラした人たちは・・・)
川田 シュウ「・・・」
浅井 鈴(あ・・・片付けてる)
  彼は集めたゴミを持って、去っていく。
浅井 鈴「・・・」
浅井 鈴(意外だ・・・)

〇駅のホーム
  授業おわり。
  鈴が講義室からまっすぐ駅のホームまでやってくると、そこには川田の姿があった。
浅井 鈴(あれ? 先生に呼ばれてるはずじゃ・・・)
浅井 鈴(もう終わったとか?)
浅井 鈴(それとも忘れてる・・・?)
浅井 鈴「・・・」
浅井 鈴「・・・」
浅井 鈴「・・・」
  鈴は悩んだ末、川田に声をかけることにした。
浅井 鈴「川田君」
川田 シュウ「あっ、おつかれ~い」
浅井 鈴(う・・・チャラい・・・)
浅井 鈴「・・・ゼミの先生に呼ばれてるんじゃなかったの?」
川田 シュウ「へ?」
川田 シュウ「あー・・・そっか」
川田 シュウ「浅井さん、お昼近くの席にいたもんね」
  川田が気まずそうな表情を浮かべる。
川田 シュウ「・・・あれ、嘘なんだ」
浅井 鈴(嘘?)
川田 シュウ「ああでも言わないと断れないでしょ?」
浅井 鈴「仲悪いの?」
川田 シュウ「そんなことはないんだけど・・・」
川田 シュウ「授業サボるの、抵抗あってさ」
浅井 鈴(さっきも思ったけど・・・)
浅井 鈴(意外と真面目)
浅井 鈴「そっか」
川田 シュウ「あ」
  ふいに川田が鈴へ体を寄せる。
川田 シュウ「皆には内緒にしといてね?」
浅井 鈴「わかった」
  鈴がそう返事すると、川田は安心したように笑った。
浅井 鈴(思ってたイメージと違うなぁ・・・)
  端から見ていたよりも、柔らかい印象を受ける。
浅井 鈴(どっちが本当なんだろう?)
  チャラっとしている川田が本物なのか。
  それとも、今、目の前にいる川田が本物なのか。

〇講義室
「隣いい?」
  鈴が顔を上げると、そこには川田の姿があった。
浅井 鈴「どうぞ」
川田 シュウ「ありがとう」
  鈴はチラリと辺りを見回す。
浅井 鈴「いつもの人たちは一緒じゃないの?」
川田 シュウ「後ろの方にいるよ。寝るんだってさ」
浅井 鈴「ふーん」
浅井 鈴「今日はどんな言い訳を?」
川田 シュウ「コンタクト外れて見えないことにしてある」
浅井 鈴「そのうち言い訳なくなるんじゃない?」
川田 シュウ「ん~、そしたら一緒に考えてくれない?」
浅井 鈴「やだよ。自分で考えて」
川田 シュウ「厳し~」
浅井 鈴「行きたくないなら『行きたくない』」
浅井 鈴「授業出たいなら『授業出たい』」
浅井 鈴「素直にそう言えばいいのに」
川田 シュウ「ははっ、正論」
浅井 鈴「どうしてあの人たちと連んでるの?」
川田 シュウ「・・・最初に声かけてくれた奴らなんだ」
川田 シュウ「すごく感謝してるし、 サボる以外は悪い奴らじゃないんだ」
川田 シュウ「ま、でも、皆は真面目な浅井さんを 少しくらい見習うべきだよな~」
浅井 鈴「・・・」
浅井 鈴(真面目・・・か)

〇学校脇の道
  トコトコ──
浅井 鈴(・・・あ)
浅井 鈴(今日の授業、川田君も一緒だ)
  トコトコ──
「あれ? 鈴?」
浅井 鈴「・・・?」
浅井 鈴「っ!」
浅井 鈴(なんでここに・・・)
  鈴に声をかけた男は、鈴の元彼だった。
元彼「ひっさしぶりじゃ~ん」
元彼「一瞬誰かわかんなかったわ」
浅井 鈴「・・・」
元彼「お前、変わりすぎだろ~」
元彼「なになに? 真面目ぶっちゃって」
元彼「今の彼氏の趣味?」
元彼「お前にそんなの似合わねぇよ」
浅井 鈴「・・・」
浅井 鈴(そんなこと──)
元彼「そうだ。 せっかくの再会だし、これから遊びに行こうぜ」
浅井 鈴「私、授業が──」
元彼「授業? んなもんサボっちまえよ」
  鈴は腕を掴まれ、引きずられる。
  大学とは反対方向へどんどん進んでいき、鈴は焦った。
浅井 鈴「ちょっと・・・あの本当に──」
川田 シュウ「──浅井さん?」
浅井 鈴「あ・・・川田君」
  川田が鈴の元彼を訝し気に見る。
  元彼は、その視線を鼻で笑った。
川田 シュウ「・・・もうすぐ授業始まるよ」
元彼「鈴、なにコイツ」
浅井 鈴「・・・」
元彼「あ~・・・なるほど」
元彼「今彼クンね」
川田 シュウ「は・・・?」
元彼「知ってる? コイツ前は──」
浅井 鈴「やめて!」
元彼「なに? 言ってねぇの?」
浅井 鈴「・・・わかった。行くから」
川田 シュウ「えっ・・・!?」
元彼「ははっ。じゃーね、川田クン」
川田 シュウ「・・・」
川田 シュウ「・・・・・・」
川田 シュウ「~~~~~~」
川田 シュウ「っ!」

〇学校脇の道
「浅井さん、待って!」
川田 シュウ「浅井さん」
川田 シュウ「本当に行きたいと思ってる?」
浅井 鈴「それは・・・」
川田 シュウ「『行きたくないなら、行きたくない』」
川田 シュウ「素直にそう言えばいいって浅井さんが言ってたでしょ・・・?」
元彼「・・・」
元彼「なあ、川田クンさあ~」
川田 シュウ「・・・なに?」
元彼「コイツ、昔はギャルだったって聞いても 同じこと言える?」
川田 シュウ「え・・・?」
浅井 鈴(バレた・・・)
元彼「今のナリからは想像できねぇだろ~?」
元彼「俺たち、割かしお似合いだったんだぜ?」
浅井 鈴「っ・・・」
川田 シュウ「・・・」
川田 シュウ「言えるよ」
浅井 鈴(え・・・?)
川田 シュウ「俺、実は大学デビューなんだ」
川田 シュウ「俺だって今とは全然違ったよ」
川田 シュウ「だから、俺は浅井さんが昔どうだったとか気にしない」
川田 シュウ「大事なのは今の浅井さんでしょ?」
浅井 鈴「川田君・・・」
元彼「・・・」
元彼「さっむ・・・シラケたわ~」
元彼「お前、こんなんと一緒にいたら、 もっとつまらねぇ女になっちまうぞ?」
浅井 鈴「ご忠告どうも」
浅井 鈴「私は、アンタが言うつまらねぇ人間になりたいのよ」
元彼「・・・あっそ」
  元彼が去っていく。
  鈴が隣を見ると、どっと疲れた顔をした川田がいた。
浅井 鈴「だ、大丈夫?」
川田 シュウ「うん、なんとか」
川田 シュウ「正直殴られたらどうしようかと思ったけど」
川田 シュウ「・・・かっこつかないね」
浅井 鈴「・・・ううん。そんなことないよ」
浅井 鈴「・・・かっこよかったよ」
川田 シュウ「えっ!?」
川田 シュウ「あ・・・ありがとう」
川田 シュウ「きょ、教室いこっか!」
浅井 鈴「うん」
  トコトコ──
  鈴の斜め前を歩く川田の耳は、ほんのり赤く色付いている。
浅井 鈴「今度、昔の川田君見てみたいな」
川田 シュウ「えー? うーん・・・」
川田 シュウ「浅井さんも見せてくれるならいいよ」
川田 シュウ「金髪ギャル姿」
浅井 鈴「いや、金髪ではなかったから!」
川田 シュウ「あ、そうなの?」
  キーンコーンカーンコーン
川田 シュウ「うわ! 急がなきゃ!」
川田 シュウ「とにかく約束ね!」
浅井 鈴「え!? まだいいとは・・・」
浅井 鈴「ちょっと待ってよ!」
川田 シュウ「あははっ、急げ~」
  二人は校舎に向かって駆けていった──。

コメント

  • なんだかんだいって人間の本質ってかわらないですよね。外見はどうにでもなるけど。めぐりめぐって自分にピタッとくる環境がみつかれば本来の自分に戻れるということですね。

  • 新しい新天地にいくタイミングでイメチェンしたんですね。生まれ変わりたい願望というか、新しい自分でスタートしたい、そういう気持ちを思い出して共感できました。

  • 確かに高校生、大学生になると昔の面影を感じないくらい変わってしまう人もいますよね笑
    それでもその人自身が変わらなければ、見た目は二の次だとは思います!

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ